中坊にあるまじき聖人君子なんて
「よくわかってるじゃないかよー。オレがあやのちゃんのこと好きだって言ったら、おまえ絶対オレとあやのちゃんを二人っきりにしようとか考えるだろうし、邪魔しちゃいけないとか余計なこと考えて悩むんだろー? 何で大親友に気ぃ遣っちゃうわけ? オレとおまえって、ふつーの友達かよ。何年も友達やってんのに、邪魔とか思ったりするかってんだ。ボケ」
声は高いが、明らかに怒っている。
テルの怒り方は、壱には辛い。
「おまえのことは、初めて会ったときからいけ好かないやつだって思ってたし、今でも嫌いな部類だけどな、おまえとはずっと大親友やっていたんだよ。だから、オレに好きなやつができようと、おまえに好きなやつができようと……大親友なのは変わんねーんだよ。絶交なんか、したくてもさせてやんねーからな壱!」
テルの体重がなくなった。
壱は顔を上げて、感激する。
「……テル……」
「わかったか、この大馬鹿野郎!」
と言ったテルに思いっ切り腹を殴られ、壱は腹を押さえて蹲る。
「お、おう……」
テルはすっきりした顔をしている。
「日頃の恨みだ! どやっ! 羨ましくて憎たらしい壱さんも、たまには痛い目に遭わないとなー。やってらんねえよ、このモテ男が。しねしね」
壱はムカッとして、立ち上がってテルの胸倉を掴んだ。
「おい……死ねはないだろ、死ねは」
「オレにしねって言われても、本気だと思わないだろ?」
「それはまあ……他のやつよりは、本気と思わないけど……」
「オレにも言ってみろよ!」
テルは自信げに、胸を叩いた。
壱は呆気に取られる。
「………………え…………」
「え。何その間は」
テルが真顔かつ地声で言った。
冗談の通じないやつだと思われただろうか。
「何でそんなこと言わなきゃいけないんだよ」
壱が本気で怒っている様子に、テルは戦慄が走ったような表情をした。
「冗談だろ? どこまでいい子ちゃんやりゃあ、気がすむんだ壱さん!! 気持ちわりぃ、何その聖人君子的発想! ありえねー! そりゃ嫌われるわー! 中坊にあるまじきいい子ちゃんとかありえねー! しねえー! 滅びろ壱さんー!! ふぁーーっく!!」




