■7日目-6■
暁音は夕食の時間までパラムとルクスと書庫で過ごした。
今日もルクスは【報告書のまともな書き方】についてパラムに指導していた。
「だから。ちゃんと僕が用意してるテンプレートに沿ってください。日付を書いて、任務内容はまず依頼書の番号とタイトルから書いてください。いきなり感想を書かないでください。「疲れた」とかは感想でしょう。」
ルクスはかなり苦労しているようだった。
「だってさ、疲れたことを報告するのも大事じゃないの?」
「大事ではありません。」
ルクスはパラムの問いを速攻で一蹴していた。
暁音は二人を見ていた。金髪の顎の辺りで揃ったまっすぐな髪をしているルクスと、少しウェーブがかった長い赤髪を一つに結んでいるパラム。見た目は似ていないが、しっかり者の弟と、ちょっと抜けている姉のようだった。ルクスは本当に迷惑そうな顔をしていたが、何だか微笑ましかった。
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二人は報告書がまだまだかかりそうなので、暁音は先に食堂へ移動した。
食事を受け取ってからテーブルにつく。一口食べてみる。【繊細な味のビーフストロガノフ】だった。
ウォルクが【上手くできたと思う】と言っていたのを思い出した。確かに美味しい。
食事をしていると隣の席にユオが座った。無言で【繊細な味のビーフストロガノフ】を食べている。
「・・・もしかして、今まで寝てたの?」
暁音が聞くと、ユオはスプーンを置いた。そして水を飲んだ。
「昼過ぎに街に飯買いに言って、食って、また寝た。」
暁音はユオを見た。何だかまだ寝足りない顔をしていた。
「食堂で適当に食べれば良かったのに。わざわざ外に出なくても。」
「あんたが・・・」
ユオは言いかけて、口を閉じた。
あんたがいなかったから。ウォルクが買い出し頼んだって言ってたから。荷物が重いかと思って探しに行ってやったんだろうが。・・・そしたらシエロがいた。二人でパン食べてた。荷物が重いかもとか、そういうこと考えてやらなくても良かった。無駄足だ。
「・・・いや。やっぱ、俺あいつ苦手だわ。ウォルク。」
(シエロがいるなら先にそう言え。・・・いや、知らなかったのかもしれねけど。でもなんかむかつく。)
「ふーん?」
食堂で食べようとしてたらウォルクに絡まれそうになって逃げたのかもしれない。暁音はそう思った。
「・・・でもこれは美味しいよね?ウォルクが作ったやつ。」
【繊細な味のビーフストロガノフ】を食べながら暁音が言った。
「あいつの性格に合わねぇ。そこがまたむかつく。」
ユオは文句を言いながらも完食していた。脳内に暁音とシエロがベンチでパンを齧っている景色がチラついていた。
「・・・やっぱむかつく。・・・ウォルクが。」
ユオはそう呟いてから水を飲み、席を立った。
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暁音は夕食を終えてから部屋に戻った。
今日はシエロと二人で街に行き、ウォルクからのお使いをこなした。
ベンチに座り二人で揚げパンを食べた。どうでも良いことしか話せなかった。他人に踏み込むのは難しい。
ウォルクは「何でもない時間を一緒に過ごすことにも、意味があることはある」と言った。回りくどい言い方だった。「ある」と断定せずに「あることはある」。つまり「ないこともある」そういうニュアンスだった。
ユオがウォルクを【苦手】だと言った。ものすごく嫌そうな顔をしていた。・・・ちょっとだけ面白かった。
暁音はベッドに入り、目を閉じた。
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夢を見た。
外は雪が降っていた。宿舎の談話室にいた。暖炉の前にいた。
暁音の目の前にはシエロがいた。
シエロが口を開いた。
「俺、一番になりたかったんだ。世界で一番強い魔法使い。」
シエロが困ったように小さく笑っていた。
「けど、今は・・・」
「誰かの1番ってだけでも良いのかもしれないって。・・・たまに思うよ。」
シエロが暁音の目を覗き込んだ。暖炉の炎が反射して、赤く揺れている。
「例えば、特別な存在である異世界人の一番特別になれたら・・・とか。」
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