思わぬ助け
「そんなことはないと思うけれどね」
「ですよね……。部屋を手当たり次第見てみますか?」
「何部屋あるのよ。三十くらいはあるわよ。しかも全部鍵がかかってて、開けられそうにないわ」
「オレも何か、スキルとか持ってたらよかったのになー」
「こんなことになるなら、鍵開け職人を連れてくればよかったわね」
美枝が嘆息する。
つられて、テルもため息をつきそうになった。
「美枝さん、鍵を開ける方法を考えといてくれますか? オレ、ちょっくら走ってきます」
「わかったわ」
ドアを壊せるものを探しにいく。
チェーンソーでも、のこぎりでも、包丁でも、何でもいい。
あの鉄のドアに風穴を開けられるものを、見つけるのだ。
ドアの前で倒れていた壱の身体に、ドアが当たった。
ゆっくりと開けられたので、痣ができるほどではなかったが、眠気が吹っ飛ぶくらいには痛かった。
壱が目を向けると、見たことがない人が立っていた。
「……霧生……じゃない」
美しい容姿をした女性は、申し訳なさそうな顔をしている。
「……私は、霧生に頼まれて宝石店で働いていた鐘山です」
思い当たる人物がいなかったので、壱は適当に言った。
「……春日井さんの相手をしていた人? 中学の制服着た可愛い女の子の」
「そうです。でも、貴方をこんな目に遭わせるとは聞いていなくて……ごめんなさい。私も、事が終われば出頭します。だから、今のうちに逃げて」
急かすように言われ、壱は気が動転する。
話が僅少に読めていない。
「そんな、そしたら……あなたはどうなるんですか」
「私のことは大丈夫。私は……あいつに弱みを握られているのです。家もばれているし、仕事先もあいつにばれてしまって……従うしかなかったから、犯罪の片棒なんか担いで……。私が馬鹿だから、こんなことになってしまったのです。だから、私のことは気にしないで、貴方は逃げてください」
「……」
壱は、気の毒に思った。
でも、そんな感情を持たれて、この人はどう思うだろうか。




