15.感傷(その2)
・・・僕は宿舎の荷物をまとめ、退去する準備を整えた。受付で手続きを済ませ、帰りの電車の時間を考えるともうあまり時間が無い。
仁君はこの時間路上教習に出ていて話す機会はなかった。
ヤッ君は今日の予定はあと2時間後らしく、見送りに来てくれている。
・・・黒いサングラスに金髪でパンチパーマ、アロハシャツ。奇しくも初めて会った時と同じ服、同じ格好だった...。
右腕には、龍の入れ墨らしき青い模様がチラチラ見える。お互い全身真っ黒に日焼けした事を除けば何も変わらない...。
2週間ちょっと前まではあんなに嫌だったはずなのに、今は別れるのが少し辛い。
・・・お互い何も言わずとぼとぼと教習所の出口まで歩いた。
「じゃぁ、な」
別れ際、右手を差し出してきたヤッ君に、僕も、
「じゃぁ」
とがっちり握手した。そのままぐっとヤッ君が僕を引っ張ってくる――。
不意に抱擁する形となったが直ぐに離れた。
離れ際一枚の紙きれを僕に寄越す。
(...何だろう?...。)
「俺の番号。地元に帰ったらヨシ兄に女、紹介するから楽しみにしとけ」
(...覚えていたのだ、この漢は...。)
僕は微笑みながら
「あぁ」
と、答え別れた。
その紙切れをポケットにしまい込み、僕は急いで駅へ向かった。
・・・帰りの電車は直ぐにうとうとうしてしまい、あまり記憶がない...。
合宿から久々に自宅に戻ってきた僕は、風呂を焚いて着ていた服をさっさと洗濯機に入れて、湯船に浸かった。
(...・・・ふぅ~...。)
「あっ!電話番号!」
急いで風呂から上がった僕は、洗濯機の一時停止ボタンを押しズボンの右ポケットを探った――。
中から皺苦茶になった紙切れらしきものが出てきた。
何が書いてあるのかは解読不能。
(...やっちまった...。)
もう一度、湯船に引き返した...。




