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団子食べたい  作者: 社容尊悟
2本目
34/65

わからないところが、わからない

「一応訊くが……わからないところは、あるか?」

「……わからないところが、わかりません」

 壱は真顔で答えた。

「……そうか……」

 教師は返答に迷った顔をしている。

 わからないのか、わかるのか、どっちなのかと。

 壱の言い方が悪かったものの、壱の言っていたことは間違いじゃなかった。

「俺が言ったら、何でも自慢になるんですけど。本当に、わからないところはないんです」

 教師は意味深長な表情をしてから、チョークを握る手を下ろした。


「訊いてもいいか?」

「はい?」

「何故お前はこんなところにいる?」

「……?」

 壱は質問の意図が読めず、首を傾げた。

 教師は肩を竦めてみせて、ため息をつく。

「日本の高等教育が世界水準でも大きく下回っていることは、お前なら知っているはず。……聞けば、お前は英語もできるそうじゃないか。中学英語やらそういうレベルのものじゃないとも聞いたぞ。本格的な英会話ができるって。なら……何故こんなところにいる? 何故海外にいかない? 海外にいけば……お前の能力をふんだんに使えるかもしれないんだぞ」


 教師が日本の学校を批判しているように聞こえた。

 教師なのに、だ。

 壱のことを思って、助言してくれているのだろう。

 壱は口を挟まずに、最後まで聞き届けた。

「お前の本当の力がわかるのは、世界しかないんだ。こんな狭い世界にいたら、お前はいつか潰されてしまう。せっかくいいものを持っているのに、みすみす無駄にしてしまうんだ」

「……そうですかね?」

「何?」

 壱がほんの少し声を高くして問い返すと、教師はちょっとだけ機嫌を損ねた。

「俺が持っているものが、世界に通用するとは思えないんです」

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