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人生  作者: yoshi88
:21歳 第三章 無智と無謀の偽善者は、今日も素敵なマスクを被る 
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6.僕の仕事

 僕の主な仕事内容は、駅前や駅の地下にある自転車駐輪場を設計する仕事――。


 仕様はも全部で5種類くらいしかなく、全て決まった形なので、詰まる所「自転車駐輪場の配置計画」と「役所への申請手続き業務」だけである。


 もっと言うと、"決まったスペースにどれだけ自転車を詰め込めるか?それを計画する"それだけなのだ...。


 最初は覚えないといけない決まり事が沢山あるが、1週間もすれば全て覚えてしまい、数字を見ただけで何台配置可能か分かるようになっていた。


 配置計画が終わると、これまた決まった仕様の図面を綴じて、役所へ決まった様式で提出し、それで一連の作業は一巡し完結する。


 駐輪場の施工についてはこの事務所では請け負っておらず、来る日も来る日も自転車の配置を行う日が続いた。僕がここに入社した時は、丁度(ちょうど)手書き図面からCADによるコンピューター製図に切り替わるような時で、CADで書かれた過去の図面データを使い回し、少し修正するだけで完成する案件がほとんどだった。


 自転車駐輪場の設計は、設計業務としては”ニッチ”でありほぼ独占状態で、発注者も公的機関という事もあり、きちっと決まった期日に設計業務費が支払われる為、事務所経営としては悪くない。ただそこで働く職員にとっては慣れてしまえば刺激が無く、全く面白味がなかった...。


 恵まれた点と言えば、完全土日が休日である事と、設計業務には珍しく毎日18時、ほぼ定時で帰宅出来る。初任給は17万円。そこから税金を引かれて手元にはあまり残らないが、まぁ悪くない。


 最初の初任給で生まれて初めて両親にご飯をご馳走した...。


 ・・・日差しが強くなって来た、そんなある日――。


「どんな仕事してるん?」


 お互い就職が決まった事もあり斎藤からご飯の誘いがきた。


 就職してから斎藤とは久々に会う。


 斎藤は大阪のゼネコン、といっても大手では無く関西近辺限定ではあるがまぁまぁ名の通った中小ゼネコンに入社し、今は11階建て賃貸マンションの建設現場の現場監督をしていた。


 ゼネコンとはゼネラルコントラクターの略称で、総合建設業の事である。建築・土木工事を一括で請け負い、設計、施工を自社で行う企業。


 毎日残業残業で、土曜日も当然仕事をしているらしく聞いているだけでなかなかハードな仕事らしい...。


 斎藤はコンクリートに含まれる水酸化カルシウムが水に溶け出して外壁のタイル部分が白くなる現象、「エフロレッセンス対策」に苦労している事や、室内の壁紙クロスに仕上がり状態が上手くいかない事等、自分が就職してから知り得た知識をビールを飲みながら楽しそうに僕に話しかけてきた。


「うん、うん、そうなん?」


 斎藤の話に相槌を打ちながら、僕の心はどんどん重苦しく沈んでいく...。


「ところでヨシはどんな仕事してるん?」


 僕は"地下鉄の"と少し強調しながら、自転車駐輪場の配置計画では無く、"設計"。

「他にも別の人がマンションの改修工事の設計をしているよ。」


 と、僕が入社する頃にほぼ終わっていた"唯一の過去案件"について適当に答えておいた。


(...あぁ、これなら所長と全く同じだ...。)


  斎藤は中山さんと今もまだ付き合っているが、お互い仕事が忙しく最近はほとんど会っていないらしい。


 中山さんは何処かの"自称建築家"のアトリエ事務所に入社したとのこと。


 僕はビールを2杯も飲むと日頃飲みなれていないアルコールが回り、早く家に帰りたい気持ちで、あとは何を話したのか覚えていない...。

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