3.恩師、再び...(その1)
・・・面接から1週間程で内定の通知が届いた。
すぐにこれから御世話になる会社へ御礼の連絡と自分のやる気を伝え、この事を恩師へ報告する為、学校に向かった。
専門学校へは2年間通った、が、僕は全く愛着が湧かなかった。
校歌さえうろ覚えである...。
1クラス40人ほど在籍しているが、まともに授業を受けている者は半分にも満たない。
その大半の生徒は、朝学校には来るが授業中でも購買部で雑談していたり、学校に来てもすぐに友人達とゲームセンターにそのまま遊びに行ったりして、授業の最初に行う"出席点呼"が終わると蜘蛛の子が散るように毎日がらがらの状態になる。
義務教育ではないので学校側も学費さえ払えば良いのか、不思議と授業担当の先生は全く注意しなかった...。
一人ずつ決められた席は無く、自由――。
僕は一応真面目な生徒だったと思う。何時も一番前の真ん中に座って毎日欠かさず授業を受けた。授業内容は社会人になった時、本当に役に立つのか否かは今は分からない。しかし、単位を修得しなければ卒業出来ないので、残ったクラスメートはある程度やる気があり静かで、"ある意味快適"である。
ただ欠点が一つあるとすれば、同じクラスいや、学年に女子が4名しかいない事だ。
今まで男女共学高校に通い、クラスの半分が女子という天国みたいな環境に慣れすぎていたので、最初はかなりショックを受けた。
(...ほぼ男子校だな...。)
高校時代は演劇部で部員16名の内、男子は3名――。
常に女子に囲まれており友人も女子の方が多く、僕の彼女も同じ演劇部、1つ年上の先輩だった。
"学校は勉強する場所"と自分に言い聞かせてはいるが、青春ドラマで度々登場する、"大学のサークル"という心地良い響き、そこから連想される華やかで、青春を謳歌しているイメージは、何時も僕を憂鬱にさせた...。
この全く愛着が湧かない母校にもたった一人、「恩師」がいる。
非常勤講師の「道山先生」だ――。
道山先生の本業は海外から美術品を輸入販売しているような会社の社長だと聞いているが、詳しい事は知らない。
一度先生の事務所に呼ばれて行った事があるが、梅田を一望できるような高層ビルにオフィスを構えており、受付の方は綺麗な人を雇っていた...。
学校では不動産関係の授業を担当しており、宅地建物取引主任者、通称「宅建」の受験勉強をする書籍も発行しているような人で、この学校には似つかわしくないような好人物である。
宅建は不動産取引の専門家を指す国家資格で、毎年20万人以上が受験する人気資格だ。年齢、学歴、国籍、実務経験等特定の条件は必要なく、誰でも受験できる事が人気の所以だろう。当然外国人でも受験できる。
ある日、その道山先生の――別途有料にはなるが、――夏休みに「宅建の講習会」を行うという特別授業の案内が学校の掲示板に掲載されていた。
僕は宅建という国家資格は聞きた事もなく最初は興味が湧かなかった。
日曜日のある日――。
蔦屋書店でレンタルしてきた「ミナミの帝王」という主人公がヤクザ者の映画を観ていた。彼が腕力ではなく、"民法"や"宅建業法"を駆使して"法の力"で悪者を懲らしめる内容に心を奪われ、見終わると同時にそのまま本屋へ行き、気がついた時には本屋の資格試験コーナーに並んである、宅建に合格する為の関連書籍を購入していた..。
著書、道山行雄。僕と先生の最初の出会いである...。




