霧生を倒す!
同情は、一銭にもならない。
そして、壱に彼女の気持ちがわかるわけない。
「ありがとうございます」
だから壱は礼を言って、逃げることにした。
今の自分ができることは、それしかない。
彼女の好意を無駄にしないためにも、一刻も早くここから脱出するのだ。
壱が漸く光の差す場所へと出ると、見計らったかのように、霧生が待っていた。
「そうはいかないわよ」
「……!」
壱の目の前に、巨体が現れる。
背の高い自分を覆うほどの、とてつもない図体の女。
鐘山はかなり憤慨している。
霧生を呼んできたわけではないみたいだ。
「霧生……! 何で!」
霧生は暗黒な笑みを浮かべて、凄んだ。
「あなたが裏切ることはわかっていたのよ。でもね、わたしは優しいから、あなたを使ってあげたの。感謝なさい、鐘山。この子にお灸を据えたあとは、家を燃やしてきてあげるわ。あなたの大好きな、家族も一緒に灰になればいいのよ」
万力のような強い力で掴まれた。
壱は痛みに片目を瞑る。
「でもあの鉄格子を自力で抜けられるなんて、考えてもいなかったわ。あなた、どんな力を持っているの? ますます興味が湧いたわ」
「お前なんかに教えるわけないだろ」
背伸びをした壱は、霧生の目に向かって唾を飛ばして、足払いをかけた。
手を離した隙に、壱はバックステップして避ける。
二mほど後ろに下がって、
「ああっ!! 目が! 何てことをするんだ、この子は!! ぶああっ!」
男みたいな野太い声で、霧生は叫ぶ。
どしんと前に倒れて、霧生は情けない声を上げた。
咄嗟のことに対処しきれず、本性が出てしまったようだ。
隠し通せなかった男臭さ。
壱は意地の悪い笑みを浮かべて見下ろした。
「ああ、そっか。お前、実は……女性じゃないんだな」
霧生の眼前まで屈んでアッパー。
顎を殴って、失神させる。
「く……、このや、ろう……」
本格的に男だと知るや否や、壱は身震いした。
「だとしたら、凄く気持ち悪いことされた……。暫くケバい女の人との接触は無理かも……」
地下牢から出てきた鐘山が、青ざめながら呟く。




