団子の次に好きなもの
「昔は男尊女卑だったんだから、今はそうでもいいじゃないの」
母親の言い分はわかる気もするが、壱たち現代人が昔を生きたわけではないので少しお門違いな意見かとも思う。
昔と今とを比べるのはよくても、それをさも自分の意見にするのは違うのではないか、と。
今のことは、今のことで語って欲しい。
時代違いだ。
まず、昔の人物と今の人物の、物差しが違うのだから。
(こういう、一見関係ありげに思えて全く関係のないことを引き合いに出すのは、母さんに限った話じゃない……。まあ、女の人が多いんだけどな……)
男女平等が難しいので、どちらかを優先させるしかないのだが。
二子は理解できずに、しょんぼりしていた。
口を尖らせている。
「むつかしくて、わかんない……」
「ごめんね、二子。二子はもうちょっと大きくなってからね」
母親が二子の頭を撫でて、優しく言い聞かせる。
説明を放棄するのはよくない。
壱は二子に説明する。
「二子。要するにな、母さんと二子が俺と父さんより上ってことだよ。ふつうはさ、一家の大黒柱として会社で働いてる父親が偉い立場にいるもんなんだけど、母さんからしたら、女っていう性別そのものが偉いんだって。男は女の下にいるものって考え。俺は認めないけどな」
壱の説明で、二子は目を輝かせた。
得心したようだ。
「現に、壱は私に頭が上がらないじゃないの」
「でもにーに、みんなのなかでいちばん、あたまがいい!」
「いや、俺はべつに頭がよくは……」
「壱、謙遜しないで。腸が煮えくり返るわ。母さんは壱と同じ歳のとき、成績悪かったんだからね。何でトンビから鷹が生まれるのかしら。あの人も、そんなに頭はよくないのに」
「勉強しなかったからなんじゃないか?」
「そうかしらねー。単純に元のスペックの問題だと思うけど……」
「スペックとか使う辺り、母さんもまだ若者って感じだな。パソコン使わないのに」
そんな他愛もない会話をして、壱たちは晩飯にありつく。
父親の帰りはいつも遅い。
壱が眠ってからぐらいだ。
母親はああ言っているが、父親が帰ってくるまで毎日起きている。
壱は、そんな温かい家族が好きだ。
尤も、団子の次に……だが。




