第11章 命名 ファルチェ・デリット
大きな音と共にドアは勢いよく開き、黒髪の少女は、ユナムを見つけると
「あんた、なんで居るのよ!?」と言い放った。
振り返る一同の中、ユナムは立ち上がり、幼馴染と再会したのだが・・・・・
「いや、何で・・ってそりゃ・・・」と、言い始めようかと思うよりも前に
「ハッ! さては・・・・」と言いながら ずん ずん 俺に向かって来る!
俺の目の前に来ると・・捲し立てるように・・
アイラ「言っとくけど、もうあんたが入って来れる余地なんて無いわよ!!残念だったわね!」
は? 何言ってるんだ? 唐突過ぎて、理解出来なかった・・
俺「何言ってんだよ、そういうんじゃなくて!」
アイラ「今は私の王子なの!!あんたは余分なのよ!!」と聞く耳を持たない。
・・・・相変わらず、王子が絡むと話 聞かないな・・ こいつ ・・
俺が説明しようにもキーキー高い音量で文句たらたら言ってて話が進まない!!
何度「聞けって!」と言っても、俺の悪口言い出す始末・・。
見かねたアソオス王子が
「アイラ・・恩人に対して失礼な言葉を使うのは、やめなさい」と強めな口調で言うと、すぐ口を閉じ王子の方へ振り返る。
アソオス王子は、やや怒ってるような表情で、他は呆気に取られていた。
アイラ「えっと・・・どういう事ですか?」
アソオス王子「先ほどまで戦ってた魔物は覚えているか?」
アイラ「はい。それで私 大怪我で戻って来たんですよね?聞きました」
アソオス「助けてくれた者の事は、覚えているのか?」
アイラは・・う~ん・・・と考えてたが・・・
アイラ「えっと・・王子では?」という言葉にやや呆れて首を横に振る。
仲間の名前を言う度に、首を横に振られ・・・・
アソオス「アイラを助けてくれたのは君の目の前に居る、ユナムくんだ」
その言葉に勢いよく振り返るアイラ。そして俺をマジマジと見る。
そして一言・・・・「ウソでしょ・・・?」と。
俺「はいはい。それはもうどうでもイイよ。たいした事無くて良かったな」
という、やや投げやりな言葉に『むっ』とされたが、これでアイラがどんな奴か、分かっただろうか?
子供の頃から、一緒に訓練してきた・・・まぁ・・”仲間”だった。
子供の頃、ギルド長からもらったらしく、アソオス王子の絵を持ってて。
1に王子の話、2に王子の話、3に訓練の話で、4からずっと王子の武勇伝話ばかりで、今やアソオス王子のメンバーなのに相変わらずなんだなと思った。
俺も同じ時に16歳になってたら、アイラと共に入りたかったが・・な。
まぁそれはもういいんだ。今は、レスカテ王子のメンバーになったから。
と、そんな事を思ってる内に、アイラは王子の横に移動してた。
そう思ったのも束の間、アイラが俺の方へ歩いてきた。
・・なんだ?
アイラは、なんとも形容しがたい顔で、笑顔でもなく・・無表情でもなく・・ひと言小さく「助けてくれて、ありがと」と言うと、王子の真横にまた移動。
改めてそれぞれ、席につく。
アソオス「レスカテ王子に、一時的な共闘を願い出たい」
アソオス王子のメンバーは驚く! アイラも・・すごいびっくりしてる。
レスカテ「それは、自分たちも同じ思いで来ました」
という言葉で、ひとり会話に遅れ気味なアイラに説明するように…
ベルク「ほら、あの魔物強かったから・・・」
アイラ「確かに強かったけど・・もう少しで倒せたかも・・・」
ヘルト「で、またお前がやられて王子が危険な目にあっても いい のか?」
ヘルトさんが窘める。
アイラは、素早い動きで敵を翻弄する事で、王子が戦いに集中しやすくなるって立ち回り方だから、アイラが攻撃されると王子とヘルトさんが前衛になる。こうなるとステッラさんは、出せないらしい。
大盾を持ってるとはいえ、オリクトと違って、守りと援護のベルクさんでは、戦い方も違う。
ステッラさんは、回復オンリーで、ルアさんみたいな攻撃魔法は、アソオス王子くらいしかまともに使えない…と言う。
確かに、アイラがまた大怪我したら、他のメンバーも危険だったし・・
それに、そもそも俺らは・・アソオス王子たちを助けて共闘する為に、ここまで来たんだ。
アソオス王子が言わなかったとしても、王子が言ってたはずだ。
アイラは文句をブツブツ言ってたようだったが、しぶしぶ共闘する事に同意してた。まぁアソオス王子が言えば、大抵言う事を聞くと思うけどな・・と思いつつ、やり取りを聞いてた。
作戦を決める時に『謎の魔物』だと、言い難いからと名前を付ける事にしたんだ・・・だけど、なかなかピンと来る名前にならない。
最終的に、王子2人とルアさん、ステッラさんの出した名前を組み合わせて
フ ァ ル チ ェ ・ デ リ ッ ト と呼ぶ事にした。
・・直後、さらに略され・・『鎌女』となった。
大きなカマを持つ、女性的な服装だったから・・女って事に。
いや、実際の所、女とか男とかは 分 か ら な い けどな・・・。
ともかく、それぞれ出来る戦法を王子2人とルアさんとベルクさんで話し合う中で、俺は拠点内を見学していた。
俺が、アソオス王子に「見学したい」と言うと、間髪入れずにアイラが「ダメ!」って言うよりも早く、王子から「構わない」と言われる。
アイラが むすっ とした顔で見られたが、俺は見学し始める。
ステッラさんが、案内をしてくれた。お陰で入ったらダメって所を開けることもなく、一通り見せてもらえた。
・・・俺たちの所は、王子だって個室無いのに・・・・
ここは、それぞれ個室の部屋があったんだ。キッチンなどの共同スペースは似たような感じだったのけど・・・・・・広い。
・・・・しかも、書庫まであった。これは長く拠点として利用してるからってのと、30階層踏破すると・・ギルドで拡張もしてくれるそうだ。
・・あとで王子に・・・いや、ココに長いする訳じゃないから、要らないかも・・・とか思ったりした。
アイラの部屋は想像に難くないので、遠慮した・・というかまぁ、後ろで文句言いながらついて来てて、自分の部屋に差し掛かった所でドアを塞ぐように立ったせいもあるけど。
俺「いや・・・いいよ。どうせキニゴスの町の時と同じだろ・・」
って言うと「何で分かるのよ?!」と、びっくりしてた。
王子を見る目とか、あの絵を見る時みたいな感じだったし・・変わってないんだと悟ったからな・・。
ベルクさんの部屋は、本や紙の束が目立っていた。
ヘルトさんの部屋は、斧がいろいろ置いてあった。変わったデザインの物は、使う・・というより 飾ってるだけ だったみたいだけど・・・。
さすがに、王子の部屋はやめておいた。
まぁ横でアイラがうるさいし何より後でステッラさんに聞いたが、アイラが王子の部屋に入ると出てこなくなるので極力王子が居る時のみ・・にしてるらしい。
全く・・アイラの奴、昔から ちっとも 変 っ て な い じゃないか・・・
話が終わった頃に・・アソオス王子の拠点から挨拶して出て、レスカテ王子の拠点へと戻って夕食。ルアさんが作ってくれる。
食事の最中、王子が明日早朝の行動や立ち回りなどを確認として話してくれる。
・早朝にアソオス王子たちと”40階層”で合流。
・41階層のボスを倒す
・42階層への魔法陣が出たら一緒に魔法陣で上がり、あの鎌女を倒す
王子「無事倒せたら、あとの処理をギルドに引き継いでもらい、俺たちは儀式の為に別大陸への港へ向かう」
鎌女は、野放しにするには危険過ぎるから、今回 倒すって事になった。
そしたら、アソオス王子たちとは別れて、元々の目的の場所へ向かえる。
・・・そういや、今日の事は夢に出なかったな・・と、ちょっと気になった。
だけどそれは、もう行くと決めてたから『夢には出なかった』だけなんじゃないかってルアさんは、洗い物の手伝いしてる時に話してくれた。
「そういや・・ユナム・・」とオリクトが何か聞きたげに声をかけてきた。
オリクト「あのアイラって子・・・ユナムの幼馴染なんだよな?」
「うん。そうだけど・・?」
オリクト「俺ぁてっきり、感動の再会 になるのかと思ってたのによ・・」
あぁ・・うん・・・
ルア「いきなりケンカが始まるとは思わなかったわよ・・」
まぁ・・はい・・・・。
みんなが言いたいのは、こ う い う 事 だろ?
アイラは、俺の想い人・・とか、そう言いたいんだろうけど、違う。
確かに、子供の頃はアイラの事が好きだったけど、アソオス王子の旅に同行したいってアイラが言ったから、俺も!ってなっただけで・・・。
その後すぐ、アイラは、王子の絵をもらってて・・そんで、あいつは王子にぞっこんになってて・・俺は・・・・・・
何かにつけ、”王子と違う”と言われ続けてきたんだ。
途中から、あまりの『王子好きスキ』言ってるアイラに、冷やかな目になって呆れてたくらいで、もうそういう感情をアイラに 持 っ て な い んだよ。
俺は、今は・・レスカテ王子の仲間なんだ。その誇りもある。
だから、アソオス王子のグループへの未練も嫉妬も無いんだ。
・・あんな、リアルで衝撃的な夢を見たから気になっただけで・・・
そこまで説明すると「なんだか納得・・」とルアさんに言われる。
オリクトも王子も、何か言いたげだったが・・言わずに就寝となった。
翌日。
今日も今日とて、ルアさんに起こされる。
朝食後、支度して・・魔法陣の方へ歩いて行く。
「すみませんっ!」と、ギルドの人に声をかけられる。
王子「何か?」
「聖竜の皆様、えっと、昨日の夜に申告のあったレアな魔物 ファルチェ・デリットが41階層のフロアボスを倒し、居座っていると報告を受けています!行く際は、十分お気をつけ下さい!」
42階層じゃなく、41階層のボス倒して居座ってる?!
・・・何なんだ・・あの魔物??
ルア「そんな事までするの?あの魔物・・どういう事なのかしら?」
オリクト「今日倒せれば・・何か分かるかもな」
ルア「そうね。ともかくアソオス王子と合流しましょう」
王子「先に着いてるようなら、今の情報を渡そう」
魔法陣で、一気に40階層へ
・・・・・しーーーーん・・・あれ?
どうやら、まだ来てなかった。
炎竜が来るまでにと、連携と作戦の確認をしてる間に来た。
・・どうやら、アイラとヘルトさんが寝坊したらしい・・・・・。
朝、起きられないのも相変わらずだったんだな・・・と思って見てると、アイラと目が合う。
俺に気付くと・・むっとして横にぷぃっと顔をそむける。
・・・なんなんだよ・・朝から・・・・。
王子から、炎竜たちにギルドからの報告を伝える。
魔法陣に乗れば、唐突に襲われる心配もあるけど、階層を移動すると・・それまで付いてた補助魔法は リセットされる から、魔法陣で上がった直後に個人がそれぞれ使う事で時間短縮として行動開始とするって直前に決まる。
魔法陣に乗る際、アイラが俺に「足引っ張らないでよね」と言うから
「アイラこそ、またドジ踏んでやられるなよ」って言い返した。
さぁ、あの謎の魔物の正体を暴く為に、41階層での戦いが始まる!!
*主人公・ユナムと幼馴染・アイラの関係=仲間だった・・という意識。もう別のグループで、お互いをライバルという感覚しか残ってない。
*アイラ自身は、王子に”ぞっこん”(今で言う所の『ガチ恋』>『推し』みたいな感覚)なので、ユナムは眼中に無い。喧嘩腰になった理由は、王子の危機にかけつけて炎竜に加入しようと勘違いしたせい。
ちなみに、アイラの部屋には絵を描くのが得意な友人に大きな布にアソオス王子の絵を書き写してもらったものを壁に付けていたり、母親に習って王子の人形を作って飾ってたりと・・旅立つその日までで、かなりの数になっていた(ユナム談)。現在も、かなりの数の王子様人形がある。道中で子供にあげたりもしたらしい。
【謎の魔物】大鎌を持ち、闇魔法を放つ強敵。
その姿から略称・鎌女と呼ばれる事になる。
【ファルチェ・デリット】
(ファルチェ=イタリア語・カマ/デリット=イタリア語・罪)
女性のような服装(黒や紫)で宙に浮いた状態。炎竜からの申告によりギルドの図鑑に掲載された。
現在・ヘラジの塔41階層のフロアボスを倒し、その場に留まってるという報告有。
【ヘラジの塔の魔法陣】1階層以降は13階層ごとに休憩場所がある。
魔法陣での移動では、それまで付いてた補助や保護魔法は消えてしまう。
装備品に付与されてる場合は問題無い。
次回・・謎の魔物*ファルチェ・デリットの正体が・・・・?!
そして王子たちは、儀式の旅へ戻れるのか?!




