いずれママ党に入る二子
「にーにのだいすきな、だんご、あるよー」
「あああああああ!!」
壱は感極まって叫ぶ。
スライディングするように廊下を走り、戸を勢いよく開ける。
母親がテーブルに今日の晩飯を用意していた。
たっぷり野菜スープとパンと、そして団子だ。
いつもより量は少ないが、これでも壱は嬉しくて顔が綻ぶ。
母親は勝ち誇ったような笑みを、斜めの角度から見せてくる。
相変わらずの傍若無人。
「お母さんがそんな意地の悪いこと、するわけないでしょー?」
「ありがとうございます、母上様ー!!」
壱はリビングで土下座すると、母親はうんうんと満足げに首肯した。
「これに懲りたら、母上様に二度と嘘はつかないこと。隠し事もしないこと。いい?」
それは難しい約束事だ。
「……うぇ……」
つかなくちゃいけない嘘だってあるのに。
壱は確と頷くことができなかった。
母親は堪忍袋の緒が切れたように、テーブルを叩く。
「い~ち~?」
「あ、うん。まあ、はい」
「何よその曖昧な返事は。しっかり返事しなさい。団子食べちゃうわよ」
母親の魔の手が団子に忍び寄る。
壱は手を伸ばして慌てた。
「まっ、それだけはやめろください!」
いつの間にかテーブルについていた二子が、パンを野菜スープにつけながら話した。
「にーに、じゃぱにーずどげざ?」
「どこでそんな言葉覚えたんだ……」
「私よ」
「そんなもん教えるなよ……」
「いずれ、二子もママ党に入るからね。ママ党はジャパニーズ土下座必修科目なのよ。但し、やらせるほう。私たちは絶対にしないの」
プライドにかけて、か。
「パパ党もあるのか……」
「壱はパパ党ね。ママ党は女性しか入れません」
「恐ろしい女尊男卑の世界だな……。社会もそうなりつつあるというか……」
壱は探偵業をやっているので、ニュースもテレビで観ている。
新聞も読む。




