■4日目-4■
「お前も、ユオも。なるべくシエロには注視しておけ。
私も今ある情報から術の分析はしてみようと思うが・・・。」
しかし情報が少なすぎて、カルマが今やれることはほとんどなかった。
「今後も夢の内容については共有するように。
特に、術を解明する糸口になりそうなものは。」
そしてカルマは少し考えてから、続けた。
「タルデにも共有すべきかもしれないな。
基本的にシエロと組んで任務に当たることが多いだろう。」
「他の奴らは・・・」
全員が知っていると、シエロは周囲の雰囲気から違和感を感じるかもしれない。
カルマはあまり彼を動揺させたくなかった。
特にパラムなどに共有するには早い気がした。
あの赤毛で、天真爛漫な魔法使いは思ったことがそのまま顔に出る。
シエロの状態を気にしすぎて、すぐにバレてしまいそうだった。
「・・・まだ話さなくて良いだろう。」
カルマはそう判断した。
カルマは700歳の魔法使いであり、魔力の強さはウォルクと並んで3番目だった。
また、知識が豊富で状況判断に優れた魔法使いだった。
暁音とユノはカルマの判断に一旦従うことにした。
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暁音とユノが立ち去ろうとした時、カルマが再び口を開いた。
「時間逆行魔法か・・・」
「・・・現存する魔法使いで、時間逆行魔法が使えるのはスタラだけだろうが、
かつての私の師匠も・・・」
カルマは遠い記憶を思い出すように目を細めた。
数百年前の記憶を。そして何かを思い出したよう目を開いた。
そして暁音を見た。
「時間逆行魔法には代償があっただろう。・・・知っているのか。」
カルマは代償の内容を思い出そうとしているようだった。
「・・・代償?」
ユマが暁音を見た。
表情がほんの少し強張っているように見えた。
「あぁ、うん。そういえば、そうみたい。」
暁音は気にしていない風に言った。
実際、今のところ気にしなくて良いと考えてもいた。
代償1の説明には、
【最初の段階で、周りから名前を忘れられる。】とあった。
その時点で動けば間に合うだろう。
暁音はそう考えていた。
カルマは暁音をじっと見ていた。
「存在を忘れられる・・・いや、存在が消滅する、のではなかったか?」
同じ未来を辿った場合、時間逆行した者はまた過去に戻る。
その場合、時間逆行した者はこの世界から消え、他の者たちだけで時間が進む。
そのため調整のために徐々に存在が薄れていくのだろうか?
カルマは考えていた。
カルマの言葉を聞いて、ユマが小さく息を呑んだ。
二人の視線を痛いほど受けて、暁音は観念した。
どうせ調べれば分かることだった。
それに、そのうち言うことになるかもしれないとは思っていた。
今はまだ、その時期ではないと思っていただけで。
「うん、そう。でも、まだ時間がありそうなんだよね。」
特に焦らずにそう言った。
暁音は基本的に感情より思考が優先されるタイプだった。
「確か、まず名前が忘れられるみたいな。
もしそうなったら、その時に対処法を試せば間に合うんじゃないかな?」
部屋がしんとした。
二人とも何も言わずに暁音を見つめていた。
暁音は沈黙に耐えられなくなった。
「だって今は、そう。シエロの問題を解決するのが先だし。
そもそも【変えたい未来を変えるのに時間をかけすぎた場合】に
代償が発生しやすい、みたいな。
だからさ、未来を変えるのが最優先にはなるよね?そうでしょう?」
暁音は、自分が正解を導き出していると言う顔をしていた。
ユマは【異世界から来た人間の思考】についていけない気がしてきた。
自分のことでも客観的に見すぎていると感じた。
普通はもっと感情的になるのではないか。
しかし暁音の判断が間違っているとも言えなかった。
カルマが口を開いた。
「対処法は。」
この人間は対処法を試したくないから、代償のことを先延ばしにしているのでは。
カルマはそう疑っていた。
暁音は少し眉を顰めた。
息を吸って、吐いた。そして答えた。
「この世界にいる魔法使いの誰かと、誓いを立てること。
重ければ一つ、軽ければ沢山必要とされる・・・って。」
嫌がられたらどうしよう。
暁音は少しだけそう思っていた。そして続けた。
「魔法使いとの誓いはこの世界に作用してるから。
時間逆行した者の存在を世界に繋ぎ止めるとか、なんとか。」
ユオが「なんだ、そんなことか」と言う顔をした。
「あんた、買い出しの時は荷物を持たなかったくせに、人に頼み事するのは苦手なんだな。」
ユオは少しほっとしているようだった。
カルマがため息をついた。
「今のうちに、軽いものをいくつかしておけば良いだろう。
名前を忘れられる段階に入ってからじゃ、同じ誓いでも更に軽くなる。」
「名前を忘れる程度の重要じゃない人物との誓いは・・・軽くなるだろう。
そしてあまり覚えていない相手と、重い誓いを立てる魔法使いも少ない。」
暁音はそこまで思考が回っていなかったので、驚いていた。そして納得していた。
「確かに・・・」
「じゃあ、何か軽いものを・・・。
ちなみに軽い誓いって、どんな代償が・・・」
暁音が言い淀むと、ユマがため息をついた。
「破らない程度の軽いものにすれば良いだけだろ。
軽いやつは、そうだな。もし破ったとしても・・・」
爪とか、その程度だろ。と言うのは辞めた。
「・・・とにかく、まぁ。たいしたもんじゃないだろ。」
と言葉を繋いだ。
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