14/25
14
「柚木さんはどこまで上を目指したいと考えておりますか、正直にお答え下さい」
にこにこと、笑いながら尋ねられる。
人事部の面談だ。
いかにも人の良さそうなオーラに、つい本音で話してしまいそうになるけれど。
まるで踏み絵をされている気分だ。
「正直、昇進のチャンスが与えられるなんて思ってもみなかったので、まだ悩んでいます。ただ今の仕事にはやり甲斐を感じているので、この道のプロフェッショナルは目指したいと思っています」
口から出る適当な言葉なんて、見透かされてしまうだろうか。
私はただ、何の問題もなく働けて、家庭が回っていればそれでいい。
野々村みたいなガッツも、塩崎みたいな野望もない。
「なるほど。では、仮に貴女が昇進して、主任になったとします。その時お子さんが急病になられたらどのように対処しますか」
ーーこれは、直球過ぎじゃないか。
どう答えたらいい。
どう答えたら正解なの。
「……主人と相談して、交代でお休みを頂きます。可能であれば自宅で少しでも穴埋めをしたいです」
「それは残業ということですね?」
結局手応えを得られないまま、面談を終えた。
どうしたいのか、分からないのに。
答えなんか出ない。
いいや、答えは出ている。
私は昇進なんてしたくない。




