■6日目-2■
テラス席に4人で座っていた。
食堂で4人になることはそこそこあったが、この4人で外で食べるのは初めてだった。
「・・・・。」
「・・・・。」
「・・・・。」
「・・・・えーと、景色が良いね。」
いつも何の話をしていたっけ。と暁音は考えていた。
タルデがカルマ作の【よく分からない煮込み】についてよく文句を言ってた気がする。
しかしここで話す内容ではなかった。
「・・・そうだな。」
「まぁ。」
「気持ちが良い天気だよね。」
3人がそれぞれコメントした。
秋の昼だった。空は青く雲ひとつなく、気候も丁度よかった。
店員がそれぞれの食事を持ってきた。
暁音がカルボナーラを食べた。
「美味しい。・・・あ、そういえばさ、この世界も元いた世界も、食べ物が結構似てるんだよね」
無理矢理話題を出した。
暁音は元いた世界について、あまり話す方ではなかった。というか、ほぼ話題にしてなかった。
「そうなのか。」
ユオが興味を持ったようだった。
タルデやシエロも興味がありそうな顔で暁音を見ていた。
暁音は正直、元いた世界のことを話す必要性はないと思っていた。
話したところで簡単に帰れるわけでもないし、他人の住んでいた世界の話なんてどうでも良いだろうと思っていた。
しかしそれは暁音の価値観で、ここにいる魔法使いたちにとって【他の世界の話】は興味を引く話題だったようだ。
「う、うん。そうなんだよ。不思議だよね。空も海も同じだし・・・。
魔法があること以外はほとんど同じなんだよ。」
「魔法がなかったら不便だろ。魔道具もないってことだろ?夜とか真っ暗になるだろ。」
タルデ言った。
「魔法の代わりに科学っていうのが発展していて。夜も明るいよ。むしろこの世界より明るい。」
「いや、どうやって明るくすんだよ。」
タルデが更に言ってきた。
「え。えーと、蒸気とか水力とかでタービンを・・・タービンっていうのは、回転式の原動機で、磁界の変化でコイルに電圧・・・」
暁音の説明はめちゃくちゃだった。全然上手く説明できていなかった。
「タービ・・・?何言ってんだ、あんた」
タルデが怪訝な顔をしていた。ユオもシエロも目が点になっていた。
「あーいや、水や風や太陽光のエネルギーを、なんかいい感じに変換して便利な力にする。」
暁音は無理矢理まとめた。テストで書いたら絶対バツが付けられる答えになった。
「なるほどな。空気中のマナを変換する代わりに、水とか風を変換する技術があるってことか。」
無理矢理な説明にタルデが納得してしまっていた。
暁音がユオとシエロを見ると、二人とも【なるほど】という顔になっていた。
「そうそう。それそれ。」
暁音は科学や電気エネルギーについて説明することを完全に諦めていた。
「・・・暁音さんは、元の世界に帰りたいとか思わないの?」
唐突にシエロが聞いた。ユオとタルデも暁音をじっと見ていた。
「・・・え。」
暁音は元いた世界のことを考えた。あまり考えないようにしていたことだった。家族や友人・・・。
そしてブラック企業の深夜残業・・・。
ここで【帰りたい】と言ってしんみりした空気になったら最悪だな。と暁音は思った。
ついでに言うと、深夜残業は全然したくなかった。
「帰りたいというか、手紙が届けられたら良いかも。【私は元気です】ってね。」
「・・・そうなんだ。」
シエロが小さく微笑んだ。
「・・・へぇ。」
ユオはそれだけ言って、暁音から目をそらし、パスタを食べていた。
タルデは肘をついて暁音を見ていた。そしてフォークに刺したチキンを頬張った。行儀が悪かった。
「あ、でもさ、こっちに来てからのびのび過ごしてるっていうか。まるで夢みたいに感じるよ。
悪くないよ、ここの生活は。むしろニート希望なら、夢の生活かもしれない。」
暁音は軽く言った。実際、現状の暮らしだけなら本当に悪くなかった。
このまま未来を変えられず、【元々辿った未来】に辿り着いたら最悪だけれども。
「何だよ、ニートって。」
ユオには本当に何のことか分かっていないようだった。
「就学しておらず、就業もしておらず、訓練も受けていない若年層だよ。」
暁音が答えると、「あんたは一応役職あるだろ。謎のやつが。」とユオから反論された。
「・・・夢。」
シエロが小さく呟いた。そして白身魚のムニエルを口に入れた。
「ここと違う世界にいる自分なんて、考えらんねーな。」
タルデが言った。
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