黒くて暗くて悪い奴
やってきました『岩妖精のワンダーランド洞窟』奥の院。
ドワーフ村の酒場の奥、地下のワインセラーとして利用している広大な空間に暗闇妖精出現ポイントがあるそうな。
とりあえず通行許可は下りたってことで、俺たち3人はワインセラーに通じる下り階段を下りてきた。
本当に『酒が飲めれば通っていい』ルールなんだね。
馬鹿げたルールだけど、一応根拠があるらしい。
「ここってお酒の匂いがしてますね」
「整理整頓のできない奴らがワインセラーと称してブランデーでもウィスキーでも焼酎でも泡盛でも空き瓶でも空き樽でもなんでもごちゃまぜに置いてますからね」
「グレアムさんってドワーフのことになると何気に辛口ですよね」
「気のせいです。ほのかにお酒の匂いがするのは、例の樹液の匂いが漂ってくるせいでもあります」
「ああ、あの芳醇な味わいのお酒になるという」
「樹液の採取場とつながっていますから、天然の醸造所みたいなものです。常に酒の香が立ち込めているので、アルコールに弱い人だと歩いているだけで酔ってしまうんです」
「だから飲める人しか入れないんですね」
「そういうことです」
無駄話をしながら歩くこと数分。
ごちゃごちゃと乱雑ながらも棚が作られ物が並べられていた景色が変わって、天然の洞窟っぽくなってきた。
壁がでこぼこしてて視界が悪い。
ゴツゴツした岩肌に足音が反射して妙に響く。
物陰に何かが潜んでる気配。
緊張からか皆無口になって……。
……なんか…『ダンジョンで冒険してる』って感じがする!
そうだよ、これが正しいダンジョンなんだよ。
今までがおかしかったんだよ、桜とヒマワリが狂い咲きしてたり、ネズミの出る遊園地だったり、コイが釣れる海だったり!
あとなんか他にもあったような気もするけど、とにかく転生して初めてダンジョンらしいダンジョンに来た!
依頼主は吸血鬼だけど依頼の内容は割とまともだし、冒険者魂がムクムクと頭をもたげてくる感じ?
辺りを見ると照明も少なくなって、ランプの明かりがまばらにあるだけ。
あれらのランプはドワーフが設置して管理してるんだろうか。
ダンジョンの中にドワーフが酒場作って飲んだくれてるのもどうかと思うけど、あの人たちがダンジョンの維持管理を担っているのなら、まあ良しとしよう。
ここのランプも専任スタッフがこまめに巡回してエネルギーチャージとかしてるのかもしれない。
ランプの光が届かない真っ暗な場所の手前でグレアムさんが止まった。
「こういう暗がりが奴らの出現ポイントです」
そう言ってグレアムさんは荷物から何かを取り出した。
暗くてよく見えないけど食べ物の匂いがする。
…これは焼き鳥?
「闇に紛れて襲ってきますので注意してください。気配を感じたら声を出すか、掴む、殴る、踏みつけるなどの対処をしてください。このように」
喋りながら、暗闇から素早く伸びてきた影のようなものをむんずと捕まえるグレアムさん。
グレアムさんの手から焼き鳥を奪おうとして、逆に捕まえられてアタフタしているそれは……。
「猫?」
それは小さなショルダーバッグを斜めがけした直立二足歩行の黒猫だった。
「これが暗闇妖精、別名『闇夜の黒猫』です」
妖精は妖精でも猫妖精!?
可愛さよりも太々しさを前面に出した黒猫が前脚? 腕? を掴まれて、逃げようともがくも逃げられず、フシャーッと威嚇の声を上げている。
直立してカバンを掛けてる以外は、ちょっと大きめの猫にしか見えない。
え、これを狩るの?
なんかネズミ狩りより更に抵抗感あるんですけど…。
焼き鳥を盗みに来た泥棒猫とはいえ、殴ってもいいものなんだろうか?
動物愛護団体からクレーム来たりしない?
戸惑う俺を尻目に、ミラーカさんがサッと動いた。
「命が惜しければ暗闇ランプを寄越しなさい!」
そう言って猫の頭を鷲掴みにする。
暴れる猫を片手でギリギリと締め上げて、アイアンクロー状態。
片手で持ち上げられてバタバタしている後ろ脚……ちょっとやり過ぎなのでは?
「あの、ちょっと、ミラーカさん?」
「アーウィンさん、早く! 早くこいつを殴ってください! 暗闇ランプを出させるんです! さあ!」
突然の暴力行為、ミラーカさんのご乱心、もしかしたら…。
「酔っぱらってますか?」
「酔っぱらってにゃいです!」
にゃいですか。
そうですか。
MicrosoftCopilot生成。暗闇妖精のイメージイラストです。猫びっくり。




