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団子食べたい  作者: 社容尊悟
3本目

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55/65

母の息子への思いは∞(無限大)

 相手は、自分の息子を攫った大馬鹿な犯罪者だから、負けるはずがない。

 先に手を出したのは、あちらだ。

 こちらに非はない。

 美枝は息を吸い込んで、母親の怒りを、声を大にして叫んだ。

「私の息子を攫ったうつけ者、出てきなさい!! 出てこないと、母の鉄槌、食らわすわよ!!」

 中にまで響くとは思わない。

 でも、叫べば、壱には届くかもしれない。

 この母の愛が、壱に届いていれば、何も言うことはない。

 美枝は振り返って、二人の様子を確認する。


「さ、ちょっとすっきりしたし、先を急ぎましょ」

 テルとあやのが、目を瞑って耳を押さえていた。

「み、美枝さん、声が大きい……」

「うう、耳が痛いです……」

「あ、ごめんね。言うのを忘れていたわ」

 すっかり失念していた。

 自らの声がばかでかいことを。

 門の中へ足を踏み込んでみたが、何かが作動した気配もない。

 からくり屋敷みたいに不気味なのに、何の仕掛けもなかった。

 ちょっと拍子抜けした。

 いや、鉄砲や大砲が飛んできたら命がいくつあっても足りないので、何もないに越したことはないのだが。

 鉄製の床を三人は慎重に進んでいく。

 万が一、分断されるようなことがあったらこどもたち二人は危険だ。

 大人である自分が、二人を守ってやらなきゃいけない。

 長い床を歩き、遂に目的の屋敷に辿り着いた。


 とんでもない迫力だ。

 鬱々した雰囲気に、呑み込まれそうになる。

 大きいだけでは表現しきれない。

 厳かで、気味が悪くて、呪われそうな屋敷だ。

 全体が真っ黒で、薄暗い明かりのついたランタンがドアの上部左右についている。

 錆びついたドアノブには、蜘蛛の巣が張っていて触るのを躊躇させられる。

(私は蜘蛛の巣が一番嫌いなのに……)

 でも、ここに息子がいると知って、立ち入れない母親は母親じゃない。

 美枝は意を決して、ドアノブを捻る。

 鍵がかかっていた。当然と言えば当然だ。

 テルが美枝を見て、声をかけた。

「やっぱり鍵、かかってますね」

「団子山くんは、ピッキングとかも得意なんですか?」

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