驚愕の真実
「キッスの一つでもあげたいくらいだけど、ここじゃあ人の目についてしまうわね。こんなところで告白するあなたも悪いのだけど。あなた、お名前は?」
(いらねえ……!)
「市川端午です」
「そう。タンゴちゃんて言うのね。だから団子パーティに興味を持ったのかしら」
「そうですね。でも、僕はあなたに会いたくて……」
壱は市川端午という架空の人物を演じ続ける。
霧生を好きな人物のように振る舞う。
霧生は気持ちよさそうに、頬を紅潮させて抱きつかんばかりに、じりじりと距離を詰めてくる。
壱は反射的に後ろへ、後ろへと下がっていく。
「まあ、何と可愛らしい仔猫ちゃん」
「……いえ、僕は仔猫などでは……」
これが店内で繰り広げられているのだから、店員はたまったものではないだろう。
店員の苛々した雰囲気を肌で感じ、壱は霧生に言った。
「あの、外へ出ませんか?」
「そうね。じゃあ、外で待っていてちょうだい、タンゴちゃん」
宝石店の店員と話をしてから、霧生は出てくるみたいだった。
壱は外に出て、暫く待っている。
壱は携帯電話を持っていないので、テルたちと連絡を取ることはできないが、うまくいけば団子パーティにいく話をつけられる。
(何もなければ、いいんだけど……)
今まで大きな事件を任されたことがなかったので、携帯電話は必要ないと思っていたが、次からは携帯電話を持っていたほうがよさそうだ。
壱が退屈そうに待っていると、笑顔の霧生がどすどすとやってくる。
壱は元気のいい声で、待ちくたびれたとばかりに呼びかける。
「霧生さん!」
次の瞬間、霧生の口元が醜く歪んだ。
犯罪者みたいな真っ黒な笑みを浮かべ、壱の本名を口にする。
「お待たせしたわね、団子山壱ちゃん」
「えっ……?」
壱は驚愕する。
「よくも嗅ぎつけてくれたわね。たっぷりおしおきしてあげるわね。可愛い可愛い壱ちゃん」




