■5日目-1■
「嫌だ!!!!」
叫んだ瞬間に目が覚めた。
涙が溢れていた。
「なんで。違う。そんなの・・・」
頭が痛かった。ズキズキして吐きそうだった。
激しい後悔を感じていた。後悔、後悔、後悔、後悔。
目が回りそうだった。苦しかった。心臓が痛かった。
カルマを解いただそうと顔を上げた。
・・・カルマはいなかった。
ここは暁音の自室だった。
「・・・あ。」
「違う、今のは夢だ・・・」
夢だった。そうだった。
自分は今、【このままいけば今のお前が辿り着く未来】を見ているんだ。
今の夢が【私が元々辿った未来】の続きなのか。
それとも、少しでも変わった未来なのか。
・・・どちらにしても最悪だった。
今回の夢を整理しなくては。そして未来を変えなくては。
暁音はメモ帳を開いた。そして書き加えていった。
━…━…━…━…━…━…━…━…━…━
・私は時間を遡った。つまりタイムリープした。しかし辿った未来の記憶はない。
・私は夢で【このままいけば辿り着く未来】を見ることができる。
=何もしなければ多分、【元々の私が辿った未来】の夢を見るということ?
・私が夢を見始めたのは4日前の夜から。
=4日前のどこか(朝〜寝る前)の時点に私はタイムリープした?
・1日目の夢は、赤い目をしたシエロ、呪文を詠唱するカルマ、右腕のないユオ
・2日目の夢は、赤い目をしたシエロからの攻撃、タルデの声、ユオの防御魔法、呪文を詠唱するカルマ(シエロを操る術式を封印?)
・3日目の夢は、カルマの呪文の詠唱は時間がかかっていた、青白く光っていた、詠唱中は無防備(詠唱と防御は同時にできない?)、シエロに暁音の声は届かない
・4日目の夢で、私は安全な場所にいた。タルデが「術の解除には成功したはず」と言う、タルデもいる、シエロは眠っている、ユオは死んだ、3日目の続きなのか未来が変わったのかは不明
・シエロの状態で現在分かっているのは赤い目と、黒い炎の攻撃。
・シエロが操られる未来を変える。
・ユオが右腕を失う未来を変える。
→ユオが死ぬ未来を変える。
━…━…━…━…━…━…━…━…━…━
・・・ユオが死ぬ未来を変える。
シエロが操られる未来を変える。
シエロにまだ前兆はない・・・と、思う。
暁音は息をついた。
あれは私が変えなくてはならない未来だ。
何もしなければそうなる。何かすれば変わる。
タルデが昨日言いかけてたことが気になった。
タルデは午前中・・・少なくとも昼前には帰ってくるだろう。
昨日タルデの部屋に入れておいたメモは気付いてくれるだろうか。
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暁音は部屋を出て、朝食を摂りに食堂へ向かっていた。
暁音は感情より思考を優先するタイプだった。
常に物事を客観視しようと考えていた。
できるだけ冷静に。できるだけ論理的に。そして合理的に。
・・・ユオには伝えるか。
これについては考える程のことでもなかった。
どれだけ悩んだところで結局結論は変わらないだろう。
悩む理由というのは、例えば【ユオが動揺するかも】とか、そういう心配についてだ。
そこに関して、例えば数時間悩んだとして、結局【伝えるべき】という結論になるだろう。
暁音は、自分が最終的にどう判断するか、自分の考え方を把握していた。
隠したら今後不都合が出てくるかもしれない。
隠す方法も考えなくてはならない。
情報は基本的に、正確に共有しなくてはならない。
特に、行動を共にするなら。暁音はそう考えていた。
食堂に入るとユオがいた。
朝早いので他には誰もいなかった。
暁音はユオの向かいの席に座った。
「おはよう。」
「・・・はやいな。」
パンを齧りながらユオが言った。
暁音はすぐに切り出した。
「今回の夢で、ユオは死んでたよ。」
あえて、サラリと言った。感情を出さずに。
朝、目覚めた時に押し寄せてきた感情は、共有事項には含まれていなかった。
それは不要な情報だと暁音は判断していた。
「・・・な、」
ユオは今後の展開を数パターン予想していた。
その中には【自分は未来で死んだのではないか】というものもあった。
だから、その事実にはそこまで動揺していなかった。
ただ、暁音の言い方の方に引っかかっていた。少し動揺した。
自分が死ぬことを何でもないみたいに言われたことに。
「でも大丈夫。私がいるからね。この未来は回避しよう。回避できるよ。」
暁音はまた軽く伝えた。
軽く伝えながらも、しっかりとユオの目を見ながら言った。自信がある顔をしていた。
「・・・そうかよ。」
ユオは複雑な気持ちになった。自分を安心させるためにこういう伝え方になったのかもしれないと思った。
元々少し変わっているとは思っていたが。
異世界に召喚された時の暁音が、軽く説明を聞いただけで「そうですか。頑張ります。」と答えていたことを思い出した。フッと軽く笑った。
「まぁ、これから変えるだけの話だよな。」
ユオはそう言って、何でもなさそうな顔をしてパンを齧った。
暁音に調子を合わせることにしたのだった。
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