壱、初めての補習
「ちょっ!? 言われちゃ嫌なことは人に言うなって、言われなかったのか?」
「冗談と本気の違いもわかんねえのか! 頭かてーな、壱さんは!」
「冗談でも言いたくないっていうか……さっきから俺のこと貶しすぎ」
「隙あらば壱を貶す。オレの役割だな」
「お前は俺の助手だよな……? もしかして、探偵狙ってる?」
「狙ってねーよ」
テルと仲直りできて、壱は安堵の息をつく。
放課後には生まれて初めての補習が待っているが、何ということはない。
壱が寝ている間にテルはあやのと話をつけていたらしく、テルとあやのは、壱の補習が終わるまで待っていてくれるみたいだ。
終わったら、これからの計画を練っていく。
あやのは、そのオーナーの性格、特徴、住居などの個人情報を調べて人相書きを作成する。
壱とテルはインターネットで片っ端から検索をかけていく。
この方法でひとまずやってみる。
オーナーのことがわかれば、オーナーと接触を図る。
そのとき、壱はあやのの知り合いであることは知られちゃいけない。
オーナーと友人になれればいいが、なれなかったら友人になりすますしかない。
色々な手段はある。
あやのがどれだけ情報を掴んできてくれるかが、鍵だ。
補習室に一人向かった壱。ドアを開けてみれば、物理の教師が教室で本を読みながら待機していた。
壱の気配を感じ取ると、顔を上げて笑い、本を閉じた。
「きたか、団子山」
「はい。お待たせして、すみません」
「お前は今時珍しい生徒だと前々から思っていた。感心感心」
壱が約束を守ることがわかっていたかのような口ぶりだ。
壱は教師の目の前の席に座った。
一番前の真ん中の席だ。
黒板が見えやすい位置。
教師は席を立って、チョークを持つ。
「お前のことだから、補習なんかしなくても授業にはついていけるだろうが……体裁上、仕方なくそういう扱いにしないとな。贔屓だなどと、生徒の親に文句を言われちゃ敵わん」
(時間を潰すわけだし……困るのは教師のほうだと思うな)




