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オフィスに入った瞬間、周りがしん……とした。
ああ、塩崎はいつも、こんな気持ちを味わっているのか。
それとも彼女は、もう何も感じていないのだろうか。
周りを見る勇気もなく。
ただ、席に着く。
いつも通り、仕事をするだけだ。
野々村の視線が痛い。
でも周りの只ならぬ様子を見て、話しかけるのを躊躇っている。
キーを叩く音だけが、無意味に響く。
……浜派閥じゃない人まで。
どんだけ皆、浜にびびってんだよ。
ここは村だ。村社会。
浜が好きだろうが嫌いだろうが、口に出さなければ賛同したも同じ。
そして、多数派に呑まれるのが、賢い人達なのだ。
「今日はなんか静かだな、何か有ったのか?」
空気を切り裂く声は、昔この部署にいた、蒲田さんのものだ。
「あら蒲田さん、お久しぶり」
「久しぶり、皆元気?変わりない?」
「こないだ調度課長と鈴木さんが異動になっちゃってね、あとは皆変わらずだよ」
「蒲田さん人事部どお??ウチに戻ってこない?」
皆が蒲田さんに群がる。
うちでも人徳があり、人気の高かった彼。
バツイチの壮年期真っ盛り、少しくたびれた感じが抜けない。
「よお柚木、元気か」
彼がこちらに向いた途端、皆がまた水を打ったように静まる。
それを見て、彼は何か察したようで。
ーーー面倒なことに巻き込んで、すみませんと。
心の中でだけ謝っておいた。




