■5日目-2■
「じゃ、今日は俺、外だけど。
あんたはタルデに共有と・・・」
ユオは昨日のカルマの話を思い出していた。
「なるべくシエロには注視しておけ。」と。
実際今できることはそれくらいかもしれなかった。
「シエロとも。まぁ、・・・一緒にいてみたら良いんじゃねーの。」
若いのに魔力が強すぎる魔法使いは精神が安定しにくいと言われている。
だけどシエロはむしろ、安定しすぎているように見えた。
しかしそれは、ユオがシエロをよく知らないからなのかもしれなかった。
「うん。」
暁音もユオと同じだった。
シエロをよく知っているとは言えなかった。
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ユオが食堂から出ていくと入れ替わりで、タルデが入ってきた。
ものすごく眠そうな顔をしていた。徹夜明けの顔だった。
「暁音。これさ・・・」
タルデが手に持ったメモを見ながら言った。
暁音が昨夜、タルデの部屋にドアの隙間から差し込んだメモだった。
「おはよー」パラムが食堂に入ってきた。
今日は長い赤毛を三つ編みにしていた。
続いてルクス、そしてウォルクも入ってきた。
「パラムさん。昨日の報告書、途中からカレーの作り方になってました。」
ルクスがパラムを睨みながら言った。
「やっぱり確認して良かった。今日提出だから、朝食後に書き直しです。
大体、あんな嵩増しで誤魔化せる訳ないでしょ・・・」
ルクスがため息をついていた。18歳で最年少なのに気苦労が多そうだった。
「ええー・・・」
不満げなパラムの声が聞こえた。
「・・・移動するか」
タルデが暁音に言った。
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暁音とタルデは二人で中庭に移動した。
ベンチに座った。秋の風が心地よかった。
「・・・で、これだけど。」
タルデは暁音が書いたメモを取り出した。
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シエロのことで相談があるから、二人で話したい。
暁音
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「シエロがどうかしたのか。」
タルデが覗き込むように暁音を目を見た。探るような目だった。
「うーん。っていうか・・・タルデは?
昨日、何か言いかけたような気もするんだけど。
気のせいかな・・・。」
「なんだ、そのことかよ。」
タルデが顔を離した。
「俺がシエロのことを言おうとしてたって、気付いてたわけ。
さすがだな。異世界インテリなだけある。」
タルデが軽く笑みを浮かべて言った。
「い、・・・いんてり。」
元々変な役職名を更に変な言い方にされた。
暁音は笑おうとしたが顔が引き攣った。
タルデはそんな暁音をちらっと横目で見た。
そして考えるように目を閉じた。
「3日前かな。シエロと手分けして任務を片付けて、
俺があの・・・あれを、」
タルデは言葉を切った。【よく分からない煮込み】を思い出している顔だった。
「・・・あれを、二日連続食うのが嫌でさ。
外で食って帰ろうって言ったら、シエロは疲れてるから帰りたいって。珍しいだろ?
あいつが疲れるようなことあったかな・・・」
「それになんか、ずっとちょっと疲れてるような気もするっていうか。
ついでにあんたもなんかぼんやりしてる気がするし。」
タルデがもう一度暁音を見た。
「俺はこう見えて、かなり気が付く方なんだ。」
タルデは目を細めた。だから何かあるなら言え、と言っているようだった。
暁音はタルデを観察していた。
タルデは「かなり気が付く方」と自己分析していた。
そして基本的にシエロと一緒にいることが多い。
秋の風が吹き抜けた。だがまだ陽の光は暖かかった。
あの夢では吹雪だった。何ヶ月後の未来なのだろう。
暁音はタルデを情報を共有すべき相手だと判断した。
段階的にとか、様子を見つつとかではなく。
「実は、私は、未来のスタラの魔法で時間を遡ったんだ。
ちなみに戻ってきたのは、4日前だよ。」
タルデは目を見開いた。
「・・・は、マジか。それって・・・マジか?」
少し動揺していた。
ユオ、カルマと続いて3人目の情報共有の相手。
他二人に比べて若いからなのか。
タルデは狼狽えていた。
「いや、まぁ。そうか、スタラだもんな。
いや、あんたを疑ってるとかじゃない。
そうか、スタラか・・・あぁ、そうだよな。
あいつならできるんだよな。」
タルデは何やら自分で自分を納得させていた。
そして息をついた。ようやく落ち着いたようだった。
「で。その・・・未来では何があったんだ。」
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暁音は説明した。
自分が【このままいけば辿り着く未来】を夢で見れること。
そして現状は【元々辿った未来】からあまりズレていないと予測できること。
夢の内容。
シエロが未来で操られること。精神に作用する魔法だと予想されていること。
動揺している方が余計に狙われる、シエロの様子に注視しろとカルマが言っていたこと。
そして、ユオが未来で死ぬこと。
このことはユオとカルマにはすでに共有済みなこと。
ユオの死を暁音が口に出した時、タルデの顔が引き攣った。
暁音が話終わってから、タルデは口を開いた。
「・・・・・それは。」
少し声が掠れていた。
「・・・なかなか、最悪だな。」
「だよね。最悪。」
暁音が答えた。
タルデは淡々と全てを話し切った暁音を見ていた。
少し怖さのようなものを感じていた。しかし同時に感心していた。
涙ながらに話されるよりずっと話が早いと思った。
「じゃ、任務中は俺、それ以外ではまぁ・・・あんたやユオも、シエロの様子はよく見ておくってことで。」
タルデはそこまで言って少し考えた。
「あんたは魔法使いじゃないからさ。
逆にシエロも話しやすいこともあるかもしれないな。二人で話すのも良いんじゃねーの?」
「・・・てか俺、任務で徹夜なんだよ。・・・寝てくる。」
そう言って、タルデは立ち去った。
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