法律がなければ、何に従って生きればいいのか、わからなくなる
「テルこそ」
二人は大声で笑い合った。
一頻り笑うと、壱はテルに問いかける。
「決闘罪っていうの、あるの知ってるか?」
「聞いたことはあるなー」
「これは、単なる喧嘩でいいよな」
「決闘じゃあ、ないな。オレたちは決闘なんて、しないもんな」
「そうだな……。でも喧嘩もな、犯罪になるからな……。できれば口だけで、穏便にすませたいもんだよ。その口だけでも、度が過ぎれば犯罪になるんだけどな」
手を出しても、口を出しても、負けるときは負ける。
言論の自由はあっても、限度に自由はない。
言論が今日日自由かどうかは首を傾げるが。
テルは引いたような顔をする。
「法律ってめんどくせー」
「でもその法律がなきゃ、俺たちは何に従って生きてけばいいのかわからなくなるんだよ」
「オレたち自身の理性に従えば、いいんじゃねー?」
「理性がいつまでも持ち続けられるなら、犯罪なんて起きないんだよ。人間は誘惑に負ける生き物なんだって。だから、誘惑に負けてもいいような何かがあれば……犯罪は減るはずなんだ」
「流石成績優秀の壱さんの言うことは違うわー。大人って感じー」
テルが冗談みたいな変な声で壱を持ち上げると、壱は豪快に笑った。
「俺が大人だったら、世の中どうなるかね? 俺はまだまだこどもだ。知らないことはいっぱいあるしなぁ。俺よりも、もっと立派な志持ってる人はいっぱいいるだろ。なあ、テル」
「……何でオレに振る?」
「何となくー」
と言って、壱は身体を起こす。
テルも上体を起こして、ゆっくりと立ち上がった。
「身体中いてー」
「俺だって、痛いよ」
壱も立ち上がって、制服や髪についた埃を手で払う。
色々なところがずきずきと痛む。
テルは気分が優れない様子だった。
「これが、オレのやりたかったことなんだな……。我ながら恐ろしいことしたわ。ごめん」
「ストレスたまってんなら、いつでも相手してやるよ」
壱が白い歯をこぼすと、テルは敵わないなあと一言漏らして、笑った。




