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人生  作者: yoshi88
:21歳 第三章 無智と無謀の偽善者は、今日も素敵なマスクを被る 
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1.社会人になる

 厳しい寒さが和らぎはらはらと桜が舞い散る頃、4月生まれの僕は早々と21歳、社会人になっていた。高校を卒業してそのまま建築専門学校に進学した僕は大阪市西区にある吉田建築研究事務所に就職した――。


 あの"1.17"を経験し将来に少し絶望していたが、


(...建築関係の仕事であれば多少社会貢献も出来るだろうし、将来的に1級建築士さえ取得すれば独立して建築家にもなれるかもしれない。建築家になれば学歴は関係ないはずだ...。)


(..."コンクリート打放し(うちっぱな)"で世界的に有名な安藤忠雄(あんどうただお)先生も、学校に通わず独学で1級建築士になった。自分にも絶対出来る...。)


 楽観視して就職活動に臨んだが一般的に「就職氷河期世代」に該当し、大卒でも就職率が最悪の年で63%前後、高卒の場合は60%程度にまで落ち込んだ時期であり、例外なく僕も就職活動に苦労していた...。


 専門学校卒業生は給与面でも「高卒」と大差はなく、当然大企業は疎か多少、名が通った中小企業でさえ最初の書類選考が通らない。いや、全く相手にされない。


 毎日汗だくで、「きつい」「汚い」「危険」の"3K仕事"の代表格であるヘルメット被る建設業には最初は嫌悪感があった。しかし、古代中国の大哲学者"孔子"が説く儒教の基本概念、


「衣食足りて礼節を知る」


 と、言う教え、その次に大切な「(じゅう)」に関わる仕事であれば、きっと食いっぱぐれはないだろうと考えていた。


 ただ、僕は、


(...体力的に力がないし、出来れば冷暖房が効いたオフィス系の仕事に就きたい...。そして欲を言えば、土日が休みで残業もあまりなくて、綺麗な女性が数人いるような、そんな会社が良いなぁ...。)



 絶対あり得ないような待遇を望みながら、学校の求人情報をパラパラと閲覧していた――。


 就職支援コーナーは連日学生で溢れ活気を呈しているが、求人情報は全校生徒700名の生徒に対して50件もなかった。その50件中、土日が休日の会社はわずか6件...。


 しかも仕事内容は"マンションの鉄骨階段を専門に設計する仕事?"という怪しげで謎の仕事内容や、大手ゼネコンの下請(したう)け業等、大雑把過ぎて仕事内容が良く分からないものばかりで、到底喜んで応募する気にはなれない。


(...やはり大学に合格していない時のツケが今になって回ってきたか。受験時期から時間が経った所為(せい)で、"その分の利子"まできっちり付いている...。)


  考えても仕方がない事は考えない主義の僕の脳裏に、ふとあるアイデアが浮かぶ。


(...こうなったら直談判だ!大阪中の設計事務所に片っ端から電話して、面接を取り付けてやる!中学生時代は生徒会長まで務めた僕だ。会えさえすればきっと就職できるはずだ!...。)


  根拠のない自信と楽観主義の行動力で、僕は梅田の建築専門書を沢山仕入れている「旭屋書店」を目指して、一路大阪駅を目指した――。


  早速大阪の建築事務所の住所と連絡先が掲載されている「建築士事務所名簿」を購入し、そのまま駅の電話BOXに駆け込む。テレホンカードを差し込み「あ」の段に載っている事務所から順番に、電話を掛けまくった...。


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