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人生  作者: yoshi88
:21歳 第三章 無智と無謀の偽善者は、今日も素敵なマスクを被る 
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7.親友

 大阪西区の下町は何だかんだと食べ物屋が多い――。


 職人気質(かたぎ)の父親から何時も、


「男は、台所に立つな」


 と、小さい頃から言われ続けてその所為(せい)もあり、この年になるまで包丁を殆ど握った事がない僕は、当然料理など一度もした事はない...。


 昼食時になると田川君が僕と所長の部屋に誘いに来てくれて、何時も一緒に食べに出かける。


 最近の僕のお気に入りは「ちゃんこ鍋」――。


 元力士が引退してやっている店で、その力士部屋直伝の味なのか、何時行っても混んでいる印象がある。


「お昼のちゃんこ定食」は夜のメニューとは違ってひとり鍋のちゃんこ定食で、海老、人参、油あげ、わかめ、渦巻き模様のなると、エノキ、しらたき、つくね等々色々と具材が豊富だ。


 それをホットテーブルの上でぐつぐつ煮込み、あとは大盛りのライスと漬物を添えたシンプルな定食で、流石にワンコインでは無理だが値段もなかなかリーゾナブルである。


 煮込んだ具材から染み出す魚介類のエキスと少し塩味の効いた鍋は、夏場の熱中症対策にも効果がありそうだ。


 それを今日も僕達は、だらだらと汗を掻きながら食べていた...。


 そして決まって食後に事務所の近くにあるマクドで冷えたアイス珈琲を飲むのが僕達の何時ものルーティンである。


 ――僕のお気に入りの2階の窓側の席から硝子越しに階下に目を移すと、この周辺で働いている人達が、昼食を買いに来たり昼休憩を談笑しながら歩いている女性の姿が見て取れる...。


 デリバリーと思われる配達人、学生の姿もある。そんな他愛もない日常風景をぼんやりと眺めながら、田川君と取留めもない会話をする事が今日一日を乗り切る為の"大切な儀式"――。


  お互い彼女がいない僕達は、休日も良く一緒に(つる)んでいて、気が付けば寝ている時と仕事をしている時以外はずっと一緒にいるような気がする...。


  田川君は250ccの中型バイクの免許を取得しており、(しき)りに、


「バイクに乗ってツーリングに行こう、ツーリングに行こう」


 と誘ってくるが、2人乗りでは高速道路に乗る事は出来ないので僕が中型免許を取るしか方法はない...。


 学生の頃、合宿で自動車の免許は取得してるが、車好きの父親の自家用車を借りれるはずもなく、免許取得後一度も運転した事はなかった。


(...そう言えば自動車教習所で知り合った、暴走族のヤッ君はあれからどうしているだろう...。)


 ――夏休みの合宿先鳥取県倉吉自動車教習所に行く為、僕は大阪駅で"特急スーパーはくと"を待っていた...。


 暫くすると向こうの方が何やら騒騒(ざわざわ)しているのに気が付いた。


 黒いサングラスに金髪でパンチパーマ、アロハシャツ。体格(がたい)の良さそうな奴が、此方の方へやってくるのが見える。


 右腕には龍の入れ墨らしき青い模様がチラチラ見え隠れしている...。歩く度に体を左右に揺らせつつ、肩で風を切るような歩き方で、真っすぐこっちに近づいて来るようだ...。


 その異様な雰囲気にホームにいる周囲の人達は絶対に関わりたくないのであろう「モーセの十戒(じっかい)」の如く、人垣がすーっと左右に割れていく...。


 彼を一目見て、


(...やばい奴だ!...。)


 と、理解した僕は、直ぐに目線を避け合宿のチラシを見ていた。


「兄ちゃんも合宿行くん?」


 金髪パンチが僕に話しかけてきた...。


「えっ?」


「そのチラシ」


 先程まで見ていたチラシをパンチがジロジロと見つめてくる。


 僕は至って平然な素振りで少しも声色(こわいろ)を変えずに、


「うん、そう」


 短く答えた。


「自分、何歳なん?」


「今年二十歳だけど」


「えっそうなん?俺より年上やん、俺18。山本、皆んなにヤッ君って呼ばれてんねん。自分は?」


「俺?良博(よしひろ)、ヨシって呼ばれてる...」


  何時もは自分の事を"僕"と言っているが、なぜだか"俺"と言わないと対等性を保てない恐れを全身で感じた僕は、つい自分の事を"俺"と言ってしまった...。


(...二十歳で助かった...。)


 と心の底からそっと神に感謝した...。

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