■6日目-1■
暁音は目を覚ました。
朝の光が窓から差し込んでいた。
夢と同じ部屋の中にいた。けれど部屋の中は明るかった。
暁音はギリ、と奥歯を噛んだ。
きっとこの夢も【私が元々辿った未来】か、もしくはそんなに離れていないだろう。
少なくとも4日目、ユオが死んだ夢とは地続きに思えた。
そして何の追加の情報も得られていない。
いや、自分が何もしていないという情報は得られた。
夢の余韻のよく分からない後悔と、今の気持ちが混ざった。なぜだか腹が立った。
後悔の原因すら分からずに動けていない未来の自分に。
そしてまだ何も変えられていない、この時間にいる無力な自分に。
メモに追記した。
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・私は時間を遡った。つまりタイムリープした。しかし辿った未来の記憶はない。
・私は夢で【このままいけば辿り着く未来】を見ることができる。
=何もしなければ多分、【元々の私が辿った未来】の夢を見るということ?
・私が夢を見始めたのは5日前の夜から。
=5日前のどこか(朝〜寝る前)の時点に私はタイムリープした?
・1日目の夢は、赤い目をしたシエロ、呪文を詠唱するカルマ、右腕のないユオ
・2日目の夢は、赤い目をしたシエロからの攻撃、タルデの声、ユオの防御魔法、呪文を詠唱するカルマ(シエロを操る術式を封印?)
・3日目の夢は、カルマの呪文の詠唱は時間がかかっていた、青白く光っていた、詠唱中は無防備(詠唱と防御は同時にできない?)、シエロに暁音の声は届かない
・4日目の夢で、私は安全な場所にいた。タルデが「術の解除には成功したはず」と言う、タルデもいる、シエロは眠っている、ユオは死んだ、3日目の続きなのか未来が変わったのかは不明
・5日目の夢。私は後悔しているだけ。何もしていない。シエロは長く眠っているようだ。
・シエロの状態で現在分かっているのは赤い目と、黒い炎の攻撃。
・シエロが操られる未来を変える。
・ユオが右腕を失う未来を変える。
→ユオが死ぬ未来を変える。
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暁音は部屋を出て、朝食を摂りに食堂へ向かった。
多少不自然な行動をしてでも、何とか、夢の中で何かを動かしたい。
このまま【元々の私が辿った未来】とあまり変えられないなら意味がない。
食堂に行くと、タルデとシエロが向かい合って食事をしているのが見えた。
暁音は二人に近づいて行った。
暁音に気付いた二人は「あ、おはよう。」「・・・よ。」とそれぞれ挨拶をした。
暁音は「おはよ。」と言ってシエロの隣の席に座った。
そしてシエロの顔を見て言った。
「シエロ今日時間ある?一緒に出かけようよ。昼食。外で一緒に食べよ!」
・・・かなり唐突な申し出だった。
例えばユオに言うならそこまで不自然じゃない申し出だ。パラム相手ならもっと自然、というか普通の申し出だ。
タルデ相手でも。一緒に買い出しになら何度か行った仲だから、そこまで変ではないかもしれない。
「え、・・・俺?」
シエロは少し困ったように笑った。
「いや、ええと。別に良いんだけど・・・」
なんで?と聞きたいが聞くのも失礼なのだろうか。シエロは困惑した表情のままパンを齧っていた。
そんな暁音とシエロの様子を見て、タルデが口を挟んだ。
「暁音。俺は誘わないのかよ。なんでシエロだけ。」
シエロへの助け舟のつもりなのか、本当に誘われないことを不満に思ったのかは謎だった。
「あ。」
暁音はそこで自分の焦り過ぎな行動でシエロに違和感を持たれる可能性があることに気付いた。
「・・・うん。もちろんタルデもね!ついでにユオも!」
「・・・俺はついでかよ。」
いつの間にかユオが後ろにいた。そしてシエロの反対側の暁音の隣に座った。
(え。テーブルのこっち側に3人並んで、タルデ側一人って。バランス変でしょ。)
暁音はそう思ったが、口には出さなかった。
ユオは【ついで】扱いされて少し不機嫌そうにパンを齧っていた。
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昼前に正門に集合し、4人で街に出た。
「あ、俺行ってみたい店があったんだよな。
ほら、あの高台のところにある。外で食えるみたいだし、景色も良さそうだろ?」
タルデが言った。本当は特に興味はなかったが、上手くこの場を回すために会話を繋いでいた。
「ああ。あそこか。俺も行ったことねぇし。良いんじゃねーの。」
ユオが取り敢えず乗っかった。
4人で高台の上にある店に向かった。店内で注文して、店員が席に持って来てくれる形式だった。
タルデはチキンの照り焼きを頼んでいた。シエロは白身魚のムニエルを頼んでいた。
「あんたは。何にすんだ。」
メニュー表を見ながらユオが暁音に聞いた。
自分はまだ決めかねているようだった。メニュー表を睨んでいた。
「これにしようかな。」
暁音はメニューにあるカルボナーラのパスタを指差した。
「そ。・・・これ、二つ。」
ユオはルボナーラのパスタを二つ注文し、料金を払った。
自分で選ぶのが面倒だったのかもしれない。しかしどんな理由だとしても暁音は奢ってもらう形になっていた。
「え、え。ありがとう。」
暁音がお礼を言うと、「ん。」と短く返事された。
ユオからすると、暁音が時間を遡らなかったら、自分は死んだかもしれないのだ。
だからこれは感謝の気持ちで、むしろ奢るのは当然な気がしていた。
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