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人生  作者: yoshi88
:21歳 第三章 無智と無謀の偽善者は、今日も素敵なマスクを被る 
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8.夏の合宿

 山本篤志(やまもとあつし)自称ヤッ君は、1人で合宿に来た。が、1週間後には友達も来るらしい...。


 本人の話に依れば、高校1年生の時は普通に高校へ通っていた。そして、2年生の時、地元の不良グループと知り合いそのまま学校を退学。


 実家は父親が借金を踏み倒し、破産宣告を受けて現在ブラックの状態であり、親の戸籍から出ない限り自分もローンは組めないとのこと。


 今は近畿圏でも3番目くらいに大きな"暴走族のグループ"に所属していて、特攻隊をやってるらしい...。


 ・・・大阪から倉吉駅まで約3時間――。


 まぁまぁ混んでいる人気の自由席に僕とヤッ君は向かい合って腰掛けた。

 まぁまぁ混んでいるはずなのに、最大4人座れるはずの座席に、他の乗客は誰も座ろうとしない...。


「ヨシは大学生か?」


「いや、俺は頭が悪いから大学は行ってないよ。建築の専門学校に通ってる。」


「へぇー、そうなん。頭良さそうに見えるけど。」


「見えるだけ見えるだけ...。」


 今まで自分の学歴にコンプレックスを抱えていたが、初めて


(...大学行ってなくて、良かったぁ...。)


 と、不覚にも思ってしまう...。


 この場に、ヤッ君以外の1週間後に現れるであろう"悪友(ともだち)"がもしも居合わせていたなら、また別の未来が訪れていた気がする。が、今の僕は取り敢えず、無難にこの3時間を乗り越える事に必死だった。


 ヤッ君は一枚の写真を見せてきた――。


「これ、俺の彼女。同じチームにおんねん。ヨシは彼女おるんか?」


 そこにはストレートで金髪、眉がきりっと吊り上がった切れ長の瞳を持つ美人が、ヤッ君と仲良く写っている。


 ヤッ君はねじり鉢巻(はちま)きに特攻服と愛車の改造したバイク。ヤッ君の彼女さんはマスクを付け、右手に金属バット...。


 真っ白なヤッ君とお揃いの服を羽織っており、「愛死天流(あいしてる)」の文字が、赤い刺繍で縫い込まれていた...。


 ・・・強烈な写真に少し()が空いたが、


「いや、いてない」


 ヤッ君は笑いながら、


「だったら紹介するわ、まぁまぁ綺麗なヤツも何人かおるから」


 僕も笑いながら、それには取り合えず、


「そうなん?じゃぁその時は頼んどくわ。」


 ・・・適当に答えておいた...。


 ――結局、倉吉駅に到着するまで、誰1人として隣に座ろうとしてくる人は居なかった。


 鳥取県には小さい頃、スイミングスクールの遠足で大山(だいせん)の登山に来て以来一度も訪れた記憶がない。


 失礼な話ではあるが"鳥取県には何もない"イメージが強く、いざ到着してみると教習所以外、本当に何も無かった...。


 鳥取県出身で「名探偵コナン」の作者青山剛昌(あおやまごうしょう)ふるさと館や、鳥取砂丘コナン空港、通称「コナン空港」が開港されるのは、20年後の未来の話である。


 ――早速僕達は受付で手続きを済ませた。


 最短卒業でも18日間掛かる。もっと言うと、17日間しか教習所内の宿舎には滞在出来ず、一回でも試験に落とされれば、空き部屋がない限り強制退去となってしまう。


 倉吉教習所に限って言えば教習所の周りに宿泊施設は皆無で、鳥取県内に記念すべきコンビニ第1店舗目となる「ファミリーマートはくと海岸店」がオープンするは、これまた9年後の未来の話――。


 バイトで貯めたギリギリの予算で合宿に申し込んでいた僕は、当然「相部屋」で予約していた。


 受付のあばさんが余計な気を利かせてくれて、


「今はまだ部屋が空いていて、これからどんどん入って来るからお連れの方と一緒の部屋で良いですか?」


 と、聞いてきた。


 僕が少し逡巡していると間髪入れずヤッ君が、


「いいよ。ええやろ、ヨシ(ニィ)?」


「うん...。」


 ・・・3時間の会話で、ヤッ君的には僕を"友人"と認識したらしく、2つ年上という事もあり、いつの間にか僕の事を「ヨシ兄」と呼ぶようになっていた。


 これから18日間、ヤッ君との共同生活が、今始まろうとしていた...。

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