第9章 ヘラジの塔
ずっと見ていた”奇妙な夢”が自身の固有スキルと分かったユナム。
夢を話を信じられないと言われればそれまでだったが、王子たちは塔へ行く事を決意する。
・・はてさて、ユナムと王子たちは塔へ向かう事になったが・・・・
宿で、王子は何やら紙切れのようなものを店主から受け取った。
俺は王子に聞こうとしたが、みんな足早に塔方面の橋へ続く出入口へ向かってた為、遅れないように俺も・・やや小走りに追いかけた。
王子は振り返ると、みんな居る事を確認して、出入口に居る門兵に紙切れを渡すと、代わりに青いシンプルな鍵を受け取っていた。
そして・・・門が開かれ、王子が進むから俺らも ついて行く。
ちょっと気になって後ろを振り返ると、どの冒険者グループも、商人たちも・・紙切れを渡し、青い鍵や緑の鍵を受け取っていた。
ルア「ユナム~・・行くわよー」
って、遠くに聞こえるルアさんの声で向き直すと、けっこう離れてる!
走って追いつく。つか、砂地ってマジで走りにくい・・。
俺が、あの鍵は何なんだろう・・ってブツブツ言ってて気にしてたら・・・
ルア「宿で受け取ったのは、ヘラジの塔へ挑戦する旨を伝える紙で、それを門兵に渡した時に受け取る鍵は、塔での活動拠点を貸してもらえる鍵なんですって」と横を歩くルアさんが教えてくれた。
オリクト「あの村は塔へ行く経路だから、そういう役割になったらしいぜ」
と振り返って教えてくれた。
ここら辺も、港辺りと同じように砂地が続く。
砂の下には石畳のようなものがうっすらと見えてる辺り・・一応整備はされてたんだろうなとは思うが、いかんせんもう・・・砂に覆われていた。
道中も魔物は出てきたが・・なんだか、少ないように感じた。
これは王子が言ってたが、この辺りは塔に居るというドラゴンの縄張りのような状態だから、街道にはほぼ出現しないという。
ただ・・・弱いパーティには攻撃を仕掛ける魔物も居るらしく、油断は禁物・・・・と、ルアさんに言われた。
と、そんなこんなで、塔が間近に迫って来たくらいの所で気づく。
ココは、塔があるだけじゃない。 塔の周囲に 町 が形成されている!
オリクト「おいおい・・町があるなんて聞いてないぞ・・」
ルア「ホントね。村の人達も知らないとか?」
王子は2人を他所に・・正面入り口へと向かう。
今度は俺が2人を呼んで、王子に合流させる。
王子は、俺以上に焦ってるような感じで、足早に進んでいく。
オリクトたちは、気を引き締め直して王子について行く。
俺も、治療院で話が聞ければと思っていたし・・早く合流出来るように・・・まずは、ランクアップが受けれるかの確認だ。
正面入り口は、不思議な文様の描かれている扉で、人が近づくだけで勝手に開いたり、閉じたりしている。どーなってんだ?
俺が首を傾げていると横でルアさんが、小難しい説明しそうになってたから「いや、聞いても分からないんでイイです!」とお断りしといた・・。
「塔に初めて来られた方は、こちらで受付を済ませてくださーい」という声に従い、王子たちと水色の服に白いラインの入った服装の女性に鍵を渡す。
受付嬢「ようこそ ヘラジの塔へ!今回は どのようなご利用でしょうか?」
王子「まずは、ランクアップを受けたい」
受付嬢「はい。ご本人だけでしょうか?」王子「全員なのだが・・」
受付のお姉さんはギルド証の提示を促し、全員のランクアップ試験の日程を確認する。
ランクアップは、基本的に1人づつの試験ってイメージだった俺は、この後・・すっとんきょうな声を出して注目を浴びる事となった。
・・・今考えても・・恥ずかしい
受付嬢「では、開始までしばらくありますので、今回のランクアップ後に塔も挑戦されるという事でしたので、拠点となる場所をお貸ししますね。塔から出られる際には、鍵を受付に渡すようにして下さい」
と、言われるまま、塔入って右奥に受付などのカウンターが在って、そのすぐ近くは、ギルドの人達専用の部屋に続く扉。その横から奥へ進むと、扉が多くあり・・その1つ1つが、各グループの拠点部屋へと続いてるそうだ。
俺たちの部屋は、アークイラのマークが付いた扉が目印みたいだ。
かっこいいマークで良かった・・。なんせ道中に見た扉のマークは、アラフニやフーンみたいなのばかりだったし・・・。
受付嬢「拠点内での魔法の使用にはご注意下さい。拠点が使えない状態になると弁償して頂く事にもなりますので・・」と何やら冊子をルアさんに渡していた。
受付のお姉さんにお辞儀して、部屋に入る。
以前に見たアソオス国のギルド内の部屋とは違い、かなり広い!
トイレも風呂もあるし、台所まで完備。冷室っていう食材を保存しておける場所まである。女性用の個室と男性用の3つのベッドまである。
どうやら、グループのメンバーなどを考慮して部屋を生成してくれるそうだ。
ルアさんは個室で喜んでいた。
王子「ランクアップを受けたら、それぞれ今日は自由で良い」
オリクト「すぐにでも塔・・でも良いですぜ?」
王子「いや・・ランクアップで何が起こるかは分からないからな・・」
ルア「それに、ランクアップ後の午後は、けっこう人の出入りが激しいって言うわよ」
オリクト「・・・?・・それが?」
ルア「人が多いって事は、ほとんど2階層からの人が多いから、混雑に巻き込まれるとケガしやすいみたいだし・・トラブルも多いって聞くから・・」
俺「混雑してる中を進む方が疲れそうですね・・」
王子「それに、早く上層階へ進む為にも・・な」
という事で、ランクアップ後は・・各々装備整えるなり、情報収集するなりして翌日・早朝出発って話で・・まとまった。
・・・数分後、俺よりちょい上くらいのギルドの兄さんが呼びに来た。
拠点の扉の並ぶエリアから、少し進んだ先の黒い扉から中へ通される。
そこには、黒い服に赤いラインの入った人物が凄く細身の剣を携えて王子にお辞儀をした状態で立っていた。
男「お待ちしていました。グラセリオの皆様・・・」
オリクト「あんたは?」
その人は顔を上げて、王子や俺たちを見る。目つき鋭い・・・・。
男「私は今回のランクアップの為の相手・・という事で」
・・・?・・
王子「そうか・・よろしく頼む・・」
男「塔の上層へ向かうのが目的とお聞きしましたから、そこに行けるかどうかも見極めさせて頂きます。よろしいですね?」
緊張が高まる感覚に・・・俺は、つばを飲み込んだ。
王子「みんな!構えろ!」
その一声で、オリクトもルアさんも、俺も戦闘態勢へ!!
今回のランクアップは、全員が同じランクアップに挑戦する事と、いち早くランクを上げて上層へ向かえるようになる事を目的としている・・と、王子は最初に伝えていた為、ランクアップも全員 対 この男 の対戦となった。
相手は格上・・ギルド長の右腕と言われる人で・・・
って、説明してる時間無いやっ・・
王子の剣技も、オリクトの魔法付与の攻撃も、ルアさんの上級魔法も、俺の新技も・・攻撃を受けてるはずなのに、手ごたえが感じられないっ!!
勝てる気がしねぇ・・・・
だけど・・・・これは ラ ン ク ア ッ プ の 試 験
全員が 疲弊した頃 に、やっと終わった・・・・・。
男は、にっこりと笑顔を作ったまま・・・その笑顔も・・なんか怖い・・
男「お疲れ様でした。皆様の現在の実力と伸びしろを確認出来ましたので、これにてランクアップ試験は終了です」
「それで・・ランクは・・・どうなる?」息を整えながら聞く王子。
王子の声で男は目を開き続ける。
男「合格です。全員ね・・」
その一言で、みんな・・安堵のため息が出た。
俺はそれで床に座り込んでしまう・・・疲れた~・・・
一度・・意識 遠のいたけど・・な・・・。
オリクトに引っ張られ立ち上がり、みんなで拠点へ戻る。
扉を出たあと、振り返ると男はまた、にっっこり・・と笑顔になっていた。
・・・やっぱ、なんか怖い・・・とか思いながら、部屋に戻る。
不思議な事に・・部屋へ戻った直後に全員の傷が治る。
どうやらこれも、拠点となってる場所に付与されてる効果・・らしい。
便利だな・・・。
ん? 待てよ・・・。それなら、アイラたちは・・なんで治療院に?!
治ったから、痛みも無くなり、疲れも無かったみたいに部屋から飛び出す!
遠くでルアさんの「ユナムは元気ね・・・」と聞こえた気がした。
受付カウンターの左横に、治療院がある。 覗くと・・誰も居ない。
奥から出てきたカリゼアの人が俺に気付き、声をかけてくれる。
「どうかされましたか?」
俺「あの・・えっと、変な事聞くかも・・なんですけど・・」
前置きしてから俺は、アソオス国の王子とそのグループの人達が運び込まれたかどうかを聞く。
「・・えぇ・・昨日・・ですね・・それ」
俺「その人達は?・・・・大丈夫だったんですか?!」
「はい。皆様、元気になったばかりだと言うのに、もう上層へ向かわれたようですよ」
俺「え”ぇ?!」と、やや大きな声を出して驚いた。
「驚かれるのも無理ありませんわ。私たちも止めたくらいですから」
と、そんなやり取りの最中・・後ろから仲間を心配する声が近づいてきた!
俺は勢いよく振り返ると、どこかの冒険者の人が血だらけで仲間二人に抱えられながら、治療院に来た。俺はすぐに、どいた。
そして治療院が慌ただしくなったから、他の冒険者に話を聞こうとして声をかけてみた。
その中に、気になる話がいくつか出てきた。
それこそ昨日の夜にはアソオス国の王子のグループが、ボス部屋でボスを倒した直後、”謎の魔物に襲われて”重傷を負って帰還用のアイテムを使って戻ってきた・・とか。
冒険者ランキング3位のカルハリアスも、塔に登ってランキングを上げようと必死らしい・・とか、アルコ・イリスも塔に挑戦してる・・って話を聞く。
ランキング上げるには、普通に冒険していくだけで勝手に上がるもの・・って思ってたけど・・塔に来たってあんまり関係ないんじゃ・・・と俺は考えてた。
でも、これはオリクトから教えてもらったのだけど・・
ココ、ヘラジの塔ってのは、希少種のドラゴンが居るせいもあって、ドラゴンに近い階層には、他では見る事も出来ないような魔物が多く居て、それを倒せるだけで、かなり評価ポイントが上がるらしい。
だから、あちこち巡らなくても・・ココを登れる実力さえあれば・・・って話だけど・・・本当にそれで良いのか?と俺は思った。
まぁ実力足らなくて、結局ココから去る冒険者グループも多いって話も聞いた。
そういった話と、アソオス王子たちのグループの話を聞いた事を伝えると、王子もオリクトは「さすが・・」と言ってて、ルアさんは呆れてた。
って事は、アイラも無事って事だ・・・。
翌朝、いつもよりも、もっと早い時間に起こされる。
いよいよ・・塔 攻略とバーゼルド(炎竜)のチームとの合流を目標として・・入口に近い所に2階層へ上がる魔法陣がある。誰でも使えるが、魔法陣からはみ出てると上の階へ行けない・・らしい。
混雑してるのは、魔法陣も一緒だったのを昨日・・見た。
塔の2階層から13階の休憩場所までは、特に問題無く辿り着けた。
途中、帰れなくなってる若い冒険者パーティに帰還アイテム [ショーポット]を1つ渡すとお礼として、レアな鍵を受け取る。どうやら誰かの忘れ物・・らしいが・・・もらって良かったのか?と思いながら、14階層へ。
14階層~20階層までは、楽だったが・・21階層からクセのある技や魔法を使う魔物が増えてきた。
27階層で一旦休憩をする。
ルアさんが準備してた食事を頂き、少し仮眠。
交代で見張りをして、全員が休んだ。
その間も、他の冒険者たちが、入れ代わり立ち代わりにやってきて、休憩したり雑談したりしていた。
その中に、炎竜は46階のボスを倒した後に出てきた謎の魔物を探してるらしいと聞く。・・・リベンジしたいのかな?・・とか考えてた頃には、すっかり夜になっていた。
ここから、さらに上の階へと進んで行く。
今までは仕掛けはあるにはあったが、大した事なくてサクサク進んで来た。
30階層辺りから、複雑になっていく。
間違えると魔物が出現して戦って・・の繰り返しで・・・やっと・・・・・やっっと・・・・40階の休憩所に到着。
ルアさんの結界とテントのお陰でぐっすり眠れた。
ホントに、疲れた。
ひと眠りしたら、いい匂いで起きた。
テントには、俺ひとりで・・寝てたらしい・・・・。
・・テントから出ると、ルアさんが鍋で何か煮込んでいる。
俺「いい匂いですね・・」と声をかけると簡単なイスに促される。
王子たちは、既に食事を終えた所のようで、俺だけ・・寝てたから・・・・
俺「起こしてくれても良かったのに・・」
オリクトが、起こしても起きなかったと笑った。それにつられるように、王子やルアさんも笑ってる。
食事を頂きながら王子が夢を見なかったか?と聞いてきた。俺は首を横に振る。
これと言って見てない。爆睡だった。
オリクト「しっかし、かなり上まで来たが・・会わないな・・」
王子「もっと上の階に居るのだろうな・・」
ルア「前にユナムが見たのは・・確か、46階層よね?」
俺「はい。でももっと上の階に行ってるかも・・・」
冒険者たちから聞いた話を出すと、王子もギルドの人達から、同じような話を聞いていたようで・・・。
オリクト「俺は謎の魔物を追いかけてるって話を聞いたぞ?」
俺「それなら、俺も聞きました!」
ルア「謎の魔物?・・・そういえば、あの時に出会った魔物も、あの試しの洞窟に出るようなレベルでも無かったし、案内人に聞いても知らないって言うし・・。こちらにも、そういうのが居るなんて・・・」
王子「ともかく。ここからは、さらに慎重に確実に進む事を目標としよう」
ルア「そうですね。フロアボスも手ごわかったですものね」
一気に何階層も上がってくのは、この先はもう・・厳しくなってくる。
休憩所の魔法陣から、いつでも1階へ戻れるとはいえ、1階に戻ってる内に何かあるといけないと・・結局、戻れないでいる。
ただ、ルアさんだけは、時々物資の補充に行ってたりはするけど。
・・会えるのか?
最悪、会えないとしても・・・・無事で居てくれ・・・・。
そう願いながら、俺は眠りについた。
【紙切れと鍵】タガレアラ村の宿で塔へ向かう冒険者や商人に発行している紙。冒険者グループの名前とリーダーの名前・ランク表記された店主の手書きの紙。これを塔へ向かう道も弱い冒険者を襲う事が確認されてる為、安易に通れないようにした門がある。その門を管理しているギルドの兵士に紙を渡すと 冒険者グループには青い鍵・商人には緑の鍵を渡す。この鍵も 特殊な人工魔法陣が組み込まれており 塔内で使うと〈拠点〉という部屋が使えるようになる。なお 扉のマークはランダムとされているが・・実はグループのランキングのランク分けによるらしい。
【アークイラ】(イタリア語・鷲)
ヘラジの塔1階左奥に、冒険者たち用の人工魔法陣で作られる部屋(一軒家くらいの広さ)に繋がる扉のマーク。レスカテ王子のグループは、ランキング2位なのでアークイラとなっている。ちなみに、向きが逆の同じマークの所がアソオス王子たちの拠点。
【アラフニ】(ギリシア語・クモ) 【フーン】(ドイツ語・鶏)
アークイラ同様に冒険者ランキングでの順位で部屋のマークが決まる。アラフニは、だいたい30位以下・フーンは50位以下のマーク。他にもいろいろある。
【拠点利用規約冊子】ヘラジの塔限定・拠点利用のススメ・・みたいなもの。利用出来る事や使ってはいけない魔法などが記載されている。注意事項を守らずに、部屋に損害を与えると最悪弁償しないといけない。なお、弁償額がかなり高い為、普通は注意するのだが・・・。
【ランクアップ時の男性】ギルド長の右腕と称される男性。
ご本人は、ランク5であるので手加減している。相手の手札や攻撃手段などを戦いの中で見抜く。
なお基本は”急ぎでなければ”、他のランクアップ試験同様にアルバートルを使用したものとなる。
【カルハリアス】(ギリシア語・サメ)
冒険者ランキング上位の冒険者グループの名前。リーダーは、ルカン(フランス語・サメ)。王子たち2つのグループより上に行こうと塔に挑戦しているらしい。
【アルコ・イリス】(スペイン語&ポルトガル語・虹)
2人のリーダーを筆頭とした計7人のグループ。ランキング的には5位くらいのグループ。
【ショーポット】(ロシア語・囁き)
小さな急須のような形で、注ぐように傾けると霧のようなピンクの煙に包まれ1階の魔法陣横に戻される仕組みのアイテム。ピンクの霧が出る際の音が、何かの囁きのように聞こえる事があるらしい。
ポット自体を持ってると、カウンター横で補充してくれる(少額かかる)。
次回・・再会と減らず口と・・・




