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喫煙所の前に、彼女はいた。
塩崎タバコなんて吸うっけ。
珍しく落ち込んだ様子の彼女に話しかけるのは、少し躊躇った。
「塩崎さん、あの」
言葉が続かず。
目的の物を差し出した。
職場で彼女に渡せば、浜派閥に睨まれる。
こうするしか無かった。
「……わざわざ回覧、届けてくれたんですか、どうも」
その時の塩崎の顔は、もういつも通りの無表情だ。
「あの、クリーチャーズのツアー、行ったんですか」
塩崎が少し驚いた顔をした。
「ファンなんですか」
「あ、うん、今年のツアー狙ってたのに行けなくて……」
「だから、それ、届けてくれたんですか」
「えっ」
「浜派閥でしょ、貴女」
塩崎の射抜くような視線に、たじろぐ。
「そういうの、嫌いです。コウモリみたいで。偽善」
塩崎の言葉に呆気にとられていると、回覧を引ったくられ。
あっという間にオフィスへ戻って行く。
悲しい?
悔しい?
怒り?
ーーー何の感情なのか整理もつかないまま、自席へ戻った。




