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王子様なんかいない。
世の女子はとっくに気付いてる。
だから自ら男子を捕まえにいって、王子様に育てるのだ。
ロッキン塩崎は、王子を捕まえる気も育てる気もないのかな。
なんて、話しかける勇気はない。
「柚木はあ、今の旦那のどこが良かったの」
「えー……私に惚れてくれた、とこ?」
「うっわ惚気」
「すまんね、あの頃は職業とか年収とかあんま考えてなくて、ただ好きなバンドが一緒だっただけで」
「そゆの一番長続きするよなぁ、正解だよ」
「野々村はー?」
「内緒」
「おい」
野々村は人にはぐいぐい来るくせに、自分のこととなるとガード固める。ずるい。
人懐っこい風を装って、実は一番中身が読めない。
塩崎の方が余程分かりやすい、と思えなくもない。
「ねー柚木、昇進とか、考えてる?」
「なんもー、取り敢えず残業OKにならなきゃ無理っしょ、小学校に上がってくれないとなぁ」
「私さあ、来年相談してみようかと思って」
「マジ」
「うちは3人いるから生活結構キツいし、パパの親が協力するって言ってくれるからさあ」
正直に言うと、ショックだった。
野々村は同じワーママで、共同戦線を張っていると思っていたから。
私だって、全く無理という訳ではないが、そこまでのエネルギーは出ない。
野々村と私、どこが違うんだろ。
私はいつも生きる気力が足りない。
誰彼からも言われるけれど、本当にそうだ。




