テルは黒い
「あのなぁ……」
「はは、壱の優しさに甘えてる節はあるかもな」
乾いた笑いを漏らして、テルは壱の言葉に被せてきた。
壱の責めるような言葉から逃げているような感じがする。
「俺は優しいっていうか、甘いだけだな。できることなら、あんまり大ごとにはしたくないし。でも、ダメなもんはダメだって言いたい。これは俺の我儘だよ」
「我儘……か」
「だ」
「でも何だかんだ言って、みんな壱のこと好きだと思うけどな」
「そうかぁ?」
「からかわれているときって、大体みんなに興味持たれてるときだからなー。何も言われなくなったときが、怖い怖い。まじで相手にされないのって、辛いよ?」
壱は恐る恐る訊く。
「…………経験談?」
「げっ。何でわかったんだ?」
予想が的中してしまい、壱はげんなりとした顔をする。
「うわー。まじかー。まじでそうなのかー。知りたくなかったなー」
「大親友の笑い話聞く気ないのかよー」
「いや、トラウマの話なんて聞いても暗くなるだけっていうか」
「そこを明るくできるのが、オレの腕の見せ所よ」
そして本当に腕まくりをして腕を見せてくるのが、テルだ。
「わかった。とりあえず聞くから」
「長くなるから、放課後にしようぜい」
テルがニッと笑うと、壱は冷たく返す。
「あ、そ。じゃ、先に帰っとくから」
「そんなこと言うなよー。付き合えよー。オレたち、ダチだろ?」
「うっわ……。それを引き合いに出すか、ふつう?」
「そうすると、壱は断れないんだよなー」
「テル。お前って、腹黒いよな……」
「そうか? オレ、腹黒っていうか、黒いのよ?」




