遂に接触
数日後。
テルに言われて病院にいって脳のCTを撮ったが、何ともなかった。
団子パーティが開かれるのは、今週の土曜だ。
場所は壱の家からそう遠くない場所にある。
あやのの読み通り、オーナーはかなりの悪人で、闇オークションに手を出している。
流通ルートも押さえて、証拠を全部揃えてから壱は警察に告げるつもりだ。
少々危険だが、壱は他人に変装して、オーナーと直に接触を図る。
今日の壱は、長髪だ。
服はテルとあやのに選んでもらったおしゃれなブランドものの服だ。
あやのがいっていた宝石店に、目当ての人物は現れた。
全身に高そうな宝石を身に着けた、ふくよかな女性だ。
相撲取りと間違えられるくらい、中々にいい体格をしている。
「あの、霧生さんですよね?」
「そうですけど、それが何か?」
霧生と呼ばれた女性は、厚化粧に彩られた顔を向けてくる。
ケバいと言ってしまいそうだ。
壱は冷や汗を流しつつ、笑顔を作って話を続ける。
「ホームページ拝見しました。僕も刀が好きなんです。とても面白くて、もっと知りたいと思いました。あなたに興味があります。面白そうなパーティも開くみたいですし、どんな方なのだろうと思っていて、お会いしてみたら……こんな素敵な女性だったなんて。僕はたった今、あなたに一目惚れしてしまいました。どうして、あなたに早く会えなかったんだろうって……後悔しています。あの、よければ僕も参加したいんですけど、ダメですか?」
上目遣いで、壱は精一杯の世辞を並べた。
気持ち悪いくらいに、瞳を潤ませて。
こういう人はべた褒めされると弱い。
ホームページを作っていて、パーティも開くような社交的な女性は、人から認められたい欲求が非常にある。
だから、熱意の篭った言葉を、簡単に信じるのだ。
何の疑いもなく、相手は自分を好きなのだと勘違いしてしまう。
相手の顔の見えるリアルの場なら、尚更騙されやすい。
霧生は頬を染めて、キュンとしている。
「あら可愛い。何てイケてるお顔かしら。わたしのコレクションに加えたいくらいだわ」
厚化粧に彩られた顔が迫ってくる。
そして、顎に手を添えられ、上げられる。
壱はうわっと心中で叫びつつも、苦笑いを浮かべた。
「ご、ご冗談を……」