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団子食べたい  作者: 社容尊悟
3本目

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52/65

初めて感じた恐怖

 壱は霧生を睨みつけて、聞き取れないとわかっていながら罵倒した。

「んんん! んん……んん!!」

「何を言っているのか、わからないわね」

 霧生は冷ややかな目をしてから、蝋燭を壱に近づけた。

 そのとき、檻がはっきりと見えた。

 壱は首を振り、怯える。

 壱の様子に満足したのか、霧生は蝋燭を持って、背を向けた。


「あなた、自分がどんな立場か、わかっているの? あなたをどうするかは、わたしの気分次第。ここで殺したって、拷問したっていいのよ。わかったら、人質らしく大人しくしていなさい」

 コツコツと靴音が遠くなっていき、扉が閉まる音がした。

 壱は荒い息を吐いて、脈打つ心臓を落ち着けるために自己暗示をかけた。

 自分は殺されない、自分は拷問もされない、きっと誰かが助けにきてくれる、みんなを信じて待っていればいい、犯人を刺激するな、大人しくしていろと。

 動悸が収まると、壱は泣きそうな顔をした。

(……怖、かった)


 今までこんな目に遭ったことがなかったので、取り乱してしまった。

 犯罪に巻き込まれてきたテルも、こんな思いを何度も経験してきたのだろうか。

 霧生はあれで、本当に壱を傷つける覚悟は持っていない。

 そうとわかっていながらも、壱は恐れを抱いた。

 今まで感じたことのない、言い知れない恐怖をその身に味わった。

(あんな……あんな……)

 暫く、火を見るのが怖くなりそうだ。

 あんな小さな火ですら、人の身体は簡単に焼け爛れる。

 人はどんなにも脆く、どんなにも小さい生き物なのか。

 泣いたら、ダメだ。

 泣いたりしたら、嗜虐的な思考にさせてしまう。

 いや、泣かなくても……生意気な餓鬼だったら、火に油を注ぐことになるだろうか。

 ここは、泥水を啜ってでも、自分を捨てるしかないのか。

 媚びを、売るしか……ないのか。

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