■4日目-3■
暁音はタルデと一緒に食堂で朝のスープの残りと、買い出しのついでに買ったサンドイッチを食べていた。
暁音のサンドイッチにはハムと卵とレタスが挟んであった。
タルデのは肉が挟んであった。
シエロがやってきて暁音の隣、タルデの斜め前に座った。
「いいな、それ。俺のもある?」
シエロが聞くと、タルデが余っていたサンドイッチを袋から出し、テーブルの上をスライドさせて渡した。
【潰れたコロッケが挟んであるサンドイッチ】だった。
割引になっていたやつだった。
「言っとくけど、最初から潰れてたわけじゃないぞ。」
荷物の下に入ってしまった結果、潰れてしまった。
流石のタルデも【最初から潰れたものを選んだ】と思われるのは避けたいようだった。
「ありがとう。」
シエロは【潰れたコロッケが挟んであるサンドイッチ】を食べ、「うん。結構美味しい。」と言った。
「お前、最近、いつも評価が同じだな。」
タルデが呆れたように言った。少しだけ口元が笑っていた。
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しばらくして、「今日は夜の任務だから少し仮眠する」と二人が食堂から出て行った。
入れ替わりでユオが入ってきた。
ユオは焼き菓子が入った袋をテーブルの上に置き、暁音の隣に座った。
「もしかして、それがお昼ご飯なの?」
私には肉を食えとか野菜を食えとかブツブツ文句言ってたのに。
自分はそれなのか。暁音はそう思った。
「あんたと一緒にすんな。飯は食ってきた。」
焼き菓子を食べながらユオが答えた。
「甘いモンが食いたくなったんだよ。・・・けどちょっと多かったな。」
そう言って、テーブルの上にある焼き菓子の袋を暁音の方に押し寄せた。
「・・・・。」
「・・・・。」
「・・・いらねぇならそう言え。」
むすっとした顔でユオが言った。
「え?なんだ、くれるの?じゃぁ貰う。」
暁音は貰っていいのか迷っていただけだった。
ユオが無言だったから。
暁音は焼き菓子を食べた。甘くて美味しかった。
「美味しい。」
暁音が感想を伝えると、ユオは満足そうだった。
口角が少し上がっていた。
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二人で焼き菓子を食べた後、カルマの部屋に向かった。
もう帰ってきているはずだった。
扉をノックすると、寝起きのカルマが出てきた。
長い茶色の髪に、少し寝た後の癖がついていた。
「・・・どうした、何か用か。」
カルマは眉を顰めた。
暁音とユオが二人で尋ねてくるのは想定外のようだった。
「えーと、私が・・・」
暁音が言い終わる前に、「精神を操作する術や解除魔法について聞きたい。」とユオが言った。
「あんた、詳しいだろ?」
ユオがカルマをを見ながら言った。
何でもないことのように。
「・・・誰か術にでもかかったのか?まぁいい。部屋に入れ。」
カルマの部屋に入った。
カルマは机の前にある椅子に座った。
机には沢山の書類があったが、綺麗にまとめられていた。
几帳面なカルマの性格を表していた。
「で、誰だ?私が見たところ、お前らではなさそうだが。」
カルマが目を細めて暁音とユオを交互に見た。
「・・・シエロ。」
ユオが怠そうに答えた。
カルマの次の言葉が予想できていた。
「シエロ。一昨日の時点では・・・
きちんと確認したわけではないが、そうは見えなかったが。
・・・昨日何かあったのか。」
ユオは「まぁ、そこからだよな、」と呟いて、軽く肩をすくめた。
そして暁音を見て、「パス。」と言った。
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暁音は要点をまとめて説明した。
・自分が未来のスタラの魔法で時間を遡ったこと。
・辿った未来の記憶はないこと。
・夢で【このままいけば辿り着く未来】を見ることができること。
・そして夢の内容。
-シエロが操られる未来。
-ユオが右腕を失う未来。
-呪文を詠唱するカルマ。
・シエロの目が赤く濁っていること。黒い炎で攻撃してくること。
・カルマの詠唱は時間がかかること。防御と同時にできていないこと。青白く光っていたこと。
「・・・そうか」
特に何も感じていないように、カルマが言った。
700年も生きていれば、タイムリープくらい、動揺するようなことではないのかもしれない。
それか、そう見えるように振る舞っているだけなのかもしれない。
もしくは寝起きだから反応が鈍いだけなのかもしれない。
・・・まだよく眠れていなかったのかも。
睡眠不足かもしれない。
カルマが任務から帰って眠ったところに二人が尋ねてきた。
しかし暁音側も早く情報を共有しておきたかった。
代償1のことも気になっていた。少し。
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■時間逆行魔法の代償について。
代償は二つある。
まず代償1について。
代償1とは。
新たな時間軸と元の時間軸のズレにより、時間逆行した者が世界の自己修正により、徐々に薄くなるとされている。
まず、周囲の者から認知されにくくなる現象が起きる。
最初の段階で、周りから名前を忘れられる。
その後容姿の印象が消える。
最終的に存在そのものが消滅する可能性があるとされる。
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発生条件の1番は暁音に当てはまらず、2番に関してははこれからスタラにあまり関わらなければ大丈夫。
暁音はそう判断していた。
しかし3番は気になっていた。
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3.変えたい未来を変えるのに時間をかけ過ぎた場合、元の時間軸と同じ未来を辿りやすいとされる。
その場合、同じ未来に辿り着き、時間逆行魔法を重ねることになる。
しかしこれに反発する力が働き、代償1が発生しやすいとされる。
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カルマが口を開いた。
「シエロには注視しておいた方が良いだろう。
先に伝えておく手もあるが・・・。」
そして目を瞑って考えていた。
シエロはこの宿舎で2番目の実力を持つ魔法使いだ。
それは世界的に見ても2番ということと同義だった。
あの若さで。
若くて魔力が強すぎる魔法使いは精神が不安定になりやすい。
カルマが続けた。
「しかし、あいつが未来を知って動揺するのはのは避けたい。
精神魔法なら、動揺している方が余計に狙われる。」
・・・もう少し様子を見ても良いだろう。
周りが常にシエロの様子を気にかけ、シエロが術に取り込まれる前に防ぐ。
現時点ではまだ何も起きていない。
ならばそちらの方がリスクが少ない。
カルマはそう判断した。
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