グラスの中の何か
挿絵を入れてみました。MicrosoftCopilot生成。
ボンボン♫と謎の歌が響く酒場で出された血のような赤い液体。
「……もしも通してもらえなかったら、私は外で待ちますので、お二人で暗闇ランプを手に入れて来てください」
「あ、そういう手もありますね」
それはそれで気楽でいいかも?
ミラーカさんは悲壮な決意を滲ませて……顔は仮面に隠れて見えないけど雰囲気に滲ませて……グラスを手に取った。
よほど緊張しているのか、仮面を着けたままで飲もうとして、グラスをコツンとぶつけて慌てている。
『それ取って』と仮面を外すジェスチャーをしたら、ミラーカさんはワタワタしながら仮面の顎の部分を少し持ち上げた。
顔の下半分だけ出して、唇にグラスを当てて……。
そして一口。
「……甘い」
甘いの?
確かめるようにもう一口。
二口、三口……。
とうとうグラスを空けてしまった。
「美味しい……」
何やら感動に打ち震えている様子。
「うんうん」
バーテンダーも何やら満足げな様子。
「わ、私、お酒飲めました。美味しかったです!」
「そうだろ、そうだろ」
「こ、これ、好きな味です。初めて飲みましたけど、好きになりました。何ていうお酒ですか?」
「サングリアって言うカクテルだ」
サングリア。
聞いたことがあるようなないような。
赤ワインか何かだったっけ?
「こんなのもあるぞ。トマトジュースが入っててヘルシーだ」
「美味しそうです。いただきます」
二杯目をもらって飲んでるミラーカさん。
彼女に提供される飲み物は何故か赤いカクテルばかりだ。
それはともかく。
次こそ俺が飲む番ですね!
この世界に来て初めての飲酒!
ギルドの酒場ではノンアルしか飲ませてくれないし。
異世界なんだから飲ませてくれても良さそうなものだよね。
『お酒は二十歳になってから』なんて決まりはここにはないはず!
グラスを手に取るとどこか郷愁を誘う匂いがした。
……おばあちゃんちの台所で、夏にかき氷食べたなぁ。
ふと、そんな事を思い出した。
脈絡もないし、なんでそんな事思い出したのか分からないけど。
目の前のグラスから立ち昇るのは、フルーティーなような、スパイシーなような、よく知っている気がするのに思い出せない、そんな不思議なフレーバー。
アーウィン、飲みま〜す!
ゴクン。
……あれ?
ガツンと来ない。
喉を焼くような刺激が来るかと思ったのに。
期待させといてガッカリの、かな〜り薄い水割りのようだ。
それに……うっすら甘い。
そして妙に記憶を刺激するこのフレーバー、やけに和テイストな感じ……。
グラスの中に黄緑色のオリーブのような実が入って見た目は洋風なのに……って、あれ?
「これ、もしかして……梅酒の梅?」
この世界、桜だけじゃなく梅もあったのか……。
……じゃなくて!
なんか覚えのある味だと思ったら、これって梅酒だ!
道理でおばあちゃんちの台所を連想したわけだよ!
「流れとしてここはウィスキーかなんかのはずでは? なんで梅酒?」
「ガキには丁度いいだろ?」
ここでも子供扱いか!
冒険者ギルドでもドワーフ村でも、俺にアルコールを飲ませない同盟でも組んでいるのか!
前世ではちゃんと成人してたのに!
バーテンダーにニヤニヤ笑われながら、俺はヤケクソ気味に超絶薄い水割り梅酒を飲み干し、梅をボリボリかじるのであった……。
『ボンボンビーバンシビロレン ボンボンシビラロ〜ン♫』
……BGMうるせぇ。
『サングリア』:赤ワインをベースにジュースやフルーツなどを混ぜたカクテル。甘くて飲みやすく女性に人気。混ぜるジュースによっては本当に血のような暗い赤になる。名前はスペイン語の「サングレ」に由来し、意味は血、出血、流血。
『梅酒』:青梅と氷砂糖をホワイトリカーや焼酎、ブランデー等の蒸留酒に浸けたもの。水やソーダで薄めれば飲酒してる感はほぼゼロ。しかし一応お酒なので現代日本の未成年者は飲んではいけない。健康飲料として飲む場合はアルコール分が1%未満になるように希釈して、適量を守って飲みましょう。
ドワーフたちの謎の歌に関しては架空ですが、『夜が来る』『ウィスキーCM』で検索するとよく似た何かが出てくるかもしれません。




