アイデンティティぶち壊しの刑
『今日は、団子抜きだから』
「殺す気か! せっかく産んだ息子を、殺す気なのか!」
『団子一日食べないくらいで、死んだりしないわよ。人間、そんなヤワじゃないもの』
壱は地面に平伏した。
最悪の事態が起きてしまった。
「何だこの親……。人でなしにもほどがある……。俺に団子食わせないなんて、嘘だろ……」
『うふふ、壱は愉快な子に育ってくれて嬉しいわ。私、壱をママ友に自慢するのが楽しくてたまらないのよね。成績優秀、スポーツ万能、容姿端麗。最高の息子に育ってくれたわ』
「……」
学校の教師にだけではない。
実の母にもプレッシャーをかけられる。
しかも母親に至ってはこうだ。
品行方正で、性格も良好な優等生を演じ続けてくれと。
壱から団子を取ったら、何が残るというのだろう。
『でも、この団子中毒、団子マニアから脱却してくれないと、完璧像が壊れちゃうのよね。そこに近所のママ友さんは、いないかしら?』
壱は周りを見渡す。
見覚えのある人に、目が留まる。
壱は汗を大量に流して、言った。
「……えーっと、あの……エコバッグを持ったふさふさの髪の毛の人がいる、かな?」
この説明だと、誰かはわからないはず。
だが、母親には隠し通せない。
重低音を発される。
『団子抜きね』
「ああああああああああああああ!! いやああああああああああ!!」
鼓膜を突き破るほどの絶叫。
壱の甲高い叫び声が、近所を震わせた。




