■4日目-2■
「そっか、仲良いんだ。もしかして、付き合ってるのかな」
ウォルクもなかなか怯まない奴だった。
暁音としては(そうそう、付き合ってる〜)とか答えても良かった。
そんな風に適当に流しても良かった。
800年も生きてきて、他人の恋愛にまだ興味があるものなのか。と思った。
もしくは、800年も生きているからこそなのかもしれなかった。
暁音はちょっと面倒に思った。
この時点でウォルクに時間逆行の共有をし、協力してもらうこともできた。
しかしユオはウォルクが苦手そうだった。
現時点で勝手な判断はできなかった。
暁音はユオをちらりと見た。
ユオは目を見開いて、顔を真っ赤にした状態でウォルクを見ていた。
口が空いていた。・・・完全に停止していた。
魔法使いというのは500歳でも800歳でもこんな感じなのだろうか。
やはり、適当に「付き合ってる」と肯定しても、今度はユオの方がうるさいだろう。
暁音はそう判断した。
「えーと。今は微妙な時期だから、ちょっと見守ってて欲しいんだよね。」
暁音は軽く笑いながら、そう言った。
ユオの顔が更に赤くなった。暁音を凝視していた。
ウォルクは目を見開いていた。暁音を見つめていた。
それからユオを一瞥した。
「・・・微妙な時期、ね。分かった。僕は見守ってることにするよ。」
ウォルクは手元にあったコーヒーを飲み干し、立ち上がった。
そして暁音を見た。
からかうような表情でも、作ったような笑顔でもなかった。
「僕は見守ってるけど。僕に何かできることがあれば、いつでも言ってね。」
ウォルクはそう言って少しだけ目を細めた。
笑っているようにも、寂しそうにも見えた。そのまま食堂から出て行った。
ーーーーーーーーーーーーーーー
ウォルクが立ち去った後、ユオは暁音を睨みつけていた。
「あんた。微妙な時期ってなんだよ。何適当言ってんだよ。
あいつに変な誤解されるだろ・・・」
ユオの顔色は戻っていたが、まだ耳が少し赤かった。
怒っているようだった。
暁音はユオに全部言うことにした。
「だってさ〜まず、仲良くないって否定してもさ?
時間逆行の問題が解決するまでは割と一緒に行動することも増えるじゃん?
その度にからかわれるの面倒くさいよね?」
ユオが口を開いて、すぐ閉じた。
暁音は更に続けた。
「だったら仲良いことにした方が早いよね?
付き合ってることにしても良いけど。
流石にユオが怒るかと思って辞めたんだよ?」
ユオが額に手を当てた。眉間に皺が寄っていた。
暁音は更に更に続けた。
「あとね、時間逆行の共有をして協力してもらう手もあったよ?
でもユオってウォルク苦手っぽいよね?
勝手に判断できなかったから、こういう形にしたんだよ?」
「私の判断は正しいと思う」
暁音は自信を持って言い切った。
ユオは髪をグシャグシャと掻いていた。
そして両手で顔を覆った。
「正しいとかじゃなくて・・・なんつーか・・・」
指の隙間から暁音を見た。自信満々に言い切った顔だった。
ユオはため息をついた。
「そうだな、あんたが正しいよ。もうそれでいいわ」
反論を諦めた顔だった。
ーーーーーーーーーーーーーーー
ユオが「軽い任務」に行ってくると言った。
「昼過ぎには戻るから。
カルマのところ。先に行くなよ。」
そう言って立ち去った。
暁音がカルマにどう話すか、
頭の中で整理しながら紅茶を飲んでいると、タルデがやってきてメモを渡された。
「暁音。これ。」
食材の買い出し用のメモだった。
「昨日の時点で結構なかったから。
買っといた方が良いと思ったんだけど。
今日の夕食担当が困るだろ?
・・・ユオは。」
「任務だよ。」
暁音が答えると、タルデは微妙な顔をした。
「9人分の数日分の食材なんだけど。あんた一人で・・・」
一人で持てるか?と聞こうとして辞めた。
聞くまでもなかった。持てるわけがなかった。
「・・・いいや。夜から任務だけど今は暇だからな。
俺が付き合う。」
タルデは若干面倒くさそうに言った。
しかし暁音一人では無理そうだから仕方なかった。
ーーーーーーーーーーーーーーー
暁音はタルデと買い出しに出かけた。
肉と野菜と卵とパンと調味料とミルクと・・・結構な量になった。
二人で荷物を分担した。
重たいものを中心にタルデが担当していた。
「こういうの、全部宿舎に届けてほしいんだけど。
そういうのって、できねーのかな・・・」
タルデが文句を言いながら歩いた。
「こう、週1とか週2で届けてくれるようにさ。」
「そうだね。」
暁音は適当に相槌を打っていた。
(そういうの、私の世界にはあったけどね・・・)
暁音は元いた世界のことを思いながら歩いた。
軽いもの担当でも量が多かったので重かった。
「・・・なぁ。」
少し前を歩いていたタルデが振り返った。
「あんた最近、なんかぼんやりしてること多くないか?
気のせいかもしれないけど。それにシ・・・」
シエロも、と言おうとして辞めた。
「・・・いや、やっぱ気のせいだ。悪い。」
気のせいだ。タルデはそう思った。
気のせいなのに余計なことを言って、余計な心配事を増やす必要はない。
「あー。荷物が多すぎて。疲れちゃったかも。」
暁音が答えた。ぼんやりしてるつもりはなかったが、
確かに考え事をしている時間は増えたかもしれない。
暁音はタルデが何か言いかけたことを追求しなかった。
「俺の方が重いから俺の方が疲れている。」
タルデが謎に張り合ってきた。
ーーーーーーーーーーーーーーー




