どす黒い感情を払いのけようとするテル
両親がいなくなればいいのにと思ったこともあった。
それを壱に相談したら、『そんなこと考えるなよ』とか言われそうで、勝手に想像して腹を立てていた。
でも、先日の件で、壱がどう答えるのか、わからなくなってきた。
もしかしたら、親身になって、オレを救ってくれるのかもしれないと。
依存しているのは、オレのほうだ。
綺麗すぎる壱を嫌っておきながら、裕福で幸せな家庭で暮らしている壱を嫌っておきながら、そんな都合のいいことを考える。
こんな自分も嫌いだ。
一人っ子のテルは、兄妹というものがどういうものなのか、わからない。
壱が楽しそうに話すから、きっと楽しいものなのだろう。
でも、テルの扱いは、変わらなかった気がする。
長男だから、いずれは家を継ぐ大事な息子だから、厳しく育てられるのだろう。
女の子は甘やかされて育って、羨ましいなとテルは思った。
あやのみたいな子は、親に罵られたことも、ぶたれたこともないのだろう。
箱庭で育った、お嬢様なのだろう。
壱といると、劣等感を刺激される。
あやのといると、自分の処遇を怨まされる。
誰といても、自分は満たされない。
なのに、誰かと一緒にいなければ生きていけない。
中学生なのに、こんな汚い感情しか持っていない自分を、壱たちはどう思っているだろう。
言葉では綺麗事ばかりを言っていても、壱も本当はどす黒い性格をしているだろうか。
あやのも、実は性格の悪い成金のお嬢様なのだろうか。
テルは首を振って、頭を抱える。
(……ダメだダメだ。友達を悪く言うな……壱は違う……あいつは、そんなやつじゃない……)
次第に暗くなっていく感情を、テルは必死に制御する。
(あやのちゃんだって、いい子なんだ。オレなんかとは違う)
一人になると、こういうことばかり考えてしまう。
自分はどうしてこんなにも心が乱されるのだろう。
オーナーのことを検索して調べるだけなのに、それだけのことが手につかない。
テルはため息をついて、ぐったりと机に頭を預けた。
「……」
テルはふと、思い出す。
今日の体育での出来事を。
不安そうな顔で、テルは呟く。
「壱のやつ……病院いかなくて、大丈夫かな……」




