■7日目-4■
暁音は中庭に向かった。
ウォルクが言った通り、中庭にはシエロがいた。花壇の花に水をやっていた。
花壇には白い花が咲いていた。
「シエロ。水やりしてたんだ。」
暁音が声をかけると、シエロが振り向いた。
「うん。もうすぐ終わるけどね。」
「そっか。終わったら一緒に街まで付き添い頼んで良い?ウォルクからお使い頼まれてて。」
暁音が頼むと、シエロは小さく笑った。
「・・・いいよ。少し待っててね。」
暁音は何となく花壇の花を見た。白くて小さな花がボール状に集まって咲いている。上品で華やかな花だった。
「可愛い花だね。これ、なんて名前?ちょっとシエロに似合うかも。」
暁音がそう言うと、一瞬シエロの動きが止まったように見えた。
「・・・そうかな・・・。」
シエロはその白い花を見つめていた。何を考えているのか分からない表情だった。
「うん。なんか〜上品で華やかな感じ!」
暁音は見たままの感想を言った。
シエロは少し困惑した顔で暁音を見た後、楽しそうに笑った。
「これはゼラニウム。・・・あっちには秋に咲く薔薇もあるよ。そっちはオレンジ色なんだ。」
シエロの表情は柔らかかった。
「ふーん。」
(薔薇は流石に知ってるけど、ゼラニウムは知らなかったな・・・)
暁音はあんまり花に興味があるタイプではなかった。でもシエロが楽しそうで良かったと思った。
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暁音とシエロは二人で街に出た。
ウォルクのメモを見ながら薬草や薬品を買い足していった。薬品のビンをいくつも買うと、なかなかの重さになった。
歩いていると街の屋台が並んでいる場所を通りかかった。
揚げたてのパンが売っていた。ウインナーが入っているタイプのやつだ。
「ねぇ、もうお昼だし。外で食べて帰ろうよ。ベンチもあるし。」
暁音が屋台を指差した。
「そうだね。腕も疲れたし。休憩しよう。」
暁音は揚げパンを2個購入し、シエロに一つ渡すと、シエロが財布を出そうとした。
「あ、ちょっと待って。お金。」
「ううん。初のシエロとの買い出し記念ってことで、私が払うね。」
暁音がそう言うと、シエロは目を瞬いた。それから、少し困ったように笑った。
「そっか。・・・じゃあ、いただくね。」
ここでシエロが遠慮するようなことがあったら、提案を引っ込める方も何だか恥ずかしい。
だからすんなり受け取ってくれて暁音は満足した。
多分、シエロもそう感じるタイプだからそのまま受け取ったのかもしれなかった。
暁音は揚げパンを齧った。外側はサクサクしていて、中はふんわりしていた。
シエロもを見ると、同じように揚げパンを齧っていた。
(カルマにはシエロを見ておけって言われたけど。見てるだけで未来は良くなる?それとも、あの屋上の時みたいに、踏み込まないと変化しない?)
暁音は他人に踏み込むのが得意じゃなかった。友達はそれなりに多くて、それなりに楽しく過ごすタイプだった。
だけど「他人は他人、自分は自分」ときっちり線を引いていた。他人に踏み込むのも、踏み込まれるのも面倒だった。
時間をかけて仲良くなるならまた変わってくるかもしれない。でも、何年も時間をかけて仲良くなってるほどの暇はない。多分、今は。
・・・だったら無理矢理でも踏み込む。必要なことだ。合理的判断だ。
暁音は口を開いた。
(・・・シエロの夢って何?昨日言ってたやつ。)
そう聞けば良い。
でもここは昼間のベンチで、星空の下みたいな雰囲気もなくて、二人で揚げパン食べてて。
この状況で急にそんなことを聞いて答えるだろうか?
「・・・・・・。」
暁音は口を閉じた。そしてまた揚げパンを齧った。
今日も良い天気だった。空は青く、白くて薄い雲が少しだけ漂っていた。
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