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人生  作者: yoshi88
:21歳 第三章 無智と無謀の偽善者は、今日も素敵なマスクを被る 
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4.恩師、再び...(その2)

(...道山って確か今度の夏休みに特別授業をしてくれる、不動産関係の授業の先生だったと思うけど...。)


  後日学校で確認するとやはり学校の非常勤講師だった。僕のクラスは先生の担当ではないが、違う先生の代理で一度だけ授業を受けた事があり、


(...分かりやすい授業をする人だな...。)


 と、この学校に入学して、初めて真面(まとも)な先生に出会えたような印象がある。


 その先生の特別授業ならばと職員室に行って手続きをしようとして驚いた――。


 授業料が別途18万円も掛かるのだ。



(...バイト代と今までの貯金で何とかカバー出来るか...。)


 僕はバイト代が入るのを待って早速もう一度職員室に行って手続きを行う。が、学校側に、


「ダメです」


 と断られた...。


 確かに先生の授業はすでに2日経過しており、


「全額支払うから先生の講義を途中から受けさせて欲しい」


「規則なのでそれは出来ません」


 の一点張り。


 この学校でやっと受けたい授業が見つかったのにそれが叶わない。諦めきれない僕は道山先生にその旨を相談すると、先生は一言、


「いいですよ」


 何も言わずそこに座って授業を受けなさいとの事である。


 僕は先生に言われるまま、その日から毎日先生の授業を受けた。そして授業の終わりに必ず毎回先生に質問する。


「今度ご飯を食べに家に来なさい。その時民法について教えますので」


 ――結局、僕はその時の講義を全額無償で受講した。


 そして分からない事があれば何時でも、例え先生の休日の時でさえ伺い、個人的に先生に勉強を見てもう幸運に恵まれたのだ。正に"恩師"である。


  先生は、10月の試験まであまり時間がないので毎週火曜日と金曜日に宅建の合格を目指す為の部活「宅建部」を作って教えてくれる事となった。


 当然僕はその部に入部届を提出。その中に隣のクラスの斎藤がいた。斎藤は誰にでも愛想が良く、まぁまぁイケメン。彼は学年でたった4人しかいない女子の内、建築科の一番綺麗な中山さんと付き合っていた。僕は斎藤とは全く面識もなく話をした事はない。


 ――当初100人以上集まった宅建部は日を追う毎に減っていき、試験2週間前には12名までになっていた...。


 最後まで残った宅建部に僕と斎藤、中山さんもいた。斎藤は僕よりも先に道山先生と知り合いだったらしく、その関係で僕とも自然に話すようになっていた。


 何となく察していたが、斎藤は高校の時に生徒会長をしていたらしい...。


 なぜそんな奴が大学も行かずこんな専門学校に来ているのか不思議だったが、親が石川県で土木関係の工務店を開いているらしく、将来的にはそれを引き継ぐ予定のようだ。


 その日以来、僕と斎藤は意気投合し、バイトがない日は決まって斎藤の下宿先に行って時間を潰すようになった。が、何時行っても彼女の中山さんがいるので途中から頻繁に行く事は避けた...。


 ・・・ある日学校の掲示板に、「劇場を有する多目的ホール」という設計コンペの課題が掲載された。


 設計コンペとは、複数の設計者から設計案を募集しその中から優れた作品を選択し設計者に指名する方式の「設計競技」である。


 今でも時々大学生へ劇を観に行っていた僕は、「劇場」というキーワードに心を揺さぶられた。副賞として1位10万円、2位5万円、3位3万円。賞金も出るらしい...。


(...これは応募するしかないだろう...。)


 灰色の学生生活にやっと明るい兆しが見え始めていた。僕は斎藤にも声を掛けたが、斎藤は出ないとの事。僕は黙々と最近覚えたJW_CADで作業を進め、斎藤に完成した話をすると、


「見せて欲しい」


 ・・・提出する1日前に見せた。


「共同で設計した事にして欲しい、入賞しても勿論賞金は辞退するから」


 と言ってきた。賞金については、


「当たり前だ」


 と言っておいたが、まぁ、共同で設計した事にするのは構わないと承諾した。


 ――僕達の作品は堂々3位に入選し、学校の掲示板に暫く飾られる事になる。


 道山先生はとても喜んでくれ、副賞の賞金で先生と中山さんを誘い、梅田へご飯を食べに行った。そして先生に万年筆をプレセントした。


 ――10月、宅建部で国家試験を受験したのは結局8名だけとなり、最終的に合格したのは僕と中山さんの2名だけだった。


 斎藤はあと2点足らず、惜しくも不合格となった...。

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