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団子食べたい  作者: 社容尊悟
1本目

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18/65

嘘吐きには好物なしの罰

「あー、これ? 近所のスーパーでみたらし団子の山ができてて、危うく頭から突っ込みそうになって……滑って転んで人にぶつかって店員にこっぴどく怒られた」

「あなたならありえるけれど、それは嘘でしょう。白状しなさい!」

 母親の一喝に、壱は後頭部をかきながら唸る。

 目を逸らしつつ、正直に答える。

「テルと喧嘩した」

「テルくんと……? どうしてまた」

「ムカッときたから、喧嘩した。でも仲直りしたから」

 壱は本当のことを言わなかった。

 母親はそんな壱の様子に気づいている。

 母親の目が鋭くなる。


「壱」

「はい」

「今日は団子抜きね」

 その一言で、壱はその身に落雷を受けたかのような衝撃を受けた。

「……ええっ! 嘘だろ? 嘘だと言ってくれよ!」

 斜め上から見下げられるこの角度は、恐怖の女王のような風格がある。

「嘘吐きに食べさせる好物はありません。お母さんに本当のことを言わない子は、罰として暫く健康的な食事をさせます。今日の晩御飯はたっぷり野菜スープとパンね」

「ちくしょう、拷問かあ!」

 壱は玄関で蹲って、床を叩いた。

 泣きそうになっている壱の元へ、喜色満面の二子が現れる。

「にーに、おかえりー」


 壱は顔を上げて、二子の可愛さに癒される。

「ただいま二子……。お前だけが俺の癒しだよ……!」

「にーに。たまにはおやさいもたべるのれす!」

 ビシッと指を突きつけられて、壱はまたもや衝撃を受けた。

「違うよ二子。俺はべつに野菜が嫌いなわけじゃないんだって。団子が好きすぎるだけなんだって。だから野菜はべつにあってもいいんだよ! でもな、団子だけは毎日の俺の主食……」

「さいきん、まーまがにーに、おやさいたべないって」

「それは、団子食いすぎて腹いっぱいになってるだけで……決して野菜が嫌いというわけでは」

「にーに、はんせい!」

「はい……」

 玄関で小さい妹に正座をさせられている兄の姿。

 壱は嫁の尻に敷かれるタイプだろう。


 二子はほわほわした顔をして、両手を広げる。

「にーに、おんぶー」

 ため息をつきたくなるくらい可愛い妹の仕草。

 壱は息をついて、適当に返事をする。

「はいはい……。でも兄ちゃん、服とか汚れてるぞ? 汚いのは、嫌いなんじゃないのか?」

「いーの。きたなくても、にーにはにーに」

 二子は壱の後ろに回って、壱の背に覆いかぶさった。

 すりすりと頬を押しつけている。

 壱はしっかりと二子を支えて、立ち上がる。

「それじゃ、俺がいつも汚いみたいじゃないか。あんまりだなぁ、もう。でも二子だから許す」

「にーに、だいすきぃ」

「あーもう、二子は可愛いなああ。団子の次に大好きだ……。あの鬼母から、何でこんなに可愛い妹ができあがるんだよ……詐欺だよ、マジ……」


 二子が首に手を回してくる。

 一回だけ跳んで壱は二子の背負い位置を直す。

 リビングまで歩いていって、戸を開ける。

 二子をテーブル手前のソファに下ろすと、壱は洗面所に向かった。

 制服を脱いで、シャツを洗濯してもらうのだ。

 でも、ブレザーだけはクリーニングに出さなければならない。

 母親は金銭感覚が狂っているので、クリーニング代がどうこうという文句を言われることはないのだが、制服を汚すのはできるだけやめておこうと壱は思った。

(……きたね)

 ブレザーを面前に掲げつつ、壱は心中で毒づく。


 予備の制服はあるので、明日はそれを着ていけばいいのだが、あまり怒られないようにしなければ。

 母親の機嫌を損ねるような真似をすれば、いつ団子グッズを売り払われるか、わかったものではない。

 靴下を脱いでシャツをネットに入れて洗濯機に放り込んだら、洗面台でバシャバシャと顔を洗い、二個目の団子コップを持ってうがいをする。

 洗面所に用意されていた団子のTシャツとズボンを着用し、壱は洗面所をあとにした。

 洗面所を出た直後、二子と鉢合わせる。

 二子は両手をメガホンのように口元に添えている。

「にーに、ごはんですよー」

「今いってるところだって」

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