壱の母に助けを求む
テルたちは宝石店に向かった。
嫌な予感は的中し、壱の姿は見当たらなかった。
壱が誘拐された。
でも、証拠がなければ警察は出動してくれないだろう。
どんなに大事な人物でも、確固たる証拠もなしに、警察が動くわけがない。
警察に連絡しても、取り合ってくれない。
だって、誤情報を垂れ流す悪い輩がいるから。
たいしたことのないことで、救急車を出動させる悪い人間もいるのだ。
人を救う職業だから、いちいち構っていられないときだってある。
どうすれば、壱を助けられるだろう。
壱の親に連絡すればいいだろうか。
あやのは心配しすぎて泣いているし、テルだって悩みすぎて泣きたい気分だ。
「団子山くん……私のせいです……。ごめんなさい、団子山くん」
「あやのちゃんのせいじゃないって。そんなに気に病むなよ」
思い当たったところから当たっていこう。
テルは壱の親に電話をかける。
コール音が鳴ってから、相手が電話を取った音がする。
「もしもし、壱のおふくろさんですか?」
『にーに?』
「あ、二子ちゃんか。ごめん、壱のおふくろさんに代わってくれるか?」
『はーい』
二子の元気な声は、緊張しているテルの心を穏やかにさせた。
ドタドタと走っていく音がしてから、壱の母親が電話に出た。
『テルくん? どうしたの、何かあったの?』
「あ、美枝さん。それが……壱が、霧生って人に誘拐されてしまったみたいで」
『誘拐!? 狂言誘拐とかじゃないわよね? こないだ団子抜きにしたから私の愛を試そうだなんてよからぬこと考えてるんじゃないわよね?』
「え、そうなんですか。団子抜きにしたんですか」
『それは今どうでもいいのよ! それで、その話は本当なの、テルくん?』
団子の話を振ってきたのは、美枝なのだが。
テルは苦笑して、話を戻す。
「それが本当なんです。壱が誘拐されたことはわかってるんですけど、証拠がないので警察に連絡しても捜査してくれないと思って、連絡していません」
美枝は沈黙する。
そして、重々しい口を開いた。
『わかったわ。警察が役に立たないのなら、私がいくわ。母は世界で一番強い生き物なのよ』
「え……美枝さんが?」
『壱に武術を習わせたのが、誰だと思っているのかしら?』
「おお、こわ……」
「団子山くんのお母さん、団子山くんを助けにいってくれるんですか?」
いつの間にか復活していたあやのが、会話に入ってくる。
『あら、だあれ? 壱の彼女?』




