ぐっすり眠っていた壱
壱は一人が好きじゃないみたいだ。
弱い自分を必死に隠そうとする、へたれた性格をテルは知っている。
目を細めて、テルは壱に向かって言った。
「完璧じゃないからこそ……壱の人柄に惹かれるんだよなあ」
それは、ここにいる全員にも言えること。
自分のことを話されていたのを壱は知らずに、本当にぐっすり眠っていた。
壱が目を覚ましたのは、午後の授業が終わる少し前のことだ。
よだれを拭いて、壱は飛び起きた。
いきなり身体を動かしたので、クラッと目が回る。
寝すぎてしまったと頭を抱えて、頭を振る。
壱は本気で悩んだ。
「うわ……どうしよ。まじでサボりになってるし……! こんなに寝るつもりじゃなかったのに……。余計嫌われる……。うわあ、どうしよ、団子食べたい団子団子団子」
壱は壊れたように団子を連呼する。
気持ちを落ち着けるには、やはり団子だ。
「よし。団子パワーが注入された」
気を取り直して、壱はベッドから下りて教室へ走っていった。
教室の前まできて、壱は気まずそうにドアを開けるのを躊躇う。
授業の途中から教室に入るのは、入りにくくて壱は好きじゃない。
注目を浴びる上に、睥睨されるのでちょっと畏縮してしまう。
壱は小心者だった。
みんなにどう思われているかとか、必要以上に考えてしまうのだ。
人が好きだからなのか、人と喋ることが多いからなのか、壱は人一倍人の目を気にする。
団子と向き合っているときは、割と平気なのに。
団子が傍らにいないときは、壱はふつうの人と大差ない。
中の様子を覗き窓から窺い、壱は心臓を落ち着けるために息をつく。
「……はあ……」
いきなり入るのは授業の邪魔になるので、ノックをした。
話していた教師が話を中断する。
『入っていいぞ、団子山』
名前を呼ばれて、どきっとした。
壱はドアをゆっくりと開けて入る。
「失礼します……」
予想通り、みんなの目が冷たかった。
でも、一部の目は冷たくなかった。




