第23章 理不尽
王子が儀式の間に出会った少年に…町中で、再び出会う。
その子の父親が‥何者かに襲われ、俺も・・・。
一体、あいつらは・・何なんだ?!
「…助けて頂き、ありがとうございます・・」
ルア「なぜ、襲われたのか‥ご存じですか?」
「襲われた理由は、たぶんなのですが‥貴重な素材を‥受け取ったせいかと‥」
子供に あの素材はどうした? と聞いたけど、子供は「あっ!」と言って、忘れたてた事を思い出したみたいで、慌ててる。
「それなら 大丈夫だよ。ギルドで預かってもらってるからさ。あ、俺 ユナム」 君は? と聞くと、おじさんが答えた。
「私は鍛冶職人で、タリオと申します。この子は、フィロ」
ルアさんも、オリクトも名乗る。
そして、タリオさんは‥数日前、他所の国から来た 行商人に 親切にした時の話をした。
タリオ「あの日は、珍しく‥雨の降った日でした」
ここ、コロモス城内町では‥大きな樹のお陰で、他所で雨が降ってても、ここは晴れてるって事がザラなんだとか。木の枝や葉が密集して はえてるのも、理由のひとつだろうって、ルアさんが。
仕事が終わって、家に帰る道で‥見慣れない商人の姿の人が、酷く怯えて困ってる様子だったから、声をかけたんだと。なんでも…宿が満室で泊れず・・商品もあるので どうしようかと悩んでいたらしい。
一泊なら、我が家で過ごされては?と言って、馬車も敷地内へ入れて、自宅に泊めてあげたんだって。で、翌朝‥その商人から「一晩の宿を借りたお礼です」と、渡されたのが・・・あの貴重な・・虹色の・・。
・・・え? お礼に渡されたのが、あれって・・おかしくないか??
俺が、珍しく難しい顔で首を傾げて唸ってると・・。
ルア「・・・変ね。それ…」オリクトも怪訝な顔で‥見てる。
タリオ「え?ど こ が ですか?」
ルア「あのアイテムは、貴重で希少価値が高くて、お礼に・・って渡すようなものでは無いの・・」
おじさんも、少年フィロも、目を見開いて驚いている。
・・・だ よ な ~・・。
オリクト「その商人ってのが、目利きも出来ない奴だったって だけ じゃないのか?」
ルア「…うーん。あれは‥そこら辺で拾えるような物でも無いし、国家レベルの貴重な魔石なのよ・・。そんな事、ありえないわ…」
オリクト「偶然‥‥拾ったって事くらいは、あるんじゃねーか?」
えー?ってルアさんが、戸惑ったような顔をしてる。
昨日‥説明してた中に・・・ ” 今は 個体数が少ないから、国で管理している ” とか‥言ってなかったか?
「オリクト…それ、たぶん無理だ。確か、それの元の生き物・・。国で管理してるって、言ってませんでした?ルアさん・・」
ルアさんが、俺は聞いてないのかと思ってた・・と言ってたけど、まぁ確かに詳しい事には、あんま興味わかなくて‥。聞き流してたって方が正しいんだけどさ。
タリオ「え・・そうなのですか?…じゃあ、なぜ‥その人は?…。いや、たぶん、その魔石を持ってると知れたのでしょう。襲われた理由としては、魔石を狙っての・・と思えば、普通の事ですね‥」
いやいや! 呑気に 言える事じゃないって!
タリオさんは、どうやら…使った事の無い魔石だったから、ギルドで換金してもらって、飯の金に使おうと 思ったらしい。自分は仕事だから、家に置いて盗まれるよりは、早く売ろうと・・息子フィロに‥託したらしい。
フィロ「でも、父ちゃん‥。ギルドのおねーさんが、長が帰って来ないと出来ないって。あと、このおにーちゃんが・・」と俺の方を見上げる。
「はい。金額 聞いたけど・・。子供ひとりで運べないくらいの値段になるらしくて」
タリオさんに、小声で伝えると、え・・って固まってしまった。うん。わかる。・・・俺も固まったし。
タリオ「そういえば、襲われる時に・・『貴重な魔石を盗んだだろ!』と怒られたのです」
ん? 盗んだ??
タリオ「私は、盗んでおりませんし、あれは‥一晩泊めた商人から受け取った物です‥と、伝えたのですが・・問答無用と言わんばかりに・・」
攻撃を受けたって事か・・・。間に合って良かったけど。
オリクト「どうする? 俺らだけで、やれなくはないが・・」
ルア「そうね・・。女王様に聞いた方が、良いような気がするわ。王子に聞いたとしても、そうすると思うから」
「魔石の事は、ギルドに預けてる事を伝えるだけで、いいんじゃないっすか? この人らも、保護してもらいたいし‥」
ルア「‥そうね。でも、この結界を外したら、すぐ 狙われる可能性もあるわ」
オリクト「おっさんと子供は、俺が 運ぶ。ルアは、警戒しつつ解除。ユナムは、周囲を警戒して対処しろ。 二人とも、いいか?」
オリクトの指示で、俺も警戒態勢で防具の盾と、武器を構えて‥意識を集中して、周囲を警戒する・・。
ルアさんは、オリクトがおじさんを背に担ぎ、フィロを抱っこしたのを確認すると、俺たちを見て・・・。
ルア「…外すわよ。城へと降りる道は、覚えてるわね? ‥‥行くわよ」と、それまで地面に刺したままの杖を浮かせると、結界が消える!
瞬間、親子を狙って短剣のような物が投げられたのを、俺が剣で払う!
ルア「走って!」と言う声と共に、走り出すオリクトとルアさん。俺も周囲を警戒しながら、走って追いかける!
前方から、数人の赤い服の奴らが現れたけど、ルアさんが即 発動魔法で、撃退! 周囲に被害出さないように、最小限の火力になってるのが、マジ凄い!
俺は横などから、飛び掛かってくる奴らを殺さない程度に寸止めして、気絶させていく。・・上手く出来るようになったと自惚れつつ、でも集中切らさないように、ついていく!
階下へ降りて行くと、既に騒ぎを聞きつけたのか‥女王と、ギルド長が並んで待ち構えていた。背後には、多くの兵士の姿もあった。
女王の前のフロアで、オリクトが、二人を降ろす。
ギルド長「‥その方らが盗人か?」
「待ってください! 俺らじゃないです!」
女王「…えぇ。もちろん分かっています。グラセリオの皆様でない事は…」
少し、ホッとしたのも束の間・・
タリオさんと、フィロが捕まった! えっ・・ちょっと?!
オリクト「この人らも、盗人じゃ‥ありませんぜ?!」
ギルド長「しかしな‥報告では、持っていたのは、その子供 と その親 だと聞いたぞ・・。詳しくは、直接 聞くとしよう。疑いが晴れるまでは、こちらで預かる。魔石もな・・」
ルア「女王陛下、お願いです。彼らは巻き込まれただけなのです・・」
事情を説明したけど、女王様は首を振り・・
女王「我が国で管理してる場所から、盗みを働いた者が居たのは、事実なのです。それを回収しようとしたのに、あなた方に…妨害されました」
え?
オリクト「あの・・赤い服の奴らの事ですかぃ? いきなり襲ってきた…」
女王「盗人に、かける情けがありましょうか?」
「ちょっ! あの人らは、盗んでないのにか?!」
疑わしきは罰せよ・・とか、言うのかよ? 調べもしないで・・・・。
ルア「それはオカシイですよ。本当は、犯人をご存じなのでは ないのですか? 問答無用で殺そうとしてるのは、明らかに おかしい事 ですよ?」
女王「…レスカテ王子は儀式の最中ですから、少しでも穏便に済ませたいのですけれど・・。これ以上、邪魔をするなら・・あなた方も、牢へ入りますか?」
何なんだ‥この女王・・?
女王「王子の経歴に傷もつきますし、儀式も…ココで終えられるのですね」
・・なっ・・
オリクト「おいっ!何言ってんだ?! そんな事すりゃ、賢王が黙ってないぞ」その言葉に、赤い服の連中まで加わって、兵士たちも俺らに剣を向けてきた。
おいおい‥ 俺らも、タリオさんも・・犯人なんかじゃ・・・
ルア「本当に、その犯人と思しき商人を・・探さないのですか?」
女王「犯人はもう、捕まえました。お話は終わりです」
「だから! あの人らじゃないって!」・・直後、背後に立った奴に気付いたが、俺は・・・意識を、失 っ た 。
・・・・。
「・・・」
・・・ん?
「ユナム!」
はい・・。っつ・・・痛っ・・・
ルア「ユナム、大丈夫?」 ル ア さ ん ・・
薄暗い部屋に、ルアさんと・・・あっ!
俺は奥で、壁にもたれかかってるタリオさんを見つけ、勢いよく、飛び上がり・・駆け寄る。「タリオさん?!」 ・・・酷い怪我だ。
ルア「一応、回復はしてあるわ」そう言う、ルアさんの方を振り返ると、傍にオリクトが横たわっている。
「オリクト?!」 オリクトの所へ駆け寄ると・・酷い怪我してる・・。全身に切り傷や打撲の痣が・・・。
ルアさんが、溜息交じりに「あなたが倒れた直後に、暴れたのよ・・。私もすぐに捕まってしまったけど・・。オリクトは抵抗したのね・・」
なんで・・こんな事に・・・・。
・・・王子・・すみません。
あれ・・・・「フィロ?」
この部屋に、少年は・・居なかった。
ぅぅ・・と、タリオさんが気が付いたようだった。
「っ! だ、大丈夫ですか?!」
タリオさんは、俺らを見て・・あぁ・・と。
タリオ「あなた方も、巻き込まれてしまったのですね・・・」
「俺らの事より、あなたの方がっ! それに、フィロは?」
タリオさんは、何かを思い出すように俯き、ボソッと話す。
タリオ「フィロは、逃がしました」
え? どうやって・・と言いかけると、体を少しずらし‥壁の穴を見せる。ここから、逃がしたらしい。奥を覗くと、隣の小部屋(倉庫っぽい)に繋がっているし、小窓が開いてたから、あそこから外へ出たのかも‥と、分かった。
ルア「ねえ、ユナム・・。あなたも、逃げなさい…」と言う。けど!
「嫌ですよ! みなさんを残していくなんて!」
ルアさんは、オリクトの方を見ながら‥「私は動けないから、お願い」と言われる。お願いって言われても・・・。
ルア「…私たちの代わりに、犯人を捕まえて」
「・・・犯人を?・・・って、商人??」
ルアさんは軽く頷き、続きを話した。
犯人が捕まれば、自分たちも解放される。それに・・・
ルア「この手紙を、2階の奥にあったギルドで、レスカテ王に届けてもらって。その後、エルゥ族以外の人達に聞いて、商人姿の人を探して!」
白い手紙を 受け取る。
エルゥ族以外。2階奥にあるギルド・・・。俺…見つからずに、行けるかな?
不安そうな顔に気付いたルアさんが、渋い色の緑のフード付きのコートを出す。これを 外へ出れたら、羽織っていけと言われる。
タリオ「フィロも、ギルドへ向かわせてます。もし会えたら、お願いします・・」「はい」と俺は言い、少しの金とアイテムを持って、穴から這って出て・・・丁度、大きな木箱に隠れる形で、奥に居るらしい兵士に見つからずに・・窓からなんとか・・外に出た。オリクトじゃ、出られないな・・。
・・外って言っても、建物の"外"・・・だったけど。
コートで、すっぽり覆って・・人込みに紛れる。
まず・・ギルドを探さないと。兵士とかにも気を付けないとな・・そう思って、俺は 警戒心持ったまま、ギルドを探す。
ついでに、商人風・・つか、どんな奴なのか、詳しく聞くの・・忘れた。・・・今から戻ったら、逆に見つかりそうだし・・な・・・。
・・・・と、とにかく! ギルドで、手紙出す!
大通りに出たら、すぐ目の前ってくらい近い所に在った。兵士が居たから、物陰で様子を伺い、去ったのを確認してから、ギルドへ近づく。
「この手紙を、レスカテ国の・・」
手紙を受け取った受付が、何かに気付いたみたいに、目を見開く。
こっちが「?」を浮かべてると、すぐ我に返ったように「すぐに、確実に送ります。ご安心下さい」と、やや小声で伝えられる。金を払って、すぐに立ち去るって、ギルド横の裏路地に入る。
ふいに、コートを掴まれ・・反射的に振り返ると・・・
「え・・? なんで、ここに?!」
【タリオとフィロ】(タリオ=スペイン語・幹/フィロ=ギリシア語・葉)
コロモスで生まれ育った人たち。フィロの母親は、数年前に病気で亡くなっている。タリオは現在、鍛冶屋で職人のひとりとして、働いている。とある商人からの礼として貰った物によって、汚名を着せられ牢屋に入れられた親子。
【コロモス城内町の雨】基本的に枝葉で覆われてる為、雨が降っていても、関係無いのだが、3週間に1度の割合で、枝が動き葉を畳み、雨が降り注ぐ事がある。町で使う水は、その雨水をろ過して使っている為に、必要な『恵みの雨』とされている。
【赤服】コロモス国・暗躍部隊。現女王の私兵。コロモス国に害成す者への制裁や捕縛する部隊。動きは、ジルファードに近い。
【白い手紙】ルアから預かった特殊な素材で出来た紙。緊急時に使う為にと持っていたもののひとつ。
次回、犯人である商人に出会えるのか? 女王の真意は??・・




