第8章 ”ミルゼア”と呼ばれる力
ひと時の休息で、アソオス城下町を観光していたユナム。
その夜・・・アイラやアソオス王子の危機を夢で見て、飛び起きる。
レスカテ王子やルアに相談しようとしたものの、上手く言葉が出ない・・・。
ユナムの夢には、続きがあった・・。
今すぐ、どうこうなる訳ではないようだったが・・・・。
・・・アイラ達が無事と知ったものの・・これは、本当に『夢』と呼んで良いのだろうか?と、疑問に思いながら目覚める。
朝食後、部屋で支度したのち・・王子は、全員を集める。
オリクトも交えて、俺が『ヘラジの塔へ行きたい』という話をする事に。
王子にとっては、すぐにでも次へと行きたいのに、申し訳無いと思いつつも、どうしても、あの夢の内容が・・気になってしまう。
今は・・大丈夫だとして、このまま・・夢と割り切って・・行かなかったら?
嫌な予感のまま、気になったまま・・・このまま、王子の旅に同行していて大丈夫なのか?!俺・・・と思ったんだ。
オリクト「王子、ルア・・ユナムだって考え無しに”行きたい”って言ってるんじゃ無いんじゃないですかぃ?」
ルア「もちろん、そうだとは思うわよ。だけど、その理由が言えない事には・・何とも判断しきれないのよ」
王子「ユナム・・最初から、教えてくれないか?」
最初・・・
俺は、王子たちに・・信じてもらえない前提で・・話を・・・始めた。
王との謁見後に観光したのち、別の宿に泊まった時に見た夢。
出てきた魔物は【ヘラジの塔】にしか居ない事。幼馴染が居た事。
アソオス国のマントを付けてた人が居た事。
そして、彼らが危険に晒されてた場面だった事・・・
翌日には、一旦は落ち着いたのを見た事。
・・・・・・・・・・・。
静まり・・・・沈黙が続く。
俺は、どんな反応が返ってくるかなんて、分かってた。
しばらくしてオリクトが、おもむろに口を開く・・
オリクト「心配し過ぎで、そんな夢見たんじゃなくてか?」
ルア「それなら、続きを見るなんて事ある?妄想って言うならまだしも」
王子「・・こういうのは、以前から見た事があったのか?それとも・・」
王子の質問に間髪入れずに答える。
俺「以前から、見た事があります。なんなら、王子達に会う前も見ました」
一同「!!」
ルア「え?・・・どういう事?・・・あの時、あの場所に来たのは、偶然じゃなかった・・って事なの??」
俺は、頷きながら返事をした。
オリクト「・・・そんな事・・あるのかよ・・・」
王子「その時は、どんな感じで見たんだ?」
俺は、少し整理しつつ・・見た夢を答える。
オリクト「・・もし、あの場にユナムが来てなかったら・・・?」
王子「ソールは・・・」
ルア「ねぇ、ユナム。夢と思って、行かないって選択もあったわよね?」
その時の葛藤も、全部・・話した。
ルア「でも、こんな話・・・にわかには・・信じ難いわね・・」
王子「・・・ユナム・・・お前の固有スキルは何だ?」
・・・・・は? 固有・・・ ス キ ル ・・・って、何だっけ??
・・・えーーーと・・・・・・・
ルア「その人だけが使えるっていう、スキルの事だけど・・思い当たる?」
・・あぁ、アイラで言う所の『フェイン』という先読みの力・・みたいな、アレか!
俺は、首を横に振る。 そんなモノが ”ある” とは思ってない。
オリクトは王子が、何か考え事をしてるのを察して問いかける。
オリクト「王子・・何か、気になる事でもあるんですかぃ?」
王子「あぁ。もしかしたら・・・王都の文献で読んだ事がある『ミルゼア』・・かもな・・ユナムのそれは」
え? 聞きなれない言葉が出てきた。
ルア「ミルゼア?!って・・・あの??」
オリクト「なんだ?それ・・?」
ルアさんも、少し考えて・・言葉を続ける。
ルア「数百年に1度程度に顕現する・・と言われる、とても特殊な能力の事よ。ある意味、フェインの強化版というか・・」
王子「フェイン(先読み)は、戦いの先を見る能力でしかない」
ルア「そうですね・・。ミルゼアは、予知夢と呼ばれる類で<夢>という形を取って、直近の悪夢を見せる能力・・とされてるわ」
俺は・・・・聞いてて、他人事のように・・鳥肌が立った・・・・
俺に固有スキルがあるって事よりも、予 知 夢 って所に・・・。
奇妙と思ってた事に合点がいく。
確かに・・『 悪 夢 』だ。
行かなかったら・・? そう思うと怖くなる。というか・・寒気が・・。
オリクト「じゃ、今ユナムが夢で見たって話は、現実に起こってる事かもって事だろ?・・それで・・・どうすりゃいいんだ?」
ルア「すぐに結論なんて出ないわよ!・・それに、文献に残る程度の能力よ・・。本気で信じるには・・・・」
ルアさんの言い分も、もっともだと思う。
今、優先すべきは、王子の儀式の為の旅だし。
・・・・俺の、気まぐれ的な夢を信じて行動すべきじゃないって分かってる。
でも・・アイラが心配だ。
心配は要らないって怒りそうってのも分かってる。
あいつは、そんなにやわじゃない。
でも、アソオス王子に・・もしもの事が遇ったら?!・・
とか、いろいろ考えて・・・俺は動けなくなるんだ。情けねーけど・・
王子「・・・ユナム・・。お前は・・・どうしたい?」
王子は、真っすぐな目で、俺を見据える。
俺は、その目を見て、口を堅く結ぶ。
・・やや、俯きながら・・・でも、ハッキリとした声で答える。
「俺は・・塔へ 行きたいです!」
何でも無い・・と、確認する為に。
俺の声と言葉と・・・顔を見て、王子はおもむろに立ち上がって、マントをたなびかせる。
王子「そうか・・」
俺は、王子たちとの別れを覚悟した。
ルアさんやオリクトも、王子の顔を見て何か感じ取り・・・立ち上がる。
王子「ユナム・・」
俺「・・・・はい・・」
王子「塔へ行くぞ!・・すぐに出発する!」
・・・?
は ぁ ? !
俺は、びっくりして立ち上がり、王子達を見ると・・・
俺の方へ振り返った王子も、ルアさんも・・オリクトも笑顔になってた。
俺「・・・え・・・」
俺は、まだ状況が・・上手く・・・整理出来ない。
だってさ・・王子は、大切な旅の途中で・・・俺の夢は、ただの夢かも知れないってのに・・・・マジで・・言ってる??
俺自身、気づかずに・・・涙がこぼれていた・・
オリクト「泣くな!ユナム!・・ほらっ 行くぞ!」
ルア「いつまでも気にしてて行動出来ない・・なんて、困るものね」
王子「お前の憂いを、晴らしに行くぞ・・!」
俺は、涙をぬぐい・・思いっきり大きな声で返事をして、荷物を持って王子たちについて行く!
ギルド内から、異空間の部屋(家具も何も無い青いだけの部屋)に通され、ギルド長の魔法陣でアルシュ山の洞窟入口へ飛ぶ!!
・・風の音が聞こえ、目を開ける。
ルア「ユナム、こっちよ」と手招きしてくれる。
以前に通った所を戻り、塔方面に行く道を通って行く。
一応、魔物も出たが・・儀式後にレベルがかなり上がってたのか、難なく倒してすぐに、塔手前の村に辿り着く。
王子「一旦、ココで準備を整えるぞ」
王子の一声で、この村のこじんまりとした宿屋へ・・。
やや、毎度恒例になってきた・・4人部屋に通される。
・・・まだ、夕方には早いくらいの時間帯。
王子が俺の方へ向き直って・・「焦るなよ・・」って言う。
俺が首を傾げてると・・横に立ってたルアさんが、俺の鼻に指を当てて
ルア「勝手にひとりで行ったりしないでよ・・って事よ!」
俺「え・・・あ・・・・・はい・・」
俺・・そんなに落ち着きなかったかな?・・とか思いながら、川と橋で横断されてる村の中を見て周る。
山の方への橋ではなく、北の方にそびえる塔が・・存在感強過ぎだったのが印象的な所だった。
明日には・・あの塔へ行くのか・・。
不安になってるのは、嫌な予感が消えてないからだ。
ただ・・ひとつ。
問題があるんだよな・・・はぁ~・・・・ランク・・
ひとまず、宿の部屋にみんなが帰って来た頃に、王子が話を切り出す。
王子「皆、明日の日程を確認するぞ」
オリクト「塔へ行く予定じゃなかったせいで、俺らのランクアップも保留っすよね?」
ルアさんは、何かノートやアイテム袋などを確認しながら、時々こっちを見つつオリクトの疑問に・・・・
ルア「それなら気にしなくていいわよ、オリクト。塔の1階部分にあるギルドで出来るから」
オリクト「そういや、そんなのあるって聞いたな・・。ランクアップまで出来るのは知らんかったが」
ルア「あそこは、塔の1階を改装した当初から、しっかりしてるのよ」
王子「だからまず、塔に着き次第・・ルア・オリクト・俺・ユナムもランクアップを受けるぞ」
え?俺も??
俺「最近、3になったばかりですけど・・・?」
ルア「あなた、儀式一緒にクリアしたでしょ。その際にかなり上がったんじゃない?出来るかどうかは、向こうの判断にはなるけど・・一応、そのつもりで居てよ」というので、分かった旨を伝える。
王子「それにユナムの夢の階層へ行くにしても、かなり上だから、すぐにそこまで行けるとは考えていない。そこは、気を付けておけ」
アイラたちが居るだろう所は、46階・・今の所。
13階ごとに休憩所があるって話で、そこから1階に戻る事も可能だし・・一旦行き来が出来れば、次は1階からその階層へ飛べるって話だ。
ルア「目標の階層辺りは、本当に強いのが多いって聞くし、中にはグループ同士で共闘してボスを倒す人達も居るって話よ」
俺たちは、その”共闘する”という目的を掲げ、遭遇してから考えるって事で・・明日の早朝には、塔へ向かう。
その夜・・・・
案の定、夢を見た。
・・どこかの休憩所のような場所で。王子もアイラも他の人達も・・
血だらけでベッドで寝かされていて、カリゼアの姿の人達が光魔法で包んで治しているような場面だった。
かすかに、うめき声がするから・・・ 生 き て は い る 。
・・何があった?!
カリゼアたちの所へ・・・ギルド長っぽい人が来て、何か話してる。
聞き耳を立てると・・
長「王子たちは、無事か?!」
「はい・・一命は取り留めてます・・が、どの人も傷が深く・・」
長「それで?・・何にやられたと言っていた?」
「それが・・・特徴を照会したのですが、見慣れないレアな魔物のようでして・・・まだ、判明しておりません」
また?・・・と、俺は思った。
かなり前・・・俺がレスカテ王子と出会った、あの時の 魔 物 。
あの後、ギルドで調べてもらったんだ。
・・・何って、わ か ら な か っ た 。って事だけ、分かって。
凄く・・奇妙だ。
何か・・・・・関連でもあるのか?
いや・・でも、同じ奴とは限らない。
なんせココは、レスカテ国じゃなく、アソオス国なんだし。
・・・違う・・・よな?
明日・・もし、会えれば・・・・・くぅ・・・すぅ・・・・・・
【ヘラジの塔】※復習
アソオス国の最北にそびえたってる塔。ヘラジ=ポルトガル語・異端者
塔を作ったとされる者の名前という由来がある。
塔1階には、アソオス国のギルドが魔物討伐した後、改装し店やギルドとしての機能を持った場所になっている。宿・治療院も完備。ランクアップ試験も可能。
なお、ランク1の状態ではそもそも、砂漠が越えられない為、ランク2以上推奨とされている。(せめてLv10以上推奨)
13階層ごとに安全地帯の休憩所がある。これは、元々の仕様である。
なお頂上には、ドラゴンが住んで居て、辿り着いた者への褒美として願いを1人1つ・1回だけ叶えてくれる。ついでに、この時・・ドラゴンと戦う事も可能。
倒すとドラゴンの素材や大金が入手出来るとされている。
ちなみに、倒されると数日後に結界に守られた卵が産まれ、元々ドラゴンが居た場所には宝箱が5つあり、その中の1つに鍵が入っている。それを1階のとある所で使うと地下へ行ける。そこには、ドラゴン以上の魔物が出現する・・と言われてるが、未だに行ったという者が存在してない為、半ば伝説の話として語られている。※ゲームあるあるのやり込み要素扱いとしての設定でしかないです。
【ミルゼア(夢見)】ユナム・固有スキル
本人の望む望まないに関わらず、直近で知り合いや知り合いになる縁のある相手の危機を<夢>という形で見る。その夢に示された場所で行動を起こす事で、悪夢を回避したり、夢と割り切る事で、運命が変化する能力。この世界の今の時代では、文献に記載がある程度の能力であり、信じてない者も多いのが現状。
※分岐の先の話は、こちらでは書きません。
【タガレアラ村】(ポルトガル語・お喋り)
アルシュ山から塔へ向かう道の先の村。住民は主に塔に関連した情報を持っている。塔の存在が大き過ぎてかすむ村。ただ、一通りは揃ってる為、冒険者の休憩地として利用する人は多い。
【カリゼア】職業の名前のひとつ。
神官という意味。回復魔法特化+杖装備タイプ。光魔法が主だが、回復関連何でも使える人が多い。
次回・・塔攻略中に・・出会えるのか?!




