傷つけるくらいならいい、その代わりやり返す
だったら、汚い部分も受容しなくちゃならない。
「お前は俺を殺したいと思ってんの?」
「違う。殺したいとは思ってない」
テルは焦ったような表情で思いっ切り首を振った。
ふうと壱は息をつく。
「傷つけるくらいなら、俺はいいよ。でも、他のやつにはするなよ。家族にもやっちゃいけない。相手が訴えなければ犯罪にはならないと思うなよ。ばれなきゃ何やってもいいってんなら、この世は無法地帯だ。暴力を振るうこと自体が犯罪なんだから。今の間なら、怪我させるくらいはできるだろ。それでお前の気がすむんならな」
「……壱は、気持ち悪いくらいにいいやつだな」
壱は暗い顔をして、拳を鳴らした。
「その代わり、俺もやり返すから」
壱とテルは床に仰向けに寝転がって、荒い息を漏らした。
二人が殴り合いを始める頃には、クラスメイトは全員帰っていた。
帰るのを見計らってやらなければ、教師陣に言いつけられていたかもしれなかったからだ。
見回りにくる教師もいたので、喧嘩は中断させられたりもしたが。
二人がストレスの発散に喧嘩を終えたら、この有様だ。
机や椅子はぐちゃぐちゃになって、壱とテルもボロボロになった。
片づけるのが面倒なくらい、汚くしてしまい、埃も立っていた。
でも、それ以上に収穫はあった。
顔中傷だらけで痣だらけになっているテルは、清々しい顔をしている。
「壱と渡り合えるなんて、オレもまだまだいけるなー」
壱もテルと同様に顔中痣と傷だらけ。
この光景を教師陣に見られていたら、何と言われていたことか。
探偵業も廃業にさせられていたかもしれない。
(守れたかな……。俺のこの力で、こいつの心を)
壱は何とも言えない、すかしたような顔をして、吐くように言った。
「何言ってんだよ、加減してるに決まってんだろ」
「負けず嫌いだな……」




