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人生  作者: yoshi88
:21歳 第三章 無智と無謀の偽善者は、今日も素敵なマスクを被る 
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12.同居人

 砂浜から戻ってくると、僕達の部屋に新たな同居人が加わる事を受付のおばさんから告げられた――。


 スキンヘッドで細い眉、狐の様な細い目をした眼光が鋭い中村(なかむら) (じん)こと、中村君。3人目の同居人だ。


 中村君はヤッ君に、


「久しぶり」


 と挨拶しているところを見るとヤッ君の悪友(ゆうじん)のようだ...。


 ヤッ君はベットで寝ころびながら仮免の教本を読んでいた僕に中村君を紹介してきた。


「ヨシ兄、同じチームの仁。この前言ってた俺のダチ、仲良くしてやってくれ」


 チラリと僕の方を見た中村君は、


「オス...」


 低い声で僕に挨拶してきた。


 僕も起き上がって取り敢えず、


「ヨロシク」


 と、答えておいた。


 中村君はヤッ君の下段のベットを自分の住処(すみか)と決めたようだ...。


 ヤッ君はベットの周りを彼女の写真やバイクの写真を飾るのに忙しくしていたかと思うと、


「此処、コンビニも本屋もあらへんから、”少年ジャンプ”の続きがみたいけど、仁、持ってないか?」


 と、ヤッ君の下にいる中村君に声を掛けた。


「持ってへんけど、その内誰かが持ってくるわぁ。待っとけ」


「そうかぁ...。分かったわ」


(......。)


「ヨシ兄、ちょっと下に行って来るわ」


 バタバタと部屋から出て行き、後には僕と中村君の二人きりとなった...。


 気まずい雰囲気が嫌なので早速僕から中村君に話しかける。


「俺、良博」


「山本君からはヨシ兄って呼ばれてる。 中村君は同級生なん?」


 黙々と自分の陣地を広げ、リラックスタイムを早くしたいであろう中村君は、僕の方には顔を向けようとしないが、それでもヤッ君と一応親し気にしている僕に対して無視するのも悪いと思ったようだ。


  「そう・・・同級生」


「・・・ヨシニィは何歳なん?」


「俺?俺は、二十歳。免許取りに来るのん、ちょっと遅かってん」


「ふうん、そうなんやぁ...」


 今の会話で中村君の中で、"ヨシニィ" = "ヨシ兄"ときっと理解しただろう。


 初対面の相手、しかも暴走族なら特に年上なのか年下なのか「年齢」は大切にすると考えた僕は、(したた)かにも最初の会話でマウントを取る事に密かに心を砕いた...。


 それ以外にも中村君とは色々話しをした。


 スキンヘッドで見た目が強面(こわもて)ではあるがそれを除くと、まぁまぁ普通の今時の(おとこ)のようだ。


 こちらが喋りかけない限り僕に対する警戒を解こうとしないが、お互いの共通点である「少年ジャンプ」の話で盛り上がった。


 中でも、もう連載終了している「北斗の拳」という漫画の世紀末設定の世界観や、そこに登場する"ケンシロウの兄、ジャギのバイク"が格好良いらしく、"ヤマハXV750スペシャル風"に改造を施した自分のバイクに跨りながら、黒いヘルメット、半裸でムキムキの筋肉を見せつけている「危ない奴の集合写真」を僕に自慢しながら見せてくれた。


(......。)


 ・・・取り敢えず少しは親しくなれたようで、良かった事にしておく...。


 それから5日程経ったある日――。


 僕とヤッ君はなんとか同じタイミングで仮免許取得を達成し、その少し後を仁君が追いかけて来る。


 最近の僕は午前中の教習が終わると急いで海岸へ向かう。


 この誰もいない海には水面から2m程潜ると、海底の砂に紛れて白い大きな貝、"ハマグリ"が取れるらしい。


 ハマグリは古くから食用として親しまれてきた貝で、アミノ酸を豊富に含み、味と(こく)が有り、高級食材の一つ。


 朝食の時、校内食堂"クローバー"のおばちゃんが、


「ここは浜辺でハマグリが取れるから、もし取ったら持ってきて。お昼の味噌汁に入れてあげるから」


 その一言に俄然やる気になった僕は、特技の水泳を生かして毎日高級食材を求めて海岸にやって来る。


 通常は勝手に採取していけないのかもしれないが、教習所にいる間は僕も"地元民"であり、地元民なら良いのかと問われれば(はなは)だ怪しい感じもするが、


(...おばちゃんの許可をもらったし、深くは考えないようにしよう...。)


 それよりもハマグリだ。海水浴場にも指定されておらず、ほとんど人を見た事がないこの"名も無き浜辺"でも、海の中でハマグリを見つける事は容易ではなかった。


 僕は午前中2時間くらいは毎日潜ったが、それでも1日1個か2個しか採れない。多い時でも3個が最高記録だ。


 ヤッ君と仁君の分も取って上げようと思ってはいるが、そう簡単ではない。


 しかし、新鮮なハマグリが「ドーン」と入った存在感のある味噌汁は圧倒的な旨さで、一度味わってしまうとその誘惑からは逃れる術はなさそうだ。


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