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Ever Stride ~その先の未来は~  作者: KAMINO


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第21章 リーリエ

 コロモス城へ向かう途中で、アイラと口論どころか激昂する俺だったが‥。

王子やみんなのお陰で、落ち着きを取り戻せたように思う。


・・アイラとは、もう…会いたくない。


 俺は、王子の・・過去の話を聞いた日の事を…思い出していた‥‥。

 あれは・・フィエルテ国の地下道を通っている時まで、さかのぼる。


地下道で、いくつもの休憩所を経由して、休みながら進んでた。

 その、2度めくらいの休憩所で・・・。


 何故か、テラスのような場所があったけど‥テラスから見る先も土壁で、地面に草が生い茂っていた。しかも、上を見上げると町の排水溝のような金属製のフタが見えて、隙間から夜の景色が少し見える。


聞こえたらマズイと、あまり大きな声を出さないように・・寝た。



・・・・ハズだった。




「ぐぉおおぉぉぉおぉぉぉ・・・ぅぐっ・・ぐぅ~ぉぉぅぉおおぉぉ」


 ・・・オリクト だ。

  いびきが‥う る さ い 。


 こっちが、眠れない・・・。 あれ? 王子が‥居ない?


・・・ルアさんは、別の小部屋で寝てるから、ここには最初から、居ないんだけど・・・。王子は、どこへ?


 と、左へ視線を向けると・・テラスに人影が。

オリクトの盛大な鼾 を聞きながら、ベッドから降りる。


・・・。


 王子だ。 何してるんだ?


 テラスへのガラスは、ちゃんと入ってたけど‥埃で汚れてたせいで、良く見えない。そっと、近づいてみた。 まぁ、気になったせいも あるけど。

 オリクトの鼾のせいか、テラスの窓の扉を開ける音に気付いてないようだった王子に、いつ声をかけようかと‥思ってたら・・・


 王子の横顔に流れる涙を見て、びっくりしたっ!



・・いや、だって・・・・・王子…そんなに、感情強く出すタイプじゃないし。俺がびっくりしたせいで、オリクトの鼾が止んだ時に、テラスの扉を動かしたらしく、キイィィ と音が鳴った事で、王子が勢いよく振り向いた。


 やべっ・・・・いや、もう遅いか。

俺に気付き、反射的に 反対側を向いた。涙を気にしてる・・・。



 王子は何も言わずに、涙を拭って・・少し、気まずそうにして‥俺の顔を見る。その表情は・・・とても、哀しげに…見えた。


 「…王子、何か・・俺に出来ること、ありませんか?」

俺は考え無しに、言葉を発していた。


 ただ、王子のその顔を・・なんとかしたかったのかも知れない。

王子は、俺の言葉に目を見開き…驚いてる。



 そりゃまぁ、そうだよな・・・。脈略も無しに、いきなり・・だもんな。


 でも、俺は・・・。ヘラジの塔へ行くかどうかの‥あの時、王子の言葉と決断に・・・救 わ れ た んだ。


 だから、今度は 俺がっ って感覚しかなかったんだ。


王子が俺に、話せない事 かもしれない。言いたくない事 かもしれない。


 でも、王子の憂いも・・俺が、少しでも晴らしたい!

そう思った気持ちが 通じたのか‥‥。


王子「…聞いて‥くれるのか?」という言葉に、俺は 短い頷きで返す。


 両手で握りしめてるペンダントに、視線を向けた後・・・王子は、少しづつ・・話してくれた。


 俺は、聞いた話を『他言しない』と誓う。それが 礼儀 と思ったから。




王子「あれは・・俺がまだ、15歳の頃だった・・・」


 王子には、幼少時から‥婚約者が居たらしい。居たっていうか‥今も変わらず、同じ人が‥婚約者なんだって。


 年が明ける度、何かの行事の時などに、家族で交流していたそうだ。


 婚約者の女性の名前は、リーリエ と言い、金髪で長い髪・・お姫様って感じの姿で目が大きく、青い。かわいいと思う。ピンクと白のフリルが多く、金の刺繍が入ってる、高そうな服を着てる。


・・・これは、ペンダントの先にある、絵を見せてもらって知ったんだ。


ペンダント自体は、王妃様(王子にとっては母親)から、貰ったらしい。



王子「お忍びで‥街中まちなかを、案内していたんだ・・リーリエを連れて。もちろん、護衛騎士は…1人だが居た」


・・王子や姫様は 町中に居そうな、貴族の子供と同じような服装。護衛も普段着で‥周囲の警戒をしてたらしい。


 だけど、大勢で賑わう市場に来た時に‥ちょっとした騒動(どこかの子供が何か盗んだとかで、誰かに追いかけられてるみたいだったらしい。)が起きて、大勢が、王子たちの方向へ逃げて来た。それに巻き込まれる形で、姫様を見失ったんだって。


 王子も、護衛も慌てて探してたら・・町の奥の方へ 少女が大柄なな男に引きずられるように‥路地に入るのを王子が見つけて、護衛騎士と一緒に追いかけたんだ。


 路地に入ると大男・・まぁ、その当時はもう少し背が低かったから、実際にはそこまで大きくは無かったかも・・と、王子は言ってた。とにかく、狭い路地には、姫様の服を掴んでる大柄な男の他にも、2人居たらしい。


 ひとりが王子たちに気づいて、そいつには護衛騎士が対応して‥それを見て、もうひとりが王子に襲い掛かって来たけど、武器の無い戦い方も身につけてたから、それで攻撃をかわして、大男に顎から落下させ、その上に飛び乗ったそうだ。


 王子・・やるなぁ・・。



 俺は…ギルド長との組手で・・俺が顎付く事になってたけど・・。

・・はぁ・・いや、俺の話は・・いいか。うん。



 奥に居た大柄な男は、片手でナイフを姫に向けてたから、王子は 助けようと動こうとした矢先に‥王子の下に居た奴が、勢いよく立ち上がった反動で、斜め上に飛びあがった!


…好機と判断して大柄な男の真上に差し掛かった時、咄嗟に光の塊をぶつけるように‥基礎魔法を放ったんだって。


王子「・・それで‥大柄な男を倒し、姫を助けるつもりだったんだ。護衛がもう一人に対応してくれてたのは、見えていたからな・・」


‥だけど、予想外な事が起こったんだ。


男は戦い慣れてたのか、王子に油断してなかったのかは、分からないけど・・・。



 そいつは、あろうことか・・・ナイフを向けた手を下ろして、姫を掴んでた手を‥上へ放り投げるようにして‥‥姫を 盾 に し た んだ・・・・・。


初期魔法とはいえ、王族の魔法は威力が高くなる傾向にあった。



 だ か ら ・・・


王子は、話ながら・・また、涙が流れて・・・。




 あまり見せたくないんだろうな・・・。俺の方を‥向けなくなってた。




威力が高かったその魔法は、姫に・・・直撃した。


 ただ大柄な男は、逃げる間も無く、護衛騎士に倒されていたんだ。上に注目してたからってのもあったみたいだけど。


 王子はすぐ姫に、癒しの初期魔法『リリーフ』を使って、すぐ城へ戻って治療院で、高位の魔法を施してもらったんだけど・・・・。




「‥‥女性で、それは・・・キツイでしょうね・・・」

男なら、冒険者なら・・少しの傷なんて、なんてことない。


・・・だけど、その人は・・・儀式には 参加しない王族 の女性なんだ。




姫様 は・・・


 姫は、全身に大火傷おおやけどを負って・・・大部分は‥キレイに治ったのに・・・。掴まれてた腕の方だけ・・・縦に、大きな傷跡が残ってしまったんだそうだ。それは、どうにも癒せないものとして、今も残ってるらしい。


・・・・王子、声をこらえてる。王子のせい・・とは 言 え な い 。

 その男が、悪 い んじゃないか・・。


 王子は、助けたかったんだ。 かっこよく。



でも、それが・・・・・。そんな大事おおごとになるなんて・・・。

 この事件の後、王子は…婚約破棄になると思ってたらしい。儀式にも参加出来ない・・なんて話も、出てたらしい。


・・・だけど。



 姫が、目覚めた際・・ケガよりも先に・・「王子は、ご無事ですか?」と、聞いてた。と、王子も後で知ったんだそうだ。


王子「…リーリエは、本当に優しい女性ひとなんだ・・」

と、その人を思い出しながら話す時の表情が、本当に優しい顔で・・・。


俺は、王子も・・優しいですよ・・って、言いたくなった。



その後、婚約破棄の話に・・姫が断固拒否して・・・今に至るらしい。


「・・なんか、良かった‥ですね」俺の 言い難そうな何かを感じ取ったのか・・・ ふっ と笑って、王子は続ける。


王子「あぁ。リーリエが言うには『あなたは、悪くないのです。あの悪者が悪かったのですわ。王子は、私を助けて下さいましたもの』・・・だから・・その・・」と、照れたような顔をして・・言い難いようで。



  はい。言い難い所は・・・・愛の告白が あったそうです。



「でも・・お姫様が気にしなくて良いみたいに言ってるのに、王子は何 泣いてるんすか?・・」 俺は、無 神 経 だろうか?


 王子は、未だにあの時の事を思い出して、苦しくなるんだそうだ。鮮明な出来事は、どうしたって・・思い出したくなくても、思い出してしまうもんな・・・。



 守るつもりが、傷の残る大怪我を負わせてしまった瞬間を…何度も。




それに、俺が仲間になったキッカケの時に、大怪我した兄さんが居ただろ?


 ソールって人。


 その人が、もし・・・俺が行かなかったとして、もし・・亡くなってたら・・・王子は、どうなっていたんだろうか?


‥正直、想像するのも嫌だが・・。




 ちなみに王子と姫の事件の時に、護衛してたのは・・オリクトらしい。王子が15歳って事は、2年前・・・オリクトが、17歳の頃って事か。


王子「…そろそろ戻って眠った方が いいな・・」

 そうですね・・って、振り返ると‥いつの間にか起きてたらしい、オリクトと目が合う。ふたりして、何の話してたんすか?・・みたいに聞いてくる。


 王子が、ペンダントを見せると…オリクトは、すぐ気づいたみたいで、詳しく聞こうとせずに、すぐ自分の寝床へと戻った。





・・・まぁ、そういう事。


王子が今も悩んで、苦しんでいる事を、あんな風に言う事 自体間違ってる。

 ・・俺は、そう思う。


オリクトやルアさんだって、アイラの言動に怒りを堪えてたんだ。



 絶対、負けない。


最後の儀式が何だろうが構わない。・・その前に、この国での儀式なんだが。王子のためって言うと‥かっこつけ過ぎって、ルアさんに言われるけどさ・・


 俺は、聖竜・グラセリオのメンバーのひとりとして、この儀式の先まで・・王子が賢王けんおうになった、その日が来るまで・・共に行く。最後まで。



ルア「気合が入ってるみたいだけど、ユナム・・もう、行くわよ」

 声に振り向き、まずは謁見だ。儀式の説明って言ってたな・・。



 謁見の間へ行くのかと思ったが、どうやら会議室のような、大人数が座れる椅子が、ず ら っ と並べられてる部屋に。右側に、説明の為の大臣が座っていて、護衛の2人がその後ろに立つ形で居る。反対側に、王子が大臣の前に座り、俺たちは後ろに立つ。王子の真後ろは、オリクトだ。


大臣「おはようございます。レスカテ王子、よくお休みになれましたかな?」

王子「はい。ゆっくり、休めました。感謝致します」


 大臣は、持ってきた書類を広げ・・・話 始めた。


大臣「では、我が国の儀式の説明に入らせて頂きます。まず儀式の場所は、謁見の間から、女王の魔法で扉が開かれます。そこへ・・王子、おひとりで向かって頂きます」


 え?・・・・


 王子が怪訝な顔で「どういう事です?」と聞くと、どうやらコロモス国での儀式は、王子ひとりだけが受けるもの・・らしい。


・・・あの夢だと、全員で受けたみたいな流れだったから、俺らも て っ き り・・そうだと思ってた。ふいを突かれたように驚く。


ルア「アソオス王子・・。バーゼルドの方々も、同じように?」

 大臣は、顔を横に振り・・アソオス王子たちは、5人全員でクリアしてもらう内容だったようだ。


・・・という事は、他の国での儀式も、やった事が 違う って事か?


大臣「『儀式』というのは、大概そういうものでございますよ」


 どうやら どの王子が、どの証を受け取ってるかでも、内容が変わるらしい.

証の話と似てるなー・・って、ちょっと思った。


オリクト「王子が儀式なのは分かったが・・。俺らは、何してりゃあ 良いんだ?」 俺も、そこは気になる。

大臣は、軽く笑い・・「城内でお寛ぎ下さいませ」と言うだけで終わった。


・・・とりあえず、一旦・・・朝食の為に、部屋に戻った。

 朝食後、王子は身なりを整え…一緒に、謁見の間へ。


女王様に挨拶して、女王様が、どこからか出現させた、細長い棒のような杖を出し『レヴェラ・イン・エオ・オクルム・フトゥーリ‥』 唱える声が響く。


 すると、床から、植物の蔓が伸びて、成長しながら太い木や枝が、蔓や葉が巻き付き、1つのドアになった。


 ふぇ~・・すっげーー・・・


女王「どうぞ、森の導きがありますように」


 王子は、俺たちを振り返り、小さく頷き・・マントを翻してからドアを開き、真っ暗なその中へ入る際に「行って来る」と言い、俺たちも・・


 「信じてます!」

ルア「祝いの準備をして、お待ちしていますね!」

オリクト「待ってますぜ、王子!」


王子が笑った気がしたまま、暗い中へ入って行き・・ドアは閉められた。


大臣「…皆様、王子がお戻りになりましたら、お知らせ致しますから」


 俺たちは、大臣に「お願いします」と言い、一旦部屋に戻る。

オリクト「じゃあ、俺は2階へ行ってる」


 2階? 行って無いな・・・・


ルア「私も、後でいくわ」

・・・じゃあ、俺も行こうかな・・


こうして、俺たちは・・王子が戻るまで、暇を潰す事になった。

 王子が、どのくらいで戻るかも、儀式で何が起こるか・・らしく、一概には言えないらしい。


・・俺は、王子が必ず・・証を持って帰るって信じてる。ルアさんも、オリクトだって気持ちは同じだ。


 さてと、2階には・・何が、あるのかな?

【リーリエ】レスカテ王子の婚約者。左腕の内側に縦に長い、火傷の(あと)がある。とある事件でケガを負ったが、王子の事が昔から好きなので、婚約破棄を断固拒否して、今も花嫁修業に精を出してる。王子の儀式と旅の無事を祈り、毎夜 王子の事を思い出している。金髪ウエーブ・青の大きな瞳・華奢な体で肌も白い。王子の事を責めるような言葉や態度など、もってのほか!と思ってる。


【リリーフ】初級魔法・一人の体力やケガを少し回復する魔法。


【儀式に参加しない王族】主に女性に多い。17歳になる直前に 儀式への参加の為の『王となった時に、どう統治したいか』を現実的に考え王へと伝える事で 儀式に参加するか否かが、決められる。ただし、王位継承候補であっても、他所の王族に(とつ)ぐ姫や儀式参加不可を言い渡されたりすると、参加はしない。つまり、その時点で王位に就けない為、嫁or婿として婚約を決められる事が大半。そういう王族。


【癒せない傷跡】王族としての力の誤作動により、治癒魔法を拒絶してしまった場所は、魔法では治せなくなる。薬での治療は、時間がものすごくかかるらしい。


【レヴェラ・イン・エオ・オクルム・フトゥーリ】

(原文・Revela in eo oculum futuri. ※ラテン語)

”この者の中に、未来の眼を明らかにせよ”・・という意味。


次回、コロモス城探検と、束の間の休息(王子以外)・・

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