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人生  作者: yoshi88
:21歳 第三章 無智と無謀の偽善者は、今日も素敵なマスクを被る 
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2.(続)社会人になる

 青木建築設計・・・青山設計・・・アーキテクト・・・。

 僕は名簿の上から順番に電話を掛けていった。


「ルルルルル...ルルルルル...」


 電話先の会社が、どれくらいの規模の設計事務所で、どんな仕事内容を主としているかは不明である。が、幸い営業日は掲載させているので"何時が休日"であるのか最初から把握していた。つまり、"土日休日の会社"を順番に片っ端から電話していった...。


「あ、か、さ、た、な・・・」


 特に相手の事務所が求人情報を掲載している訳ではない為、電話の趣旨を伝えると大抵直ぐに断られた。


「は・・ま・・・」


 の行までくると、流石に心が折れそうになってくる...。


(...()に角、ここまで頑張ったのだから最後まで電話しよう...。)


 残高1000円分のテレカはあっという間に使い果たし、最後の500円分を使って電話を掛け続けた。


(...あと、"や"と"わ"の分しか名簿は残っていない...。)


 絶対絶命の状態に追い込まれた直後、僕に奇跡が起こる――。


「あの...、・・・と申す物です。初めて電話させて頂いた者ですが、来年の春・・・はい、そうです。卒業見込みの者です。

 小さい頃から建築の仕事に憧れてまして・・・はい、地図に残るような仕事・・・はい、そうです。マンションや戸建て住宅の設計とか、はい、はい。

 えっと、・・・マンションの設計をやっているのですか?本当ですか?

 ・・・はい、はい、そうです」


「ちょうど一人空きが出たのですか?・・・雇いたいと考えていた...」


「・・・今からですか?」


「はい、是非とも!」


「場所?・・はい、はい、大体分かります。はい、今から伺います。はい、失礼します...。」


(...吉田建築研究事務所...。)


 何度も何度も電話を掛けては門前払いで、"よ"の行まで辿りついた僕は、たった一日で"自称一流営業マン"になっていた。


 正直建築はまだ、"ただ食べていく為の一つの手段"くらいにしか考えておらず、興味もあまり感じていなかった。


 取り敢えずある事無い事口からペラペラ、ペラペラ(まく)し立て、気が付いた時には初めて「企業面接」まで辿り着いていた...。


 何時面接で呼ばれても良いように、スーツ姿で鞄の中には常に履歴書を持ち歩いていた。僕は直ぐに地下鉄に飛び乗り「肥後橋(ひごばし)駅」を目指した――。


 ・・・事務所がある場所は、オフィス街と言うよりも雑居ビルが建ち並ぶ"大阪の下町"で、活気はあるがトレンディドラマに出てきそうなお洒落な雰囲気は微塵も無い。「吉田建築研究事務所」は明らかに昭和の時代に建てられた古い簡素な3階建ての雑居ビルで、1階は空き家だった。


 2階と3階部分を間借りしてひっそりと風景に溶け込んでいる...。


 1歩中に入ると、1階の蛍光灯は鈍い光を発しながら点いたり消えたりしており、ちゃんとメンテナンスが行き届いているか、かなり怪しげ。


 僕は2階の受付らしき場所に通され、取り敢えず人生で初めて「企業面接」を受けた。

電話に出た優し気な口調の「所長」らしき人ではなく、少し陰気な感じでニコリともしない「社長」が僕の面接をするらしい...。


 狭い打合せ室に事務員のおばさんらしき人がお茶を淹れてくれた...。


 僕はこの機会を逃すと就職のチャンスはもう殆ど残っていなと悟っていたので必死だ。


 高校時代に培った演劇部の役者の気分で、自分がどれほど幼い頃から建築に興味があり、この仕事に憧れていたか。卒業した母校は卒業と同時に2級建築士の受験資格があるから、今年の夏、早速受験し合格して見せるとか、父と同じような建設業に関わっていきたい等自分でもびっくりするくらい言葉が次から次へと湧いて来る。


 その中で僕はさりげなく「完全週休2日制」であるかを聞いた。


 社長からは学校でどんな勉強をしていたのか、特にCADキャドを使った事はあるかを強く聞いてきた。CADはComputer Aided Design"、コンピュータ支援設計"の略で、コンピュータを用いて図面や設計を行うためのツールの事である。


  僕は学校の授業でJW_CADジェイダブリューキャドとうフリーソフトを勉強した事があり、JW_CADなら扱えると説明した。今になって思えばこれが採用の決め手になったと思う...。

 後で知った事だが、建築関係の中小企業では殆どがJW_CADを使用しており、即戦力として働く場合の習得すべき必須スキルの内の一つ。当然、この事務所でもJW_CADを業務に使用していた。


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