第24章 賢王
こちらの言い分を聞こうともせず、捕まってしまった俺たちだったが、牢屋の穴から一人抜け出した。
頼まれた手紙を出し・・ギルド裏手に進もうとした矢先‥ふいに、コートの端を掴まれ振り返る!
・・瞬時に、頭回らず・・・
「大丈夫か?ユナム」という声で、ハッ とする。
「え⁈ 王子??」目の前に、王子が居る・・・。王子の後ろから、ひょこっ と現れたのは、少年・フィロだった。
フィロ「お兄ちゃん!父ちゃんは?」
俺は、フィロと同じように逃がしてもらっただけで、おじさんやルアさん、動かせないオリクトの話を二人に伝えた。
王子は周囲を警戒するように左右を見て、俺の腕を掴むと‥ギルド奥へと進む。半ば強引な形で、移動した。
・・・そして、一番 奥の部屋へ入る。
王子「ルアやオリクトは、無事なんだな・・?」
俺は静かに頷き、王子の儀式は、どうなったか‥と聞くと、もう証を得ているらしい。しかも、もう魂に刻まれる所まで済んでいた。
「女王から、何か言われましたか?」恐る恐る聞いてみた・・。
王子は、女王とギルド長から‥俺たちが、国の財産とも言うべき、貴重なアイテムを盗んだとして、牢屋へ入ってると知らされ、物凄く驚いたらしい。
そりゃ、そうだよな・・。
王子は、ひとりで儀式に臨んでた。俺らの事を信用してくれてるから、そんな事になってるとは、思ってなかったはずだ。
王子「女王に、仲間を牢屋から出して欲しいと願ったのだが・・。聞き入れて頂けなかった。盗人を養護し、兵に攻撃をして妨害した事は、重 罪 だと・・」と、やるせない気持ちになったそうだ。
証は得たから、ギルドで新しいメンバーを加入させ、旅の続きをすれば良い・・・と、言われたらしいけど・・・・。
王子「…おまえたち以外を 連れて行く気は 無い。俺にとっては・・」と、町へ出て来ると、こちらで「ユナム兄ちゃん達と父さんを助けて」とギルドの人に言ってる少年と出会ったそうだ。
フィロ「父ちゃんのお店 にも行って、助けてっ!って言ったけど・・」と父親が働いてる鍛冶屋で相談したけど『女王に 逆らえない』と言われてしまったらしく、とても哀しそうな顔で‥話してくれた。
・ ・ ・ どうにか‥ならないものかな・・・?
王子「フィロ、落ち着くんだ。父上へ手紙を出す為にも、一旦 牢屋に戻らなくてはならない」
「?・・なんで、ですか?」
王子「ルアに預けている 白い手紙 を出せば、父上に ” 緊急事態 ” を知らせる事が出来る。他国の王でも‥父上の要請ならば、従わねばならぬ効力がある」
・・それを受け取る為に 戻る・・・って。
・・・・あれ? それって、さっきの・・では??
「あの、王子‥。俺、たぶんそれ…出しました・・さっき」
王子「何?! 本当か?」
俺は、さっきの白い手紙は、ルアさんから預かったもので、ギルドで『必ず届ける』と、聞いた事を話す。・・どうやら、さっきの手紙は…現・賢王である、レスカテ王に知らせる手紙だった らしい。
王子は 右手の甲を顎に当て、少し悩んだ格好になって・・・。
王子「ならば、早急に犯人を 捜す必要があるな・・」と言う。
『 商人 』という事しか 分からない と俺が伝えると・・フィロが元気よく
フィロ「ぼく、覚えてるよ!」と。
一晩だけとはいえ、見ためが派手で ” こういうのが商人って人なんだ・・ ” と思ったから、覚えていたそうで。
フィロ「さっき、この近くで見たんだ!」
フィロの言葉に、今度は…俺の方がびっくりした!
「マジ?!」 フィロは、大きく頷く。
でも・・と、少し不安そうな顔で、何かを気にしている・・・。
「?・・どうかしたか?」
フィロ「…商人さん、父ちゃんの友達と…一緒に 居たんだ・・」
王子「普通に、商売をしていたのではないか?」
え? いや・・おかしい よな? え?俺だけ??
「王子、それ‥なんかオカシイですよ・・。だって、その商人が渡した魔石のせいで、フィロのお父さんや、ルアさんやオリクトが捕まってるのに、なんでその商人・・・。町から出てないし、おじさんの友人と話してるって・・」
えーと・・上手く説明 出来ない ぞ・・・。うーーん・・・
王子「つまり、その商人は王族とも関係を持ってて、フィロの父親の友人もグルという事か?」 王子の言葉に、たぶん・・と答える。
ひとまず、兵士に見つからないように・・フィロの案内で、商人が居たという場所へ・・案内してもらう。
住宅が立ち並ぶ所に・・って、近くにフィロの壊れた家が左奥にあるのが、道の先に見えた。随分と近いな…と思いながら、とある家の塀にしゃがんで近づくフィロに習い、俺も王子も‥屈んで近づいた。
『‥タリオの奴に、悪いとは思ってるが、仕方ないんだ・・』
『あなたが、気にする事は ありませんよ。これもまた 王命 ですから』
『しかし…あの鳥が、そんなに貴重だったとは‥知らなかったぜ・・』
『これを他国に売れば、私たちは‥この先の将来を、優雅に過ごせますよ』
という所で王子が立ち上がり、男2人に剣を向けていた。
音も立てずに、王子が近づき・・
横に2人並んでいたから・・王子の剣の間合いだった。
「・・・詳しく、聞かせてもらおうか」
という王子の声で、王子の存在に気付く男共。
ひっ! とか、うゎっ! とか言ったけど、もう遅い。
「おい、そこの商人・・。よくもタリオさんをハメてくれたなぁ?」
フィロ「‥ダソスおじちゃん・・・ひどいよ・・」
商人「・・ぉ・・・おまえたちは誰だ?! わ・・私には関係無い!」
ダソス「‥フィロ?! いや・・俺は、その・・・」
王子「フィロ、この家の中から何か‥ 見慣れないもの を、探してくれないか?」と、剣を男らの顎のラインに構えたまま、伝える。
俺も一緒に・・探す。
・・・思った以上に、簡単に見つかりそうだ…と思った。
なんせ、アヤシイな・・と思った所に向かうだけで、商人と男は「そ・・そこには何も無い」と言うので調べて・・本当に無いと、ふぅ~と安堵の溜息をついたから、あいつらの反応を見て探すように、フィロに言うと「わかった」と言って、奥へと探しに行くと・・男の方が、いちいちフィロの行動に「あぁ!」&「いや・・なんでもない」とか言ってて。
俺は反応が分かりやすい事に、笑うのを堪えながら探していたら、棚の後ろに隙間を見つけ、押すと板が外れて、すごく眩しい鳥が出てきた。それとほぼ同じ時に、フィロが家の奥の方から「キラキラしたの、いっぱい入ってるの見つけたー」って大声で戻って来た。
俺も、王子の方を振り返って「鳥、見つけました」と伝える。
王子「何か、言うべき事が・・あるのではないか?」と剣を仕舞いながら言ったが、直後・・いつの間にか、赤い服の奴らが 5人ほど 家を取り囲んでる!
なっ!? 見つかった! ・・いや、見つかって良かった・・・のか?
赤服「よもや、王子もグルとは思いませんでしたな・・」
赤服「何?! そこの者!なぜ牢屋から出ている?!逃亡犯を見つけたぞ!」と俺の方を指さして叫ぶ。
・・・全然、良く無かった!
王子が、俺たちの身の潔白を説いてるのに、全く聞こうとしない。
・・・あぁ・・・また、捕まるのかよ・・・。
赤服「今度は、牢屋なんぞ・・生ぬるい場所ではなく、牢獄に案内してやろう」
フ ハ ハ ハ ハ ッ と笑った直後・・・ふ わ り と、上から何か降りてきて・・・・瞬時に、赤服の奴らは・・斬り殺され、前に倒れる。
それを目撃した男と商人は、叫び声に似た 恐怖した顔で 声が出たが、言葉になっていなかった。
フィロを心配したが、降りて来たと思った時には‥王子が、フィロの目を塞いでいた。王子は、相手が誰か・・・分かってるのだろうか?
ふたりが心配になり、俺は王子の隣へすぐ移動し、構える。
俺の武器は取り上げられていて、丸腰だが・・構うものか・・・。
しかし、俺の構えを王子は降ろさせる。
そして、降って来た兵士の後ろから、大柄な・・あれは・・・
レ ス カ テ 王 ?!
俺はすぐさま、跪いた。フィロにも同じ姿勢になるよう伝えると、すぐに行動した。「偉いな」と俺が言うと、嬉しそうにしている。
王子も跪くと、男と商人は膝から落ちた形で床に両手をつけ、今更・・謝りだしている。
「リュウよ・・。報告せよ」
低く重みのある、ゆっくりとした声が響く。そこまで大声でも無いのに、腹に響く声だった。
・・・なんか、緊張する・・・。
王子は、事の顛末を話し 始める。
それを聞いていた商人は「言いがかりだ!我々は、その子供の親に騙されたのだ!」平然と嘘を付いてたけど、兵士に即、口を布で塞がれ・・縄で縛りあげられていた。
この世界の賢王の事・・・まさか、知らないのか?
そこら辺の国の王とは、違う んだぞ・・・。 呆 れ る 。
そもそも、王族の話に・・割って入る方が、間違ってる。
・・・命 知 ら ず だな・・・・・。
男の方は、ガクガク震えて青ざめているし、口を挟む商人に対して・・余計、恐怖心を煽られたのか、地黒な肌だったのに、死んだ人みたいに血色が悪い・・大丈夫か?・・・その内、気絶しそうだな・・・。
そう思ってたら、ガタッと前に倒れ込む。案の定、気絶したようだった。
「ふむ。それで鳥も 見つけたのだな」と、兵士に視線だけで指示を出し、鳥と鳥の羽部分を箱に入れ回収していた。
「では、あの女に話さねば ならぬな・・」
王の言葉が聴こえ終わるかどうかという時に、体が ふわっ と、浮くような感覚になり、慌てて足に力を籠める・・・。
・・・・え? なんだ??
ほんの、数秒の出来事だった。
なんで、城に居るんだ??
そして、すぐに城の兵士に取り囲まれ、上の階から「何事です!?」と女王の声が響き、降りて来る。しかし、数歩歩いた靴の音がしたのに・・階下へ降りてこない。
俺は気になって、階段の方を見上げると・・女王の顔は強張っている。
女王「…なぜ、賢王が・・この城に?」震える声で、やっと絞り出した・・というような言葉を話すと、王は「息子の仲間と、この少年の親を無傷で還してもらおうか女王よ」と、兵士達に・・先程 回収した箱を・・この国の兵士の前に置いて、蓋を開く。
女王は、国の宝と言っていた鳥・・パボ・レアルを見て・・喜んで、王にお礼でも言うのかと思ったのに・・・。予想外な顔をしている。
・・・なんで、顔の笑顔・・・・引きつってるんだ?
女王は、降りて来ようとしない。そんな女王にレスカテ王は話を続ける。
賢王「女王よ・・。そなた、国の王になっていながら、私腹を肥やしていたそうだな? 既に調べてある。よって、そなたの罪状は、こうだ・・」
王に 兵士長と呼ばれた人物は、何かの書状を女王に見せながら、説明していく。
そして・・女王は王の魔法によって縛られ・・兵士に引き渡される。
他の兵士たちが、既に行動していたようで、オリクトとルアさん・・そして…
フィロ「父ちゃん!」とタリオさんに駆け寄って行った。
王子「ユナム、もう立ち上がっても大丈夫だ」と言われて立ち上がると「!!」俺の目の前に、かなり近い位置に レスカテ王の顔があって、驚き過ぎて固まった・・・。全身に寒気が走る…。
賢王「‥其方が、ミルゼアのユナムだな?」
「…は・・はい!」
俺の顔を まじ まじ 見て・・ふむふむ、なるほど・・と顎を触りながら見られる。何? 俺‥どうすれば・・? お・・・王子‥・・・。
・・若干、涙目で 王子に訴える・・・。王様を どうにかして下さい・・と。
王子「…父上・・。そんなに見ては、ユナムが 息も出来ません」と呆れたように言ってくれたお陰で、やっと王は‥離れてくれた。
ふぅ~・・ 王子にお礼を言うと「父上が すまぬ」と言って、苦笑していた。
ルアさんもオリクトも戻って来た。
「ルアさん、オリクト・・」
俺も、王子も・・二人と再会出来た事を、素直に喜んだ。
オリクトが、女王が縛られてる事に驚いたが、ルアさんは「当然よね」と言うだけで、すぐ視界を 王子や王に向けた。
城の兵士たちは、事故処理を頼んでいたり、女王候補の女性を呼ぶように言ったり、国宝の鳥を預かって‥どこかへ移動したりと動き出した。
しばらくの後、俺たちは客室に戻り・・兵士たちから荷物を受け取る。
「‥王子、女王は・・どうするんですか?」捕まったままだけど・・・。
王子「この城の地下深くに投獄され、一生出られないそうだ」
・・巨木の地下辺りにある、牢獄。
エルゥ族は、長命な種族ゆえに・・いつ亡くなるかが、明確に分かっていない。この為、その牢獄で一生涯・・亡くなるまで、居続ける必要があるほどに、重い罪だという。
女王が捕まった理由に、俺たちは…巻き込まれたのだと、王子が言うのだった。
【ダソス】(ダソス=ギリシア語・森)
タリオと共に、鍛冶屋の職人のひとり。独身。34歳。鍛冶屋の親方に借金があり、商人に唆されて、犯行に及んだらしい。
【レスカテ国・騎士団】王 直属の兵士たち。兵士長は居るが、騎士団長は、別の任務で不在。王の命令でしか動かない部隊。
【賢王】現在は、レスカテ国王が、”賢王”として全国を統括している。儀式を勝ち抜き、賢王となった事で、賢王のみが操る魔法や、奥義などが使える。そして、その言葉の効力は高く、どの国の王も逆らう事は 出来ない。とはいえ、罪も無い者をどうする事も出来ないので、女王を調べていたようだった。体格が大きく筋肉質。白い紙により、コロモス女王捕縛 と 王子の旅継続 の為、兵士数人を連れて来て下さった。王子やルアからの報告で聞いていた、ミルゼアの力を持つ少年を見てみたいと思っていたらしい。
【巨木の牢獄】特殊な魔法陣により、根よりも深い所に 存在している という牢屋。一応の生活は出来るが、側近もなく、ひとりで一生涯・亡くなるまで過ごさなければならない。女王引継ぎが終わるのも、数千年必要らしく、いきなり死刑に出来ない場合に、使われる場所。どのような攻撃・魔法・転移陣を発動させようとも、巨木の魔力に遮られ・・不可能。
次回、女王と商人の癒着・・というか、罪の理由。 残る儀式は・・・。




