いざ敵地へ!
「いえ、違います。友達です!」
『あら、そう……。壱も不憫な子ね……』
美枝の嘆きに、テルは微苦笑した。
壱の母親を伴ってテルたちは、壱の奪還に霧生邸へと向かう。
霧生邸は、壱の家から一㎞ほど先に座す。
裏路地にあって、人里離れた場所で鬱蒼としている。
如何にも悪人が住んでいそうな、居心地の悪いところ。
門に蔦も生えていて、手入れがなされていないのが窺える。
霧生と書かれた表札は、消えかかっている。
稀に見る豪邸なのに、外見が褒められたものではなくて、もったいない。
勝手に入ると、こちらが不法侵入の罪を被ることになる。
だが、美枝は意気揚々と先をいく。
テルとあやのよりも先へ先へと。
「ここが、誘拐犯のアジトね。テルくん、あやのちゃん、突入するわよ」
「……アジト……。っていうか、依頼人の彼女が探してた人間の家ですね」
「まさか、団子山くんが誘拐されてこの家にくることになるとは、思っていなかったので……」
「オレたちは、団子パーティに潜入するつもりだったんですけどね。大きく予定が狂ったな。これは壱のやつ、ショックだろうなー」
「壱は詰めが甘いところがあるからね。人の怖さを、あの子は知らないのよ。母がこの世で一番怖い生き物だと思っているから」
「団子山くんに、弱点なんてないと思ってました」
「そんなことないわよ? 弱点を見せたがらないだけなんじゃない?」
「えー、そうですかねー? あいつ、弱点だらけだと思いますけどねー」
「そういうところが、いいところなんですね。団子山くんの、そういうところが好きです」
あやのはふふっとお淑やかに笑う。
美枝も目を細めて笑った。
壱とよく似ている。
「ありがとう。あの子のために、こうして助けにきてくれる友達がいるもの。あの子はいい友達に出会えたものだわ。ありがとう、テルくん、あやのちゃん。これからも、私の馬鹿な息子を、よろしく頼むわね」
「「はい」」
そして、美枝は重い門を押す。
不法侵入で訴えられようと構わない。




